ジェイソン・ステイサムとガイ・リッチーが16年ぶりにタッグを組んだクライムアクション映画『キャッシュトラック』

気になる新作映画について登場人物の心理や英米文化事情と共に真魚八重子さんが解説します。

今月の1本

『キャッシュトラック』(原題:Wrath of Man)をご紹介します。

※動画が見られない場合は YouTube のページでご覧ください。

LAにある現金輸送専門の警備会社フォーティコ・セキュリティ社。現金輸送車(キャッシュトラック)を運転するのは、特殊な訓練を受けた強者の警備員たち。そこに雇われた新人パトリック・ヒル(ジェイソン・ステイサム)、通称“H”。彼の乗ったトラックが強盗に襲われたとき、驚くほど高い戦闘スキルでそれを阻止し、さらには“H”の乗るトラックが再び強盗に襲われると、彼の顔を見た犯人たちはなぜか金も奪わずに逃げてしまう。周囲が疑心暗鬼に陥る中、全米で最も現金が動く「ブラック・フライデー」に大金を狙う強奪計画が進行していた―。

謎多き男と大金強奪計画が複雑に絡み合うクライムアクション

ガイ・リッチー監督の最新作。主演のジェイソン・ステイサムとは『リボルバー』(2005)以来、16年ぶりのタッグとなる。ガイ・リッチーといえば、ロバート・ダウニー・Jr主演の「シャーロック・ホームズ」シリーズ(2009- )や、『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)が代表作だ。これらの作品は肉眼で捉え得る限界のようなガチャガチャした細かい編集や、後味の良い陽気な雰囲気の作風である。ステイサムも 同様に 、トラブルを明るく解決する物語が似合う肉体派俳優として立場を築いている。

しかし、本作『キャッシュトラック』はフィルムノワールの渋さや暗たんとした空気を持った作品だ。リッチーとステイサムにとって、こういった映画もできるという新境地のお披露目となっている。

アメリカ、ロサンゼルスにある現金輸送専門の警備会社フォーティコ・セキュリティ社。警備員たちは現金輸送車の運転と護衛をする、非常に危険な仕事に従事している。新たに警備員として採用されたのは、長くヨーロッパの警備会社で働いていた、イギリス人のパトリック・ヒル、通称“H”だ。彼は雇われて すぐに 大きな手柄を立て、一目置かれるようになる。だが、彼にはどこか挙動不審なところがあった。

時間軸を入れ替えた構成によって、ある犯罪組織のたくらみと“H”の素性や決意が、物語が進むにつれて徐々に明らかになっていく。これまでの狂騒的なガイ・リッチー作品とは異なる、大人の渋いクライムドラマだ。アクションシーンは充実しつつも、派手なドンパチというより無機質な殺し合いを見せ、冷ややかな後味が残る。何げなく一気に見せるオープニングの長回しに実は出来事が凝縮していて、そこをほぐしていくことでさまざまな物語の 原因 を見せる絶妙な作りになっている。

撮影が端正で、時折挟まれる都市を大きく引きで捉えた映像も印象的だ。アクションは同時進行していく群像劇になっていて、“H”の主観だけでなく、各人がどこで何をしているかが考えられており、重層的なドラマを作り上げている。

『キャッシュトラック』(原題:Wrath of Man)

(C)2021 MIRAMAX DISTRIBUTION SERVICES, LLC ALL RIGHTS RESERVED .
Staff ">Cast & Staff

監督・脚本:ガイ・リッチー/出演:ジェイソン・ステイサム、スコット・イーストウッド、ホルト・マッキャラニー、ジェフリー・ドノヴァン他/公開中/配給:クロックワークス

cashtruck-movie.jp

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年11月号に掲載した記事を再編集したものです。

真魚八重子(まな・やえこ) 映画著述業。『映画秘宝』、朝日新聞の映画欄、文春オンライン等で執筆中。著書『映画系女子がゆく!』(青弓社)、『映画なしでは生きられない』『バッドエンドの誘惑』(共に洋泉社)も絶賛発売中。

【1000時間ヒアリングマラソン】 ネイティブの生音声を聞き取る実践トレーニング!

大人気通信講座が、アプリで復活!

1982年に通信講座が開講されて以来、約120万人が利用したヒアリングマラソン。
「外国人と自由に話せるようになりたい」「仕事で困ることなく英語を使いたい」「資格を取って留学したい」など、これまで受講生のさまざまな夢を支えてきました。

アプリ版「1000時間ヒアリングマラソン」は、アウトプット練習や学習時間の計測などの機能を盛り込み、よりパワーアップして復活しました。

「本物の英語力」を目指す人に贈る、最強のリスニング練習

・学校では習わない生きた英語

実際にネイティブスピーカーと話すときや海外映画を見るとき、教科書の英語と「生の英語」のギャップに驚いた経験はありませんか? 1000時間ヒアリングマラソンには、オリジナルドラマやラジオ番組、各国の英語話者のリアルな会話など、学校では触れる機会の少ない本場の英語を届けるコーナーが多数用意されています。

・こだわりの学習トレーニング

音声を聞いてすぐにスクリプトを確認する、一般的なリスニング教材とは異なり、英文や日本語訳をあえて後半で確認する構成にすることで、英語を文字ではなく音から理解できるようにしています。英文の書き取りやシャドーイングなど、各トレーニングを一つずつこなすことで、最初は聞き取りが難しかった英文も深く理解できるようになります。

・あらゆる角度から耳を鍛える豊富なコンテンツ

なぜ英語が聞き取れないのか? には理由があります。全15種類のシリーズは、文法や音の規則、ニュース英語など、それぞれ異なるテーマでリスニング力強化にアプローチしており、自分の弱点を知るきっかけになります。月に一度、TOEIC 形式のリスニング問題を解いたり、書き取りのコンテストに参加したりすることもできるため、成長を定期的に確認することも可能です。

1000時間ヒアリングマラソンは、現在7日間の無料トライアルを実施中です。さあ、あなたも一緒にランナーになりませんか?

SERIES連載

2025 06
NEW BOOK
おすすめ新刊
仕事で伝えることになったら読む本
詳しく見る

3分でTOEICスコアを診断しませんか?

Part別の実力も精度95%で分析します