接客中に外国人のお客さまが急に体調を崩したら、英語で対応できるでしょうか。駅やホテル、観光案内、店舗、スポーツの現場など、人と接する仕事をしていると、けがや急病の場面に居合わせることは珍しくありません。「医療従事者ではないし、英語も苦手だから」と不安に感じる方も多いはずです。けれども、相手を気づかうために必要なのは、流暢な英語でも難しい専門用語でもありません。この記事では、医療職ではない方に向けて、現場ですぐに使えるやさしい医療英語のフレーズを、基本の第一声から場面別の表現まで、あわせて15個紹介します。発音のカタカナも添えるので、英語に自信がない方も声に出しながら読み進めてください。
医療英語は医療従事者だけのものではありません
医療英語と聞くと、医師や看護師が使う専門的な表現を思い浮かべるかもしれません。けれども、目の前で困っている人に手を差し伸べる場面では、難しい単語はほとんど必要ありません。
日本を訪れる外国人や、国内で暮らす外国人は年々増えています。駅員、ホテルや観光施設のスタッフ、客室乗務員、店舗の接客担当、ツアーガイド、スポーツの指導者——人と接する仕事に就いていれば、体調を崩した人やけがをした人に出くわす可能性は誰にでもあります。
そんなとき大切なのは、完璧な英語ではなく、「大丈夫ですか」と声をかける勇気と、状況を確認できる最低限のフレーズです。やさしい医療英語をいくつか知っておくだけで、いざというときに落ち着いて行動できます。
まず押さえたい、体調が悪そうな人への第一声
最初のひと言は、相手を気づかう短い問いかけで十分です。次の3つは、どんな場面でも使える基本のフレーズです。
- "Are you OK?"(アー・ユー・オーケー|大丈夫ですか)
- "Do you need help?"(ドゥ・ユー・ニード・ヘルプ|お手伝いしましょうか)
- "How can I help you?"(ハウ・キャナイ・ヘルプ・ユー|どうされましたか)
どれも短く、発音も難しくありません。相手の目を見て、ゆっくりはっきり伝えてみましょう。返事がなかったり、苦しそうだったりする場合は、ためらわずに周囲の助けを求めてください。
【場面別】接客・案内の現場で使えるやさしい医療英語
ここからは、人と接する仕事で出くわしやすい場面ごとに、使えるフレーズを紹介します。声に出して練習しておくと、いざというときに口から出やすくなります。
急に体調を崩した人に
体調が悪そうな人には、まずどこがつらいのかを確認しましょう。座ってもらうよう促す表現も覚えておくと安心です。
- "How are you feeling?"(ハウ・アー・ユー・フィーリング|具合はいかがですか)
- "Where does it hurt?"(ウェア・ダズィット・ハート|どこが痛みますか)
- "Please sit down here."(プリーズ・スィットダウン・ヒア|こちらに座ってください)
"Where does it hurt?" が難しければ、痛そうな場所を指さして "Here?"(ヒア|ここですか)と聞くだけでも通じます。言葉に詰まったときは、ジェスチャーを添えると伝わりやすくなります。
けがをした人に
転倒や事故でけがをした人には、むやみに動かさないよう促すことが大切です。動かすことで、かえって状態が悪化する場合があるからです。
- "Are you hurt?"(アー・ユー・ハート|けがをしていますか)
- "Don't move."(ドント・ムーヴ|動かないでください)
- "Help is coming."(ヘルプ・イズ・カミング|助けが来ますよ)
不安そうな相手には、"You'll be OK."(ユール・ビー・オーケー|きっと大丈夫ですよ)とゆっくり声をかけると、気持ちが落ち着きやすくなります。
救急車や助けを呼ぶとき
すぐに助けが必要だと感じたら、ためらわずに救急車を呼びましょう。相手や周囲に伝えるフレーズを覚えておくと安心です。
- "Should I call an ambulance?"(シュダイ・コール・アン・アンビュランス|救急車を呼びましょうか)
- "I'll get help."(アイル・ゲット・ヘルプ|人を呼んできます)
- "Is anyone here a doctor?"(イズ・エニワン・ヒア・ア・ドクター|どなたか医師の方はいませんか)
"ambulance"(救急車)は少し長い単語ですが、緊急時にとても大切な言葉です。「アンビュランス」(最初の「ア」を強く)と何度か口に出して、覚えておきましょう。
不安そうな人・配慮が必要な人に
高齢の方や妊婦、子ども連れの方など、サポートに気を配りたい相手もいます。手助けを押しつけず、相手の気持ちを確かめる声かけを心がけましょう。
- "Would you like to sit down?"(ウッド・ユー・ライク・トゥ・スィットダウン|座りますか)
- "Take your time."(テイク・ユア・タイム|ゆっくりで大丈夫ですよ)
- "Do you have any allergies?"(ドゥ・ユー・ハヴ・エニー・アラジーズ|何かアレルギーはありますか)
特にアレルギーは見た目ではわかりません。飲み物や食べ物をすすめる前に、ひと言確認できると安心です。
知っておくと安心な医療英語の基本単語
フレーズと合わせて、よく使う単語も知っておくと、相手の言葉を理解しやすくなります。まずは症状や体に関する基本の単語から覚えてみましょう。
- pain(ペイン|痛み)
- fever(フィーヴァー|熱)
- dizzy(ディズィー|めまいがする)
- hurt(ハート|痛い・けがをする)
- ambulance(アンビュランス|救急車)
- hospital(ホスピタル|病院)
これらは、相手が自分の症状を説明するときにもよく使う言葉です。すべてを完璧に覚える必要はありません。「聞いたことがある」という状態にしておくだけでも、いざというときに役立ちます。
とっさの対応で慌てない3つのコツ
フレーズや単語を覚えたら、伝え方にも少し気を配ってみましょう。英語に自信がない方でも実践できる、3つのコツを紹介します。
- やさしい言葉を選ぶ:難しい単語より、短くて簡単な言葉のほうが確実に伝わります。
- ゆっくり、はっきり話す:相手も動揺していることが多いので、落ち着いたペースを心がけます。
- ツールやジェスチャーを併用する:言葉に詰まったら、指さしや翻訳ツールを遠慮なく活用しましょう。
英語が完璧でなくても問題ありません。「助けたい」という気持ちが伝われば、相手にとって何よりの支えになります。
負担なく備えるためのヒント
とはいえ、たくさんのフレーズを一度に覚えるのは大変です。無理なく備えるなら、次のような方法がおすすめです。通勤中に音声を聞き流す、スマートフォンのメモに「第一声の3フレーズ」だけ保存しておく、翻訳アプリをあらかじめ入れて使い方に慣れておく——どれも数分でできる準備です。まずは1つだけでも始めてみると、いざというときの安心感が変わります。
もっと幅広い場面に備えたい方へ
ここで紹介したのは、数ある場面のほんの一部です。実際の現場では、症状や状況がさまざまに異なり、その場に応じた声かけや確認したいことが出てきます。
そうした幅広い場面にひと通り備えたい方には、アルクの『誰でも使える! 病気・けが・救助の英・中会話表現』(聖路加国際病院監修)が役立ちます。病気・けが・救助といった状況ですぐに使える英語と中国語の会話表現を、医療面でのアドバイスとともにまとめたポケットサイズのハンドブックです。
英語に苦手意識のある方にうれしいのは、英語・中国語のすべてにふりがなが付いている点です。読み方に自信がなくても、すぐに口に出せます。専門用語を知らなくてもとっさの対応ができるよう作られているため、人と接する仕事で「いざというときに備えておきたい」という方にぴったりです。
街角で遭遇しそうな、病気・けが・災害などにまつわる18の場面を取り上げ、各場面で「どう声をかけ」「何を確認すべきか」がひと目でわかります。日本語・英語の音声ダウンロードにも対応しているので、正しい発音を耳で確かめながら練習できます。
まとめ:今日から始めるやさしい医療英語
人と接する仕事で外国人を助けるために、専門知識は必要ありません。"Are you OK?" や "Do you need help?" といった、やさしいひと言を確実に使えるようにすることが、何よりの近道です。
大切なのは、完璧な英語よりも、ためらわずに声をかける一歩です。まずは今日紹介した第一声フレーズを、声に出して練習することから始めてみましょう。その小さな備えが、いつか目の前の誰かを助ける力になります。
