就職や昇進でTOEICの点数が必要な場合、一般的に求められる点数は600点以上です。英語が苦手、嫌い、または遠ざかっていた人からすると、いきなりこの600点以上の点数を取ることは簡単ではありません。まずは500点を目指してスコアを上げていきましょう。そこで必要になるのが「語彙力」「文法」「英語に慣れること」です。ではなぜこれらが必要なのでしょうか。グローバル人材の育成を担う企業で、TOEIC対策をはじめとした語学プログラムおよびアセスメント開発の総責任者を務める宮園順光(みやぞの・よりみつ)さんにご説明いただきます。
500点は最初の目標として相応しい
TOEICは、マークシート方式の一斉客観テストで、リスニング(約45分間・Part1-Part4の100問)、リーディング(75分間・Part5-Part7の100問)で構成されています。テストは英文のみで、英文和訳や和文英訳といった設問はありません。
では、今回目指していく500点は、簡単に取れる点数なのでしょうか?そんなことはありません。TOEICを運営しているIIBC(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会)が公表している「英語活用実態調査2019」の中で、企業や団体が社員や職員に期待するTOEICの平均スコアは下記の通りでした。
( 英語活用実態調査 参照)
これらのデータからも分かる通り、500点は決して簡単に取れる点数ではないということが言えます。よって、最終的な目標スコアが600点以上であっても、もし現在の点数が500点以下の場合、まずはしっかりと英語力を身に付けながら、この500点を最初の目標にしていただく方が、最終的な目標に早く到達する事に繋がると言えます。
TOEIC500点を目指す受験者が必要な3つのもの
リスニングとリーディングで構成されているTOEICで点数を上げる場合に必要なのは、次の3つを伸ばすことです。
1.語彙力
2.英語の基礎知識(文法)
3.英語に慣れる
まずはこの3つをしっかりと伸ばすことで、最初のゴールである500点に到達するために必要な力を身に付けることができます。
では、なぜこれらの3つが必要か確認していきましょう。
1. 語彙力が必要な理由
今まで数多くのTOEIC受験者を指導してきた中で、特に初心者やTOEICに慣れていない人たちの感想として多かったのは、「 そもそも 単語が分からない」でした。
その感想は的を射ています。下の12語で作られた英文を見てください。
I Lucy yesterday _ the we _ last .
この文では、12語中半分の6語が抜けています。抜けている単語は、意味が分からない単語だと思ってください。
これでは、分かる単語だけで内容を理解しようとしても不可能です。
こちらはいかがでしょうか。
I talked to Lucy yesterday _ the meeting we ___ last week.
今度は分からない単語がグッと減って、大体の内容が分かるようになったのではないでしょうか。
そして最後に全ての単語が分かる状態にしてみましょう。
I talked to Lucy yesterday about the meeting we had last week.
これで、「私は、先週あった会議について昨日ルーシーと話した」という文であることが確認できました。
当たり前のことですが、文は単語が組み合わさって作られているので、上記の例文のように、分からない単語が多ければ多いほど、文の意味が分かりにくくなります。
語彙力がなければ、リスニングで文を聞いて理解することもできず、リーディングでは文を読んでも意味を持たない文字が並んでいるように感じてしまいます。
また、Part 5の短文穴埋め問題などでは、語彙問題が含まれており、語彙力を試されます。
これらの理由から、500点以下の人がまず伸ばすべきものの一つが語彙力なのです。
2. 英語の基礎力(文法)が必要な理由
人間がその形を保つために骨が必要であり、スポーツが成立するために競技規則があるように、英語をコミュニケーションの道具として使えるようにするためには英語の基礎力(文法)が必要です。
単語の知識が大切なことは既にお伝えした通りですが、仮に単語を10万語覚えたとしても、文法の知識がない状態ではその知識もほぼ意味がないと言っても過言ではありません。
こちらに単語を列挙していますが、これらの単語を前から読んで、書かれている事が理解できるでしょうか?
took their a back see to friends to old hometown they trip some
時間をかけてパズルを解くように並び替えれば分かるかもしれませんが、並び替えるためには文法の知識が必要です。よって、英語を理解するためには、文法をしっかりと理解する必要があります。
文法の知識があることで、例えば文の中で主語が来た後にはどのような単語が来るのか、動詞には過去、未来、現在を表す時制があるといったことが分かり、文を読んだり聞いたりしたときに内容を理解することができるようになります。
Part 5の穴埋め問題やPart 6の長文穴埋め問題では、文法問題も出題されるので、それらのパートで点数を取るためには文法の知識が不可欠と言えます。
語彙力 同様に 、英語の基礎力がなければ、TOEICの点数は全く上がりません。要するに、まずはこれらの力が必要と言う事です。
* ちなみに 上の単語を並び替えると下記の文になります。
They took a trip back to their hometown to see some old friends.
3. 英語に慣れることが必要な理由
TOEICの点数を取るために英語力を伸ばす事が必要ですが、そのためには英語が頭にしっかりと入るようにしなければなりません。また、TOEICの試験を受ける際にも、頭が英語を聞いたり読んだりという「英語脳」に切り替わる必要があります。
しかし、英語が苦手だったり、英語にあまり触れた経験がない人は、英語が体に入ってこない 可能性 が高いばかりでなく、中には無意識に拒絶反応を起こしてしまう人もいます。
英語の歌が流れたり、英語の映画を観るときに、それらの英語を分からなくても聞こうとする姿勢をまずは持つことが大切です。
聞いたり、読んだりした英語が理解できる、話した英語を理解して貰えたというような達成感が自信へと繋がり、それが英語を身近なものにしてくれます。そのために英語に慣れる練習をして、しっかりと英語と向き合えるようすることが求められます。
これらの3つのものが身に付くことで初めて500点が取れるようになります。また、しっかりと現在の英語力に合った目標を設定し、基礎力を上げる事が一番効率的ですので、頑張りましょう。
宮園順光(みやぞの・よりみつ) https://www.grolen.co.jp/
株式会社グローレン 取締役。10歳より高校卒業までをベルギー(アントワープ)で過ごす。帰国後、上智大学比較文化学部を卒業後、株式会社イーオンに入社。TOEIC 990、英検1級の資格を持ち、初級?上級ビジネス英会話レッスン等、幅広くレッスンを提供。また教務主任として各スクールのマネジメント、講師育成、教材・プログラム開発に従事。2014年株式会社グローレンに参画。 TOEIC対策eラーニングのモバイック の運営をはじめ、語学プログラムおよびアセスメント開発の総責任者を務める。趣味はサッカー観戦(柏レイソル)。
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