『英語ネイティブ脳みそのつくりかた』の著者でグローバルに活躍する白川寧々さんが、英語を学び、次の一歩を踏み出したい全ての人向けに、新たな 可能性 を探るための多様な選択肢とそのリアルを語る連載をお届けします。
世界へ踏み出し、経済的自由を手に入れたい人へ
「ねねみそ」(『 英語ネイティブ脳みそのつくりかた 』大和書房の愛称)の発売から、数カ月がたった。私は今、2つばかり、あの本で後悔している点がある。
1. あまりに、英語の勉強についてばかりの本になっちゃったこと2. 私が そもそも なぜ教育者をやってるのかという上位目的を書ききれなかったこと私は、英語教育という専門自体には、全く興味がない。どのメソッドがどう優れていて学術的にどうだ、という議論は、私がいないときに勝手にやっていてほしい。
私の行動を支配する 最上位目的は、「人を自由にしたい」だけ である。
そのための必要なツールとして、世界共通語として機能している英語の実践的習得、およびアントレプレナーシップ(起業家精神)思考に基づいた行動方法の入手を、現在、経済的にも、精神的にも、行動的にも、閉塞感や不自由がはびこる日本で、必要とされているところに届けて、一人でも多くの人間を自由にしたいと思っている。それだけだ。
まず、日本のリアルな実態として下記の統計を見てほしい。
このデータを 反映する ように、「ねねみそ」が出版されてから、私のところにわざわざ寄せられる感想の多くは、老若男女問わぬ、全国の日本人の自由への渇望を裏付けている。例えば、
ねねさん、本を読んで、胸が熱くなってワクワクしました。英語もこの方法で始めて、好きになったり、点数が上がったりしました。けど、結局僕は、どうしたらいいんですか?みたいなことを、講演会に行くたびに、高校生や大学生、時には違うフレーズで大人に聞かれる。
こういう質問者は、今ある議論の延長線上にある将来の道のアドバイスが欲しいんじゃない。医者になるべきか弁護士になるべきか、慶応に行くべきか東大に行くべきか、今の会社に残るべきか転職すべきか、私に教えてほしいわけじゃない。
今、目の前に「これがおまえの選択肢だよ」と大人や社会に並べられたカードが何一つ魅力的に見えないんだよ、どうしてくれるんだよ畜生!という叫びを、礼儀正しい質問に変えて私にぶつけているにすぎないのである。その答えを知っていそうな人間に見えたのなら、幸いだ。
ゲームで勇者を助ける「召喚獣」になりたい
私は人を自由にしたいが、正確にはそこに語弊があって、人は自分の力でしか、自由になれない。
自分の力でしか英語の点数は上げられないのと、自分の力でしか大学や高校や採用試験に合格することができないのと、同じ理屈だ。( ちなみに 、だから一部の塾講師や教員や親による学習者の「点数を上げた」「受からせた」系の自慢は大嫌いである。商売なのは理解するが、学習者から主語を奪うなよ、と思う)
自由を希求する勇者たちにとって、私の役割は、せいぜいが冒険の道を照らしたり、難しい戦いの中でMP(マジックポイント)と引き換えにメガフレアを噴射したりする、「召喚獣 *1 」くらいだ。
ドラクエ(ドラゴンクエスト)やFF(ファイナルファンタジー)をはじめとする冒険系RPG(ロールプレイングゲーム)をやったことがあるならおなじみの概念だが、ゲームによく出てくる「召喚獣」というのは、大抵の場合は異世界に住み、人と獣を合わせたような怖い見た目をして人語を話し、パーティ(行動を共にする仲間のグループ)との 契約 によって力を貸すときだけ召喚魔法によって呼び出される「精霊」や「魔物」のような存在だ。
しかも、物語の 展開 的に「召喚獣」が登場するのは必須じゃない。呼び出す かどうか は、あくまでも勇者が選ぶ かどうか だし、戦いに勝利しても敗北しても、その栄光や責任は勇者に帰属する。
でも、ゲームによっては、 チート(インチキ)に近いくらい強い攻撃をする召喚獣 もいる。できれば私はこの「召喚獣」のような存在になりたいと思っている。
イラスト:別所綱
日本の若者を待ち受けるデフォルトの未来は、もう十分理不尽な理由でハードモードなのだから、私が介入することで、みんなが使えるチートモードが生まれたら、これほどうれしいことはない。
本「ねねみそ」には、「英語を学ぶ目的は英語力を上げることではない。英語ができるようになった自分が、何者になりたいかゴールを決めないと、英語のための英語で迷子になって、いつまでも 先に 進めない」と書いた。
この原則を踏まえて、今回からの連載では、「英語ネイテイブ脳みそ」を手に入れた先のキャリア、白川寧々の考えるチートモードなグローバルキャリアのススメを、独断と偏見、そしてファクトフルネス(データを基に世界を正しく見る習慣)を大事にしながら、超 具体的に 書いていこうと思う。
読者対象は、国外の高等教育機関への進学を志すことによって、世界規模で自分の居場所を確保したい、全ての人だ。高校生向けには大学の学部、大学生や社会人向けには、大学院への進学の仕方、および卒業後のキャリアオプションをキュレートしてみた。
進学から卒業までにかかる費用も、「大学に行かないより安い *2 」から「結構高い」と幅広いレンジを網羅する。英語の勉強メソッドと違い、世界のキャリア事情は情報鮮度が重要になるトピックではあるので、2019年秋時点の情報という点には注意して読み進めてもらいたい。
さて、召喚獣宣言もしたことだし、好きなことを言うぞ
海外の大学・大学院進学はワーホリや短期留学と違い、安易な道ではない。特に、 私が紹介する道たちは、どれも皆、「超簡単!」「お手軽!」ではない 。そういう詐欺まがいのことをうたっているあっせん業者は昔から軽蔑している。英語圏で多くの人間に必要とされるスキルを手に入れたり、キャリアを切り開いていくには、それなりの努力が要求される。
だが、努力の絶対量や能力の要求値において、今の日本の若者が経験する普通の大学受験と比べたら、実はそんなに変わらない。日本における偏差値はある程度無視できるので、多くの学生にとってむしろ簡単なくらいだ。それなのに、 費用対効果は絶大 である。
日本の今の高校生世代にとって、偏差値に見合った普通の日本の四年制大学に進むメリットは、一般的に考えて何一つない。
私は別に、日本の大学をディスりたいわけでも、昔と比べて劣化したと嘆きたいわけでもない。授業の質が低いとかつまらないとか、学生がアメリカなどと違って勉強せずバイトばかりしているとか、そういうことを言いたいわけでもない。
単純に、どちらかというと大学の外の、 日本経済の問題 だ。
日本の大学を卒業した日本人は、どんなに自分の専門分野において優秀で才能があっても、英語ができない上に、大学特有のネットワークも限定的なので、日本国内で職を得るしかオプションがないことが大半だ。とすると、図のような統計の一部になるしか選択肢がなくなる。
日本の大学を出ると、デジタルハリウッド大学のような、世界でも売れるスキルやコネクションが身に付けられる教育機関(学校としてかなり特殊だ)でもない限り、日本でしか働けない。
日本で働くということは、1980年代には世界中のエリートにとって素晴らしいチャンスだったに違いないが、今はその限りではない。 今、あえて日本で働くことのメリットを説く外国人も知っているけど、「日本で『しか』働けない」のとは事情が違う。
デメリットはそれだけじゃない。若者の非正規雇用の 割合 、下がっていく実質賃金に比して上がり続ける国公立大学の学費、トドメに人権侵害が当たり前の職場環境や、男女ともに不利益を被るジェンダーギャップ、大企業の終身雇用をやめる宣言、セクハラ・パワハラ・ブラック企業など、挙げていけばキリがない。
結局のところ、雇用者側も、「どうせおまえは理不尽な扱いが当たり前の日本企業で『しか』働けないのだろう」と足元を見ているのである。
先に 待っている世界">留学を経験した 先に 待っている世界
実は、私がアメリカの大学進学を17歳のときに決意した理由も、結局はその点にあった。高2のときに遊びで受けた模試の成績がよくて、東大進学コースに無料で招待され、何も考えずに赤本を買って帰った2003年当時、両親は「東大は、やめときなさい」と真剣な顔で言った。
「アメリカの大学を出れば、世界のどこでもキャリアが開ける。日本の大学を出たら、日本でしか働けない日本女性として生きなければならなくなる。自分から翼を削ぎ落とすような選択は支持できない」
あれから16年くらいたったが、キャリアの選択肢という意味では、私の決断は両親が危惧したよりもすさまじいインパクトで「その通り」になった( ちなみに 私と同じく中華系のルーツを持つ、私より能力が高いトライリンガル組は、東大で学閥を築くほど数がいて、その後は外資系に勤めてうまいことやっていたらしいが、多くは高い能力にものを言わせて20代で国外へ去っていった。別にこのトライリンガル組並みにものすごく能力が高くなくても大丈夫です。 大学はもう卒業しちゃったよ!という人のための情報も載せるのでご 心配 なく )。
当時はもちろんまだ、ここまで経済が回復しないとは 予測 できていなかった。
ここまで言えば 予想 も付いている かもしれない が、海外の高等教育機関に進学することによって、逆説的に日本でもキャリアの 可能性 が広がることになる。うそだと思うなら、バイリンガル必須の外資系ヘッドハンティング会社における、 海外大卒や院卒の取引相場 を見てみよう。
実在する日本人賃金とグローバル賃金の「身分差」
27歳当時、MIT(マサチューセッツ工科大学)のMBAは 取得 したが、金融経験ゼロの私に(しかも起業準備中で就活していない)、LinkedIn(リンクドイン)で「勤務地は東京で、しかも日系ファンドなんで1千万円なんですけど」というオファーが大変申し訳なさそうに来たりした。そのときは「起業するんでごめんなさい」と返したが。
そう、日系企業の中でも、 日本人賃金とグローバル賃金という身分差が存在する のである。有名日系企業で、英米大学院卒の外国人が「グローバル賃金ならいいか」と働いているのにも最近よく出くわす。
ヘッドハンターに大枚はたいて雇った人材だろうことは 予想 が付くので、その身分になれば、セクハラの被害を訴えたら、たぶん加害者のほうがクビになるんだろう。
海外も興味あるけど日本が大好きだから踏ん切りがつかない人は、そこを参考にしてくれ。「日本で『しか』働けない」という足かせがなくなるだけで、日本に帰ってきても人権が尊重される身分になれるのだ。
金の話ばかりするなって?
人が霞(かすみ)を食って生きられる 前提 で前線に送り出し、8割を餓死させた某国軍の流れをくむような発言をするのは勝手だが、私の言う「自由」は口先ではないので、経済的自由は大 前提 である。
例えば、サラリーマンかミュージシャンを選択した結果、ミュージシャンで稼げず路頭に迷っても自己責任、なんてのは自由な人生じゃないし、自由なキャリア選択じゃない。
夢と経済的自立が両立できる 前提 で高等教育を選択できて「本当の自由」だろう。グローバル賃金は、そのセーフティネット(救済策)だ。
フィンランドなど先進諸国の学費は日本の私大並み
結局、人は自分自身の経験や視野からしか、世界を語れない。
英米の大学の学費が年々増額し、門戸も年々狭まっていくのを横目に、私はずっと教え子たちが「お金がないから日本の大学」に進学するのを歯がゆく思っていた。
だが、あったのだ。世界中を探せば、かなり多くの日本の高校生や大人が「やればできる」だけじゃなく、グローバル賃金群に入れるだけの高い教育レベルを誇り、入学ハードルも費用も問題なさそうな海外進学先が。
ハンガリーやチェコにはお金がかかるどころか、学費生活費含め、「大学に行かないより安い」費用で世界中に通用するどころか、めちゃくちゃ欲しがられる高いスキルを手に入れられる大学や大学院がある。
しかも、入学のハードルも高くない。必要なのは、ちゃんと卒業するための努力だけ。言っておくが、 最近ポピュラーな医学部 だけじゃない。
また、教育やアントレプレナーシップなどの先進的な 取り組み で、いろいろな国で憧れの存在になっている、 北欧フィンランドやオランダ などにおいては、 教育内容は超先進的なのに費用は日本の私大 くらいなのだ。
「本当」の経済的自由を手に入れるための道、紹介します!
この連載では、これまでなじみがなかったけど実は面白そうな海外進学 先に ついて、魅力や受験指南はもちろん、その先のキャリアオプション、グローバル賃金体系に乗るだけではなく、本当の経済的自由を手に入れるための道も見据えた情報提供をしていく。
また、私にとってはなじみ深いアメリカの大学院などについても、MBA以外のコスパのいいプログラムを紹介していく。
実は、「ねねみそ国外逃亡塾」という会員制オンラインサロンでは、今年年末の出願に向けて、多くの高校生や大人が集まってこれからの自分の進路を語り合い、実現に向けて準備を進めている。サロンメンバーの挑戦の結果の一般公開は、2020年1月をめどにしている。
いわば、サロンは海外進学の 先に 自由を手に入れたい冒険者のための ギルド と言ってもいい。このおせっかいな召喚獣と一緒に、冒険の 可能性 を追ってみよう。
白川寧々さんの本
▼キャリアアップについて迷っている社会人や大学生必見!
タクトピア株式会社共同経営者・北米代表。華僑。日中英のトライリンガル。6歳で来日後、日本国籍 取得 。フェリス女学院中学・高校時代に独学で英語を学び、米国デューク大学に進学。卒業後、米国大手コンサルティングファームを経て、マサチューセッツ工科大学(MIT)MBA修了。在学中にMITの「創造しながら学ぶ」教育理念を英語学習に取り入れ、実践的英語習得メソッド「Native Mind」を開発、MITソーシャルインパクト財団より出資を受ける。2015年にタクトピア株式会社、2017年に世界の10代向け起業家教育プログラム「 FutureHACK 」を創設。グローバルキャリアと日中英の3言語能力を生かして現在までに世界20カ国、累計1万5千人の学生に対してアントレプレナーシップ教育を行う。2018年に「教員をグローバルリーダーに。」というミッションの基、「 Hero Makers 」を創設。同事業は経済産業省「 『未来の教室』実証事業 」に採択された。
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
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