海外出稼ぎの実情と増加の可能性:3つの理由から見る現状

こんにちは。「海外就労に詳しい人」として、ちょいちょいテレビに出ている森山たつをです。最近は「海外出稼ぎ」の話題がニュースでも取り上げられていますね。「円安だから海外出稼ぎする人が増えている!」というテーマの報道をすべく、私のところにも取材が来るわけです。 ただ、出稼ぎしてる人って増えてるんでしょうか?

海外出稼ぎの現状と増加要因

最近は「海外出稼ぎ」の話題がニュースでも取り上げられていますが、本当に出稼ぎしてる人って増えてるんでしょうか?

※森山たつをさんへの取材の申込はこちらへ!

結論は、

  • まだ増えてない
  • これから増える
  • できる人は限られている

です。この記事では、今話題の海外出稼ぎについて詳しく見ていきましょう。

海外出稼ぎの増加が遅れている理由

海外で短期間働いて、お金を稼いで、日本に帰ってくる。これを「海外出稼ぎ」と定義しますが、これをやっている人は2022年現在増えているのかというと、おそらくあまり増えていないと思います。

そもそも、この「海外出稼ぎ」の人数を把握するための統計情報がないため正確なことは言えないのですが、そう簡単に増えるとは思えないんですよね。理由は3つあります。

ビザの取得が容易でない

海外で働くためには、就労ビザが必要です。給料が高い国は人気なので世界中から働きたい人が集まります。しかし、何のスキルもない人を大量に受け入れると、自国の雇用を奪うなど、国内で問題が起こります。だから、IT技術者などの高度なスキルを持っている人以外はなかなかビザがおりないのです。

海外で求められるスキルの不足

というわけで、海外でも求められているスキルを持っている人でないと、出稼ぎできないんです。しかし、そんなスキルを持っている日本人はあんまりいませんよね。

移住の障壁

さらに、全ての条件が整っても、そんな簡単に海外に移住はできません。日本国内で転職して引っ越しするだけでも大変なのに、海外移住にすぐに踏み切れる人はほとんどいません。だから、円安が半年くらい続いたくらいで、出稼ぎする人が増えることはないのです。

海外での「出稼ぎ」の方法

じゃあ、日本人が海外で稼ぐことはできないのかというと、そんなことはありません。でも、短期的に出稼ぎ、長期的に海外で稼ぐ方法はあります。

短期的な出稼ぎの方法

これは、20代の若者限定になりますが、ワーキングホリデービザを使うのが現実的です。これは25、30歳以下の若者に、半年〜2年間働く事ができるビザを提供するという制度です。(年齢制限、期間などは国によって違います)給料が高く、英語が通じる国として、シンガポールやイギリス、カナダやオーストラリアが人気です。

例えば、2022年現在、シンガポールでは大学在学中、卒業の25歳以下の若者に半年間のビザをだしてくれます。レストランの従業員でも月収3500シンガポールドル(約35万円)が期待できるため、半年間で200万円以上稼ぐことができます。ただ、現地の物価も高いので、シェアハウスに住んだり、自炊をしたりという節約も必要になりますが。

また、このワーキングホリデーを使って実務経験を積み、そのまま現地に長期的に就職をするということもできます。前回の記事、イギリスワーキングホリデーから、ロンドン就職、現在ドイツの永住権を取ってベルリンで活躍するアキラ君のインタビュー記事を読んでみてください。

長期的な稼ぎ方

職人系の仕事

長期間にわたって海外で稼ぐには、外国で現地の会社に貢献できる技術を身につけている必要があります。そのひとつが「日本人ならではの仕事」である職人系の仕事です。

インド人が作ったカレーが美味しそうに見えるように、海外で、日本人が握った寿司は美味しそうに見えます。同様に、人気の日本料理、天ぷらやラーメンなどを作れる板前は海外で高く評価され、店を切り盛りできる料理長レベルであれば100万円以上の月給を稼ぐことができます。(最近テレビには、年収8000万円の寿司職人がよく出演してますよね)

これらの仕事は「日本人である」ことが重要であるため、自国の需要を奪うことはないと判断され、ビザがおりやすい傾向があります。(例えば、日本でも、カレー屋のインド人やネパール人、タイ料理屋のタイ人などはビザがおりやすいです)

飲食系で働く人たちは海外志向がある人は少ないため、海外で活躍する日本食の職人は希少です。日本人が優遇されていることに加えて、日本でやりたい人が少ないという、比較的倍率が低い分野ですので、「海外で稼ぎたいけど、何をしていいかわからない」という人にとって、狙い目の仕事であるといえます。

IT系の仕事

そして、もうひとつが「どの国の人でも求められている仕事」。代表的なのがIT系の仕事です。プログラミングやWebデザイン、プロジェクトマネジメントなどの仕事は、世界中で人材が不足しており、どこの国でもどんな国籍でも高給で受け入れられる可能性があり、ビザもおります。

これらの仕事に就くには当然プログラミングスキルなどを身につける必要がありますが、身につけた技術を世界中で活かすというメリットがあるのです。前述のアキラ君は日本で身につけましたが、こちらの記事のToma君のようにカナダの大学で身につける人もいます。

私が今10代だとして、大学で何を学ぶかを考えたら、まちがいなくITを選びます。この仕事は、海外で働く事ができるだけでなく、リモートワークで海外の仕事を受けることもできます。

大手グローバル企業で外国人スタッフと一緒にリモートワークをしたり、フリーランスとして海外の仕事を受けたり、様々な方法で「海外で稼ぐ」ことができるのです。

というわけで、様々な「グローバル就職」をご紹介した本連載は今回で最終回。これから、円安がどこまで続くのかはわかりませんが、人口が減っていく日本で、日本人相手のビジネスはかなりの高確率で右肩下がりになります。

だから、日本人だけでなく、外国人を喜ばせて、稼げるような人材になることが大切です。そのためには、海外でカレー屋をやって 外国人とのビジネスを体験したり、寿司職人やITの技術を身につけたりという準備が大切になります。

グローバル就職に「楽して簡単に儲かる」はありませんが、努力をしたらそれ以上のリターンが期待できます。これからの世界で生きていく人たちのご参考にしていただけたらと思います。

森山たつを
森山たつを

(株)スパイスアップ・アカデミア 社長。早稲田大学理工学部卒業後、日本オラクル、日産自動車などに勤務。これらの経験を元に世界7カ国で就活を行い全ての国で内定をとり、その内容を人に伝える「海外就職研究家」として独立。著書4冊(電子書籍は20冊以上)。現在は、大学生・高校生・社会人が海外ビジネス体験できるインターン、 サムライカレーSDGs を運営。 https://twitter.com/mota2008

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