日本でも7都道府県を対象に「緊急事態宣言」が出され、収束の気配が見えない新型コロナウイルスですが、より一層、一人一人が事態の深刻さを受け止め、行動することが大切になってきました。さて、そんな中で取り上げる表現は conspiracy theory(陰謀論)です。正しい情報の取捨選択、できているでしょうか?
今回のニュースな英語
conspiracy theory今回の気になるニュース表現は、「 conspiracy theory」です。「 conspiracy 」の意味は「共謀」や「陰謀」、「theory」の意味は「理論、説」ということで、 「 conspiracy theory」でそのまま「陰謀論」 となります。なんだかおどろおどろしいフレーズですが、これがもとで最近、イギリスでは携帯電話の基地局に火が付けられるという騒ぎがありました。
新型コロナウイルスと陰謀論
1969年のアポロ11号による月面着陸はなかった・・・とか、エルビス・プレスリーは生きている・・・など、どの時代でも、社会的に大きな出来事があると、陰謀論が必ずと言っていいほどささやかれ始めます。
現在、世界中を恐怖に陥れている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でも、さまざまな陰謀論が出始めています。その一つが、同ウイルスの感染 拡大 が、次世代の通信規格となる第5世代移動通信方式(5G)の普及とともに広がった、として、両者に関係があるというものです。
この陰謀論が 原因 で、イギリスのバーミンガムやリバプールなど広い地域で先日、5Gの基地局に火が付けられました。しかし被害に遭ったバーミンガムの基地局を保有している携帯電話事業者は、5Gサービスの提供すらしていなかったとのことです。
この陰謀論について、マイケル・ゴーブ英内閣府担当相は「危険なたわごと」だと一蹴した他、科学者たちも「大ウソ」だと否定しています。
どんなふうに使われている?
今回の5Gと新型コロナウイルスとの関連性についての陰謀論は、「5G-Coronavirus conspiracy theory」などと表現されています。そのほか、新型コロナウイルスに関する陰謀論は「Covid-19 conspiracy thories」などと報じられています(同ウイルスに関する陰謀論は複数あるため、複数形になっています)。
米IT系ニュースメディア「The Verge」は、「How to debunk COVID-19 conspiracy theories」という記事の中で、陰謀論と正確な報道とをいかにして見極めるかを紹介しています。
www.theverge.comこの「debunk」は、日常会話で使う場面はなかなかないかもしれませんが、「偽りや誤りを暴く、正体を暴露する」という意味で、知っておきたい単語です。
記事で紹介されている小冊子「The Conspiracy Theory Handbook」では、ソーシャルメディア(SNS)に投稿された陰謀論について、拡散の抑制に実際に効果があったものとして、真偽を見極めるために自問すべき4つの質問が紹介されていました。
・Do I recognize the news organization that posted the story?さまざまな情報に触れる際、すべてをうのみにしてしまう前に、これらの質問を参考に一度考えてみましょう。その記事を投稿したのは自分が知っているニュース媒体か?
・Does the information in the post seem believable?
投稿に書かれている情報は信頼できそうか?
・Is the post written in a style that I expect from a professional news organization ?
きちんとしたニュース媒体が書きそうな体裁で書かれた投稿か?
・Is the post politically motivated?
その投稿に政治的な動機はないか?
まとめ
新型コロナウイルス に関して は、陰謀論の他にも、デマやフェイクニュースがSNSを中心に拡散されています。
デマは英語で、「misinformation」や「disinformation」(どちらも「誤情報」を意味しますが、後者は意図的な偽情報を指します)などと表現されます。そのほか、シンプルに「lie」や「false rumor」という場合もあります。
いずれにせよ、社会が不安なときには、こうした情報は真実よりも早く拡散される 可能性 があります。SNSの時代の今はなおさらです。危険な事件に発展しかねませんので、情報源をしっかり確認することが大切です。
文:松丸さとみ
フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。
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