いろいろな英語の表現やそのニュアンスを、アンちゃんこと言語学者のクレシーニ・アンさんと学ぶ連載。最終回となる今回は、日常生活でよく使う3つの表現、「ちょっと待って」「もう一回言って」「どうしたの?」をどのように伝えるのかを知り、「生きている英語」を楽しみながら使えるようになりましょう!
「生きている英語」を使って楽しもう!
ヤッホー!福岡在住、アメリカ系日本人のアンちゃんです!
分かりにくい英語表現や、勘違いしやすい英語のフレーズについて書いてきたこの連載も、いよいよ最終回となった。ぴえん。いや、「ぴえん」はバリ死語だから子どもに「ママ、やめて。キモッ!」と言われそう。ちなみに「キモッ」を英語で言うなら cringe が当てはまる。
ママ、マジでやめて。キモッ!
OMG, Mom, stop. That’s so cringe!
言葉は生き物だ。生き物だから同じ話者でもコミュニケーションが取れない時がある。世代によって、地域によって、使う言葉が違うから。同じ母語の話者でも分からないことがあるんだから、第二言語を習っている人はさらに大変だ!
教科書で学ぶオーソドックスな英語と、ネイティブが実際に使う英語は違う。教科書の英語も間違ってはいないし、通じないわけでもないけれど、若干不自然というケースがたくさんある。今日は教科書英語から飛び出して、カジュアルな英語のフレーズを学んでいこう。そう、「生きている英語」を楽しもうね!
1:「ちょっと待って」を英語でなんて言う?
私が日本に来て最初に覚えた日本語は「ちょっと待ってください」だった。めちゃくちゃ便利な表現だ。日本語は英語よりも丁寧語や敬語の表現が豊かだと言われていて、当然、「ちょっと待ってください」にも山ほど違う言い方がある。
- ちょっと待ってくれる?
- ちょっと待ってね。
- 少しお待ちください。
- もう少々お待ちください。
- ちょっとお待ちいただけますか。
- 少々お時間いただいてもよろしいでしょうか。
英語は日本語ほど丁寧な言い方はないかもしれないけれど、「英語には敬語がない」という考えは間違っている。英語の「ちょっと待ってください」の言い方を見てみよう。
- Could you please wait a minute?
- Wait just a minute, please.
- Hold on, please.
- Could you hold on for sec?
*sec は second(秒)の省略形。- Would you mind holding on for a minute?
Could you ~? や Would you mind ~? などを使った言い方は英語の「敬語」に当てはまると思う。ちょっと長めの例文だと次のような感じになる。
- Would you mind waiting for a bit while I check?
確認いたしますので、少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか?- I’m really sorry, but could you wait here while I check on that for you?
大変申し訳ありませんが、確認いたしますので、こちらでお待ちいただけますか?
「待って」を伝える英語:wait と hold on
「待って」を伝えるための表現は主に wait と hold on の2つだ。wait の方が丁寧だと思われるかもしれないけど、一緒に使う単語やイントネーションによっては wait が失礼になる場合があるし、hold on は接客で使われる際にも丁寧で親しみを感じさせる。
- I SAID wait please!(待ってって言ったやろう!)
- Wait here.(ここで待って。)
- Could you wait a sec? I really appreciate it!(ほんの少し待ってくれる?助かる!)
- Hold on just a sec. I’ll get her.(ちょっと待ってね、彼女を呼んでくる。)
- Hold on, I’ll be there soon!(もうちょい待ってくれる?すぐ着くけん!)
- Could you hold on a minute? I’ll check.(ちょっと待ってくれますか。確認します。)
友達同士でシンプルに「待ってね」と言いたい場合だと、親しみのある Hold on. の方が自然な表現だ。めっちゃ仲がいい人に Please wait. とはあまり言わない気がする。
少しフォーマルな場面も、使い方に気を付ければ hold on で問題ない。ポイントは、「could you」「 would you」「do you mind」などの丁寧なフレーズを前に付けること。
- Could you please hold on for a minute?(少々お待ちいただけますか?)
- Would you mind holding on for just a minute while I check on that for you?(確認いたしますので、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?)
- Do you mind holding on for just a minute?(少々お待ちいただいてもよろしいですか?)
- Could you hold on a moment while I look it up?(調べますので、少々お待ちいただけますか?)
もちろん、hold on も wait と同様、イントネーションによって失礼になる場合がある。例えば、I SAID hold on, didn’t I? なら「もう、待ってって言ったやろう?聞いてないの?」と怒っている感じ。あるいは、ため息の後で HOLD on. と言ったら「(私にとって大きな迷惑やけど)待って、確認するから」みたいなニュアンスになる。
コミュニケーションは、言葉だけじゃなくて表情や声のイントネーションによって相手に気持ちが伝わることが多いのだ。こういう微妙なニュアンスは、語学の学習においてとても難しいことだ。
今までに、英語がめっちゃペラペラな日本人と話していて「こいつ、うるさいな、殴りたい!」と思ったことが何回もある。なぜかというと、その人は確かに英語がうまいんだけど、やっぱりイントネーションや言葉のニュアンスを分かっていなかったからだ。もちろん私も同じように、日本語を話していて日本人を怒らせた経験が何度もある。もしかしたら、「アンちゃんはうるさい!殴りたい!」と思ったことのある人がたくさんいるかも……。
ちなみに、hold on の発音(アメリカ英語)は「ホールドオン」じゃなくて「ホーダン」みたいな感じです。
では、次に行きましょう!なかなか使い方が難しいやつだよ!
2:「もう一回言って」は英語でなんて言う?
学生たちは英語が分からない時、よく間違えて One more, please. と言ってくる。One more, please. は「もう一つお願いします」という意味だから、正しくは Once more, please.(もう一度お願いします。)が学生の本当に言いたいことだろう。
この Once more, please. が一番短くて絶対に通じる表現だけど、他の言い方もたくさんある。
- Could you please say that again?(もう一度言っていただけますか?)
- Can I ask you to say that again?(もう一度言っていただくことはできますか?)
- Could you please repeat that?(繰り返していただけますか?)
- Would you mind repeating that?(繰り返していただいてもよろしいでしょうか?)
- I’m sorry. I didn’t catch what you said. Could you say that again?(申し訳ありません。おっしゃったことが聞き取れませんでした。もう一度言っていただけますか?)
- Sorry, could you say that again. I didn’t catch it.(すみません、もう一度言っていただけますか?聞き取れませんでした。)
友達同士だと、もっとカジュアルな言い方がたくさんあります。
- Come again?
- Say again?
- Huh?
- Whaddya say?(=What did you say?)
*Whaddya は What do you のくだけた形。
これらを日本語に訳すなら「何?」「はい?」、そして私が暮らす北九州市だと「なんっち?」。とてもカジュアルな英語表現なので、フォーマルな場面では使わないように要注意!一番気を付けないといけないのは「Huh?」で、これは本当に仲のいい人同士でしか使わない表現だ。
ちなみに、Huh? は聞こえなくて聞き返す時以外に、納得いかない時にも使う。それぞれの会話例は、次のような感じ。
【聞こえなかった(聞いていなかった)場合】
A:Are you listening to me?(聞いてる?)
B:Huh... Sorry, I wasn’t paying attention.(え……ごめん、聞いてなかった。)
【納得いかない場合】
A:I think I am going to vote for him.(彼に投票しようかな)
B:Huh?(マジで?何考えてるの?)
では最後の3つ目に進もう!
3:「どうしたの?」は英語でなんて言う?
調子や状況をうかがうフレーズとして「What’s up?(どうしたの?/元気?、など)」を知っている人は多いと思うけど、さまざまな使い方とニュアンスがあるから詳しく説明していくね。
A:Hey man, what’s up?(おー、最近どう?)
B:Not much.(まあ、別に。)
What’s up? は若者がよく使うフレーズ。「How are you?」の若者版スラングって感じかな。
How are you? に関しては、日本の英語の教科書に「How are you?」「I’m fine thank you, and you?」という会話がよく出てくるけれど、正直、今までの人生で実際にやりとりをしたことはないかも……。How are you? の方は時々使うんだけど、それに対して I’m fine thank you, and you? と答えたら“ロボット感”が半端ない。
How are you? をもうちょっとカジュアルにした言い方は次の通り。
- How are ya?
- How’s it goin’?
- What’s going on?
そして、これらに対してカジュアルに返事したい時の表現は、
- I’m good.(元気だよ。/まあまあだよ。)
- Not bad.(悪くないよ。/まあまあかな。)
- Pretty good.(なかなか良いよ。/結構いい感じ。)
- Hanging in there.(なんとかやってるよ。/どうにか頑張ってるよ。)
- Busy.(忙しいよ。)
- Kinda tired these days.(最近ちょっと疲れ気味かな。)
*kinda:kind ofの省略形。(くだけたニュアンスなのでフォーマルな場面や初対面の人に使うのは避ける)
など、たくさんのバリエーションがある。逆に、もうちょっと丁寧な言い方には、「How are you doing?(調子はどうですか?)」「How have you been?(最近どうしてた?/お元気でしたか?)」などがあるよ。
では、What’s up? に戻ろう。What’s up? は「調子はどう?」以外に、「どうしたの?」という意味も持っている。
A:I was wondering if I could talk to you for a minute?
B:Sure. What’s up?
A:ちょっと話したいことがあるんだけど、いい?
B:いいよ。どうしたん?
A:Hey, Dad. Do you have a minute?
B:Sure, what’s up?
A:お父さん、ちょっといい?
B:いいよ。どうしたんだ?
A:I need to talk to you about the deadline for the project.
B:Sure, what’s up?
A:課題の締め切りについて話したいんだけど、いい?
B:うん、どうしたの?
You seem to be kinda down these days? What’s up?
最近、ちょっと落ち込んでない?どうしたん?
この英文で、What’s up? を「What’s wrong?」「What’s the matter?」「What’s been going on?」に置き換えても自然で、問題なし。また、「話を聞くよ」という意味のフレーズも一緒によく使われる。
- What’s up? I’m here for you if you want to talk.(最近どうしたん?話したいなら聞くよ)
- What’s the matter?Would you like to talk?(どうしたの?話したい?)
- I’m not sure what’s going on, but I’m here to listen.(何があったのかは分からないけど、話ならいつもでも聞くよ。)
- I’m here, if you ever want to talk.(話したくなったらいつでも聞くよ。)
まとめ
教科書の英語と、実際に英語圏で使われている英語はたまに違うよね。実は、日本語もそう。日本語の教科書に「お元気ですか」はよく出てくるけれど、日常生活でそれを日本人が使っているのはあまり聞いたことがないな。でも、「土台」があることは悪くない!
それに、少しずつ、より自然な表現を使えるようになっていくことで、コミュニケーション能力が日々アップする。「How are you?」も「お元気ですか」も間違っていないけど、
- What’s up?
- How’s it going?
- How have you been?
- ヤッホー!
- 久しぶり!元気?
- ご無沙汰しています!
こうした表現の方が自然に違いない。
でも、言葉に対してガチガチにならないで、いろいろな表現を楽しむことが一番だと思う。
この連載で皆さんと言葉を楽しむことができて、本当にうれしかったバイ!また、いつかどかかで会おうね!
アンちゃんも日本語の謎に沼ってる!?

\言語沼の世界へようこそ/
『日本が好きすぎて日本に帰化した元アメリカ人の応用言語学者が語る 世にも奇妙な日本語の謎』
日本が、日本語が好きすぎて、日本人に帰化した元アメリカ人の応用言語学者が語る。なんでこんなヘンテコな言語を日本人は操れるの!?外国人だからこそ気づいた“日本語の不思議”と、そこに宿る文化の奥深さをユーモアと愛情で綴った一冊です。
◆ 目次 ◆
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第4章 これを使いこなせれば「日本人」として認定したい日本語
第5章 何を隠そう「カタカナ語オタク」です
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