分かるようで実はややこしい英語のニュアンスを、言語学者のアンちゃんことクレシーニ・アンさんと学びましょう。今回取り上げるのは「もちろん」「恋人」「~した方がいい」……って、訳すのは簡単そうな言葉ですよね。さて、どのように気を付けないといけないんでしょうか?
今回のテーマ:要注意なニュアンス表現
ヤッホー!福岡在住のアンちゃんだよ。
この連載では、英語と日本語の微妙な違いについて書いているバイ!同じ日本語話者であっても、日本語の解釈は人それぞれ違うから、外国語を勉強し始めるとさらにややこしくなるよね。
例えば、日本語の「行けたら行く」について考えてみよう。これは地域によって、「本当に行くつもりがある率」が違うらしい。関西だと、行くつもりのある人は少ないと言われる。一方、私が住んでいる九州では、本当に行くつもりの人が結構いる。「検討する」「考えとく」もそう。
方言も入ってくるとさらにややこしくなる。京都の“曖昧な言い方”は全国でも有名だ。日本人でさえその裏の意味を理解できない人がたくさんいるんだから、外国人にとっては大変すぎる!「おたくの息子さん、ピアノが上手になりはったね」は、「なんで夜遅くピアノを弾いているの?近所迷惑だ!」という意味だと聞いたことがある。
さて今日は、英語の微妙なニュアンスの違い3つについて解説するよ!多くの日本人が難しく感じ、間違って使うこともあるかもしれない。そういうことが減るように、いろいろ説明するね。それでも、たまに間違えることがあると思うけど、落ち込まないで。「私はダメだ。恥ずかしい」なんて思わなくていいんです。「よかった、勉強になった!」と感じながら言葉の世界を楽しもう!
①「もちろん!/ Of course!」は気軽に使えない
数年前、アメリカで留学生と話していた時のこと。私が Do you like baseball? と聞くと、彼は Of course! と返事した。私は嫌な気持ちになった。これ、なぜだか分かる?Of course. は「もちろん」という意味だから、そんなに嫌な表現じゃないはずなのに……。
このケースは、英語の sarcasm(皮肉)を理解すると、“嫌な気持ち”が分かってくるかもしれない。英語の皮肉はなかなか難しいから、英語を勉強中の日本人は気づかずに“嫌なこと”を言ってしまうリスクがある。
Of course. の使い方は、実は気を付けないといけない。まず、答えが明らかな質問に対しては、Of course. と答えて全然問題なし。例えば、日本人が Can you speak Japanese? や Can you do origami? と聞かれて、Of course. と答えるのはOK。「もちろん!日本人だからさ!」という意味で”Haha. Of course I can! I’m Japanese, right?” みたいな返事をするのは全然大丈夫だ。
同じく、次のように「相手が当然そうだろうと思っていること」や「好意的な依頼」への返事として Of course. と答えるのも自然です。
【テスト期間の前に】
A:Are you going to study for the test?(テスト勉強するの?)
B:Of course! I wanna get a good grade.(もちろん!いい点とりたいもん)
A:Would you please help me?(手伝っていただけますか?)
B:Of course!(もちろんです!)
A:Hold on, okay?(ちょっと待ってて、いい?)
B:Of course.(もちろんいいよ)
⇒ Of course. の代わりに Sure! を使ってもよい。
A:Are you looking forward to summer vacation?(夏休み、楽しみにしてる?)
B:Of course! I can’t wait!(もちろん!待ち切れない!)
私が留学生に Do you like baseball? と尋ねた時、彼が野球を好きなのかどうか全く知らない状態だった。また、世の中に「野球が好きではない」という人はたくさんいる。だから、この質問に Of course. と答えると、「もちろん!アンタなんで分からんのよ?」みたいな結構きついニュアンスになってしまうのだ。
当たり前だけど留学生の彼にそんなつもりはなかったので、私も Of course. の正しい使い方を教えるだけにしたけれど、改めて語学は難しいなと思った。この時の彼の答えとしてふさわしいのは、「Yeah, I totally love it!(うん、めっちゃ好き!)」とか、「Yeah, I am a HUGE fan.(うん、大ファンだよ)」といったものだ。
Of course. 以外の返事の仕方
とにかく、英語の Of course. の使い方には気を付けよう!分からない時は、例えばこういう返事をするといいよ。
- Yeah, I totally love it!(ああ、すごく好きだよ!)
- No, not that much.(ううん、そこまで好きじゃない)
- Yes, I am.(はい、そうです)
- No, I don’t think so.(いや、そうは思いません)
他の会話例も見てみよう。
【日本人に尋ねるケース】
A:Can you speak French?(フランス語は話せますか?)
B:Just a little. I just started studying it.(少しだけです。勉強し始めたばかりなんです)
A:Are you going to the party tomorrow night?(明日の夜のパーティーには行くの?)
B:No, I can’t. I have to work.(ううん、行けない。仕事があるんだ)
A:Do you like Christmas?(クリスマスは好き?)
B:Yeah, I love it! It’s my favorite holiday!(うん、大好き!一番好きな祝日だよ!)
Of course not. にも要注意
同じように、Of course not. の使い方にも気を付けて。Of course not. は Of course. よりも危険な表現。答えが明らかな時、かなりきついニュアンスになる。「いや、さすがにないよ。なんでそんなバカな質問をしてくるの?」みたいな感じ……。
A:Are you gonna go drinking on Wednesday?(水曜日、飲みに行く?)
B:Of course not! We have an exam the next day.(バカなん?行くわけない!次の日テストがあるもん)
A:Have you ever cheated on your wife?(奥さんを裏切って浮気したことある?)
B:Of course not! I would never do such a thing.(もちろんないよ!そんなことするわけない)
A:You gonna go out with her?(あの子とデートに行くん?)
B:Of course not! I have a girlfriend.(行くわけなかろう!僕には彼女がいるし)
質問をした人が「どんな答えが返ってくるかまったく分からない、知らない」状況で、それに対して Of course not. と答えた場合、もっと印象はキツくなる。
A:Do you like baseball?(野球は好き?)
B:Of course not! It’s the most boring sport ever.(好きなわけなかろう!超〜つまらんスポーツやもん)
A:Are you Japanese?(日本人ですか?)
B:Of course not! Do I look Japanese?(バカなん?そんなわけない!私が日本人に見えるわけ?)
まとめるとしたら、「Of course. はよく気を付けて使えば大丈夫だろう。Of course not. は、初心者はできるだけ使わない方がいいと思う」かな。もちろん、トゲのある強いことを言いたい場合は、どうぞ遠慮なく使ってね!
ちなみに、日本語の方言にも似ているものがある。博多弁には「~知っとうと?」という表現があり、これは標準語でいうと「知っていますか?」にあたる。全国的にこの博多弁はよく知られていて、「かわいい」と感じる人がたくさんいるようだ。だけど福岡に住んでいる人からすると、この表現は時にトゲが出てくる。場合によっては、「ええ?なんで知らんの?あんたバカなん?」みたいな、上から目線のニュアンスになってしまう。ただ、いつもそうとは限らず、時と場合によって、人によって、同じ福岡人であっても解釈が違う。言葉って、なかなか奥深いものだよね。
② Loverは「恋人」ではない
では2つ目に進もう。
クリスマスの時期に、授業で学生たちがこんな文章を書いたことがある。
Many Japanese people spend Christmas with their lover.
私は思わず恥ずかしくなった。英語の lover =恋人だと思い込んでいる人はすごく多いんだけど、実は、lover は「性的関係のある相手」という意味を持つ単語。めちゃくちゃ強いニュアンスの、いわゆる“エロい”単語なので、それをあえて強調したい場合以外は使わないのが賢明だと思う。
代わりとして、boyfriend / girlfriend / partner などを使った方がいい。
Many Japanese spend Christmas with their boyfriend or girlfriend.
多くの日本人はクリスマスを恋人と過ごします。
I am going out with my girlfriend tomorrow.
明日、彼女と出かけます。
My partner and I are spending the holidays together.
パートナーと一緒に休日を過ごします。
付き合っている人がいるか聞きたいなら
「彼氏・彼女はいますか」と聞きたい時は、Do you have a boyfriend/girlfriend? でもいいけれど、次のような表現だとより自然かもしれない。
- Are you seeing anyone?
- Are you dating anyone?
- Are you going out with anyone?
ここでの see / date / go out はどれも「付き合う」「交際する」という意味だから、「付き合っている人はいますか?」と伝わる表現になる。逆に、Do you have a lover? は危ないから絶対に使わないでね!
「好きな人」を英語にするのは難しい!
もう一つややこしい言葉がある。それが、「好きな人」だ。日本語ではよく使われるけど、英語にはなかなか訳しにくいです。
例えば、「好きな人はいるの?」と聞きたい場合、一般的な言い方なら、Is there someone that you like? になるだろう。若者言葉なら crush を使って、Are you crushing on anyone? とか Do you have a crush? という聞き方ができる。ここでの crush on は「~に恋している」、crush は「急な恋心、夢中、その相手」という意味だ。
- He is my crush.(彼が私の好きな人なの)
- She is my crush.(彼女、今気になってる人なんだ)
- He is her crush.(彼は彼女の好きな人です)
- I am so crushing on him.(私、彼にめっちゃ夢中なの)
「好きな人」に関して英語で話すときも、lover だけは使わないよう気を付けてね!
③「~した方がいい= had better」はダメ!
では、3つ目に進もう。
過去の記事でも触れたことがあるんだけど、バリ大事だからもう1回書きます。それが、「had better」について。
「~した方がいい」を「had better」と訳す日本人はすごく多い。でもこれは……1つ目の「もちろん!/Of course!」よりも危ない表現です!「~した方がいい」「~すべき」を英語に訳したいなら、should や、もうちょっと柔らかい表現の「Why don’t you ~ ?」「Maybe you should ~.」などが無難だろう。
学校でなぜ「~した方がいい= had better」だと学ぶのかよく理解できない。had better は命令に近く、目上の人が目下の人に対して使うことが多い表現だから、誤って使うと相手を怒らせてしまう可能性がある。
逆に、had better を使えるのは次のようなシーンだ。
【親が子どもに対して言う】
You had better pass the test or you can’t hang out with your friends!
テストに合格しないと友達と遊ばせんよ!You had better do what I tell you.
私の言うことに従わんとやばいよ(=私の言うことを聞いた方がいいよ)。You had better stop talking back before I get really angry.
私が本気で怒る前に、口ごたえするのはやめた方がいいよ。
【上司が部下に対して言う】
You had better not be late again.
もう二度と遅刻しないでくれ(=もう二度と遅れない方がいいよ)。You had better turn in the report on time or you are fired. It was a week late last time.
締め切りまでにレポートを提出しなさい、でないとクビになるよ。前回は1週間も遅れたんだから。
命令っぽいでしょう?
それから、友達間でも had better が使われる場合がある。それは、危ないことをし続ける友達を真剣に止めようとする時だ。
You had better stop drinking so much or you are gonna kill yourself.
そんなに飲み過ぎるのはやめた方がいいよ。このままだと命を落としかねない。You had better study for exams. You are going to flunk out of school.
試験勉強しないとやばいって。落第しちゃうよ。You had better stop cheating on your girlfriend. You are going to get busted.
(彼女を裏切って)浮気するなんてやめなよ。絶対バレるから。
では、「~した方がいい」と英語で言いたい時はどうすればいいかというと……。
You should see this movie! It’s incredible!
この映画、見た方がいいよ!めっちゃいいから!
Why don’t you ask her out?
彼女をデートに誘ってみたら?
You should get a flu shot this year.
今年はインフルエンザの予防接種を受けた方がいいよ。
You should consider applying for that job. It’s perfect for you!
あの仕事に応募することを考えてみなよ。あなたにピッタリ!
Maybe you should just wait and see.
ひとまず様子を見た方がいいかもね。
もし、3つ目の「You should get a flu shot this year.(今年はインフルエンザの予防接種を受けた方がいいよ)」を「You had better get a flu shot this year.」と言ってしまうと、「予防接種を受けないと死ぬよ!」みたいな強いニュアンスに近くなる。
なので、命令する時や危ないことを止める時でない限り、極力 had better は使わない方がいい。つまり、You had better not use had better! だね!
まとめ
どんなに長く勉強しても、語学の勉強は終わらない。私は27年間日本語を勉強しているけれど、今もなお恥ずかしいミスをする。
以前、福岡にある宮地嶽(みやじだけ)神社で開催された「風凛(ふうりん)まつり」に行った時のこと。数千個もの風鈴で境内が彩られる行事だ。めっちゃ感動した私は、友達にこう言った。
「昨日、宮地嶽神社の不倫祭りに行ったよ!」
やばい。母語である英語は、日本語のように母音の長さによって単語の意味が変わることがほとんどないから、「風鈴」と「不倫」を区別するのはなかなか難しい……。
でも、記事のネタになったし、友達は爆笑してくれたからよし!皆さんも、英語の間違いを減らすのに私の記事を役立ててもらえたら嬉しいけれど、たとえミスをしたってドンマイ!ネタになるし、それ以降同じミスは絶対にしないからさ!
とにかく、言葉を楽しもうね!
アンちゃんも日本語の謎に沼ってる!?

\言語沼の世界へようこそ/
『日本が好きすぎて日本に帰化した元アメリカ人の応用言語学者が語る 世にも奇妙な日本語の謎』
日本が、日本語が好きすぎて、日本人に帰化した元アメリカ人の応用言語学者が語る。なんでこんなヘンテコな言語を日本人は操れるの!?外国人だからこそ気づいた“日本語の不思議”と、そこに宿る文化の奥深さをユーモアと愛情で綴った一冊です。
◆ 目次 ◆
第1章 ガイジンから見た日本語の不思議
第2章 やっぱり不思議なニホンジン
第3章 日本語はなぜこんなにムズカシイのか?
第4章 これを使いこなせれば「日本人」として認定したい日本語
第5章 何を隠そう「カタカナ語オタク」です
編集部イチ押しのアンちゃん連載
「アンちゃんが見つめた 多様性の懸け橋」

2023年(令和5年)11月21日、アンちゃんは日本国籍を取得。「日本人になりたい」と願い続けたアンちゃんの夢が叶った日でした。この連載では、日本国籍を取得するまでのさまざまな思いや出来事、そして取得後のアンちゃんに起きたことなどをつづります。
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昔は誰もが知っていたのに、今はすっかりすたれた言葉――死語となった日本語を、アンちゃんが毎回1つ、ピックアップして解説します!
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