世界を相手にビジネスを行うためには、英語力だけでなく、多様な文化を受け入れるためのグローバルマインドセット、つまり視野の広いもののとらえ方が必要となります。本コラムでは、経営コンサルタントのロッシェル・カップさんにグローバルマインドセット獲得のヒントを教えていただきます。
アメリカ人は自分の仕事にしか興味がない!
ある日本企業に、日本人とアメリカ人が共同で仕事をしている開発チームがあります。
日本側のスタッフから見ると、アメリカ人は自分の仕事の領域しか見ようとせず、全体像を十分に考慮していないようです。そのような場合、日本側はどのような対策をとればよいでしょうか?
まず一つは、アメリカ人の欠点と思われることについて本人に 指摘 しないければ、何も 改善 できないということ。また、アメリカ人にスペシャリスト的な仕事だけを頼んで、全体 把握 が必要なものを日本人だけに 委託 するのは差別的だと言えます。それではアメリカ人に十分な機会を与えられないし、アメリカ人のスキルを最大限に生かすことができません。そのような環境では、優秀なアメリカ人はあまりやりがいを感じることができず、流出してしまう恐れがあります。
しかし、【b】とは反対に、欠点を直接 指摘 する【a】もあまり推薦できません。アメリカ人は自分の分野にフォーカスして、それを完璧にカバーすることが美徳だと思っているので、それを批判されてもなぜだか分からず混乱するだけでしょう。
「役割の明確度」は文化によって違う
この問題をより深く理解するために、その背景にある文化的な違いを考えてみましょう。上記のチャートを参照してください。これは、働いているチームにおける「役割の明確度」を示しています。 左側の文化の人は、明確な職務内容の説明を要求します 。そして自分の責任範囲以外の仕事をすることに抵抗を持っています。また、誰もがスペシャリストであるべきだと思っています。対象的に、 右側の文化の人は、必要であればどんな仕事でもするという姿勢を持っています 。誰もがジェネラリストであるべきだと思っています。また、自分が担当している仕事だけではなくて、全体像の 把握 も大事だと感じています。
このチャートで見られるように、 アメリカが典型的な「明確な役割を好む」文化である一方、日本は「あいまいな役割を好む」文化 です。どちらの文化の方が優れているという訳ではなく、両方に異なる長所と短所があります。スペシャリスト的なアプローチだと、ある特定の分野を深く理解し、自分の領域をしっかりカバーするという長所があります。しかし、他の人がやっていることに十分注意を払わず、自分の分野の詳細にばかり気を取られてしまう恐れがあります。一方、ジェネラリスト的アプローチでは、他の人と上手くコーディネートしながら働くので、調和と柔軟性のあるグループになるという長所があります。しかし、誰が何を担当するのかが不明確になりがちで、深い専門知識を持つ人があまり育たないという短所もあります。
良いところを評価し、日本のやり方も理解してもらう
このように文化によって「役割の明確度」が違うこと、そしてそれぞれのアプローチに長所と短所があることを考えると、上記のケースで最も適切な答えが【c】だと分かるでしょう。まずはアメリカ人の仕事のやり方の良いところを 把握 し、十分に評価する必要があります。そして、全体像にもっと気を配るように奨励すれば良いのです。その両方を 同時に 進めることで、バランスよく一緒に 改善 していくことができます。
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編集:GOTCHA!編集部執筆:ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『 反省しないアメリカ人をあつかう方法34 』(アルク)、 『英語の品格』 (集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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