世界を相手にビジネスを行うためには、英語力だけでなく、多様な文化を受け入れるためのグローバルマインドセット、つまり視野の広いもののとらえ方が必要となります。本コラムでは、経営コンサルタントのロッシェル・カップさんにグローバルマインドセット獲得のヒントを教えていただきます。
今、答えようと思っていたのに!
あなたの会社は、あるオーストラリアの会社と新しいプロジェクトについてミーティングをしています。
オーストラリア人のマネージャーは、提案された件についてあなたに意見を求めてきました。あなたが数秒間沈黙したあと、そのマネージャーはこう言いました。
「わかりました。この件についてはもう少し考える時間が必要なようですので、次のミーティングでまた話すことにしましょう。では次のポイントに移りましょう」
それに対しあなたは、「今ちょうど答えようとしたところだったのに、彼は私に答えさせてくれなかった!」と感じました。
この場合、どのように対応すればよいでしょうか?
「礼儀」ではなく「文化の違い」
多くの日本人は、【a】 か【c】、あるいはその両方を選びます。相手の気持ちに鈍感な人、相手の返事を待たずに会話を早く進めてしまう人とは一緒にビジネスをしにくいと考え、そのような相手を極力避けようとします。また日本人の目には、そのような行動は失礼で身勝手に映ります。日本の文化では、沈黙があっても相手の返事を待ち、相手のペースに合わせて会話をすることが礼儀だと思われているからです。
しかしこのオーストラリア人の行動は、礼儀の無さではなく文化の違いによるものかもしれません。というのは、文化によって、沈黙に対する態度、そして会話のペースが大きく異なるからです。
上記のチャートでその違いを見てみましょう。左の方に行くほど、沈黙を重んじ、会話のペースがゆったりとした文化になります。このような文化では、質問に答えるのに時間がかかります。相手の話に黙って耳を傾け、会話中に沈黙することも少なくありません。また沈黙をいとわないので、長い沈黙も珍しくありません。むしろ、沈黙は「よく考えている証」で、良いことだと思っています。
それとは対照的に、このチャートの右の方に行くほど、沈黙を嫌い、会話のペースが早い文化になります。そのような文化的背景の人は、質問されると間髪入れずに返答し、相手の発言との間にほとんど「間」がありません。 また、相手がまだ話終えていないのに話し始めたり、人を遮ったりする 傾向 があります。沈黙はぎくしゃくした居心地の悪いものと思っているので、会話の中で沈黙が起きると、慌てて発言して沈黙を消そうとします。
自分から発言する機会を作ろう
日本は会話のペースがゆっくりの文化の典型であるのに対し、オーストラリアは会話のペースが早い文化です 。この文化的違いこそが、上記のケースの根底 にあるのではないかと思われます。それを踏まえた上で、【b】の選択肢をお勧めします。
会話のペースが早い文化の人と話すときに最も効果的なのは、積極的に注目を引いて自分の話す機会を作ること です。会話はどんどん進んで行くので、話す機会が訪れるのを待っていたら結局話せないまま終わってしまいます。時には人を遮ってでも会話に割り込んで、自分の言いたいことを発言する努力をしましょう。
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編集:GOTCHA!編集部執筆:ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『 反省しないアメリカ人をあつかう方法34 』(アルク)、 『英語の品格』 (集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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