気になる新作映画について登場人物の心理や英米文化事情と共に長谷川町蔵さんが解説します。
今月の1本
『スペース・プレイヤーズ』(原題:Space Jam: A New Legacy)をご紹介します。
※動画が見られない場合は YouTube のページでご覧ください。バスケットボール選手のレブロン(レブロン・ジェームズ)とゲーム開発を夢見る息子ドム(セドリック・ジョー)は、映画会社ワーナー・ブラザースのAI スーパーサーバー「無限バーチャルワールド」の中に迷い込んでしまう。そこには「ルーニー・テューンズ」のバッグス・バニーやトゥイーティーといったアニメキャラクター、バットマン、キングコングなどの映画キャラクターたちが暮らしていた。レブロンははぐれた息子を取り戻して元の世界に戻るため、究極のe スポーツバトルに参戦する―。
バーチャル世界の「eスポーツバトル」で人気キャラクターが夢の競演
当時「バスケの神」と称されたNBAのスーパースターだったマイケル・ジョーダンと、バッグス・バニーら「ルーニー・テューンズ」(1930-69)の人気カートゥーンキャラクターが凶悪な宇宙モンスターとバスケットボール対決を繰り広げる映画『スペース・ジャム』。本作が世界中で大ヒットしたのは、1996年のことだった。
あれから四半世紀。同作のコンセプトを受け継いだアクションコメディー映画が『スペース・プレイヤーズ』である。今回主演するNBAプレイヤーは、「バスケの王」と呼ばれるレブロン・ジェームズだ。
もちろん時代の流れを反映して内容は大きく変わっている。本作の舞台は文字どおりの「宇宙」ではなく、インターネット上に広がる「サイバースペース」。その宇宙はワーナー・ブラザース映画社のサーバー内にあり、ルーニー・テューンズはもちろん、スーパーマンやワンダーウーマン、キングコング、ハリー・ポッターといったワーナーゆかりのキャラクターが住んでいる設定になっている。つまり、こうしたキャラクターが次々にゲストとして登場する楽しみがあるという訳だ。
ただし 「自分が選んだやり方の中でベストを尽くせ」という映画に込められたメッセージは、『スペース・ジャム』から不変のものだ。『スペース・ジャム』におけるマイケル・ジョーダンの活躍を見て興奮していた観客の一人が鍛錬を積んでレブロン・ジェームズとなり、幼き日の夢を実現してみせたのがこの『スペース・プレイヤーズ』であるならば、将来、本作を見た幼い観客から、別のエンターテインメント映画を作る者が現れても全くおかしくはない。本作の作り手(『ブラック・パンサー』[2018]の監督ライアン・クーグラーも製作・脚本に関わっている)たちもそれを願って本作を製作したように思える。 ちなみに 『スペース・プレイヤーズ』の原題は、Space Jam: A New Legacy(スペース・ジャム:新たなる遺産)という。
『スペース・プレイヤーズ』(原題:Space Jam: A New Legacy)
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監督:マルコム・D・リー/製作:ライアン・クーグラー、レブロン・ジェームズ他/出演:レブロン・ジェームズ、ドン・チードル、クリス・デイビス、セドリック・ジョー他/公開中/配給:ワーナー・ブラザース映画
wwws.warnerbros.co.jp※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年10月号に掲載した記事を再編集したものです。
長谷川町蔵(はせがわ・まちぞう) ライター&コラムニスト。著書に『あたしたちの未来はきっと』(タバブックス)、『インナー・シティ・ブルース』(スペースシャワーブックス)、『文化系のためのヒップホップ入門3』(アルテスパブリッシング)など。
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