
「これさえやれば英語ペラペラ!」「英語で人生が変わった!」―― 自分も話せるようになりたい・上達したい、でもこうした成功談を読むのはもうしんどい・・・。そんなあなたに、自身も「挫折の現在進行形」だという医師・井上智介さんが、自らの経験をベースに、英語学習で「しなくてもいいこと」をつづります。英語が好きで、英語に憧れるからこそ疲れたあなたへ、優しく面白く効く処方箋です。
目次
英語の成功体験、もうええでしょう
Hello, everyone!
・・・すいません。言ってみたかったんです。
はじめまして、井上智介と申します。誰も私のことはご存じないと思うので、最初に自己紹介をさせていただきますね。職業は医師でして、大阪で精神科医や産業医として活動をしています。たまに、書籍やWEB記事などを執筆しています。
他にこれといった特徴はないですが・・・強いて言えば、風貌が金髪アフロに赤メガネです。「あ、ヤフーニュースのコメント欄で見たことある!」と思ってくださった方が、ごく少数いるかもしれません。そちらで公式のコメンテーターをやっておりますので。
自己紹介はこれくらいにして、今回からアルクさんのWEBメディア「ENGLISH JOURNAL」(以下、EJ)で全6回の連載をさせてもらうことになりました。今回はその記念すべき第1回。
そこで!いきなり超大切な結論をお伝えしますね。
よくあるじゃないですか、「昔は赤点だったけど、○○で頑張って勉強したらスルスルと英語が話せるようになって、今ではネイティブ並みです!」みたいなサクセスストーリー。
はい!あんな話は一切出てきません。さすがに地面師・・・じゃなくて医師でも「もうええでしょう」と言いますわ。英会話に関してはサクセスとどころか、いまだに四苦八苦。何度も挫折して、そして今もなお挫折の現在進行形というリアルな話をしていく予定です。
だから安心してください。読み終わった後に「公式LINEに登録してね!」「今だけ最強フレーズ100選プレゼント!」とか、そういう謎の誘導もありません。どうぞ肩の力を抜いて、ゆる〜く読んでいってくださいね。
「英会話むず過ぎ」な私とEJの出会い
というか・・・あなたも気になっているのではないでしょうか?なぜ、EJ史上もっとも英語レベルが低いであろう私が連載を任されたのか、と。
いや、それは私が聞きたい!
この場所って、語学が堪能な人が色々と教えてくれる場所ですよね?
とりあえず超簡単に経緯を説明すると、EJの編集者さんが、「英会話むず過ぎやろ・・・」とぼやいてる私を見つけて声をかけてくれたことで実現してしまいました。語学がペラペラの人だけで「ウェーイ!」と群れるのではなく、私みたいに語学ができずに悩む人も絶対に見捨てない姿勢なのです!それぞ、まさにアルクのスローガンである“地球人ネットワーク”!知らんけど。

「地球人ネットワークを創る」がスローガン。
あなたも私も世界とつながっている・・・知らんけど。
私の失敗、あなたは同じ轍(てつ)を踏まなくていい
さて、この連載では、私がやってきた英語学習の遍歴や失敗から、「皆さんは同じ失敗をしないでくださいね!」というメッセージを伝えていきたいと思っています。
そして、まず初回でお伝えしたいのが・・・「私はプライドが高い」ということ。
はい、未熟者なんです。世間的にも「医者ってプライド高そう」と思われているかもしれませんが、その代表と言っても過言ではないくらい高い。ははは。――とはいえ、プライドが高いことの善悪を、ここで語るなんて野暮なことはやめておきます。
大切なのは、自分の性格を受け入れること。なぜなら、自分のプライドの高さが今後の英語学習とも関わってくるからです。
「英語ができない自分」に傷つくプライド
かくいう私は、大学受験まで英語にそこまで苦手意識を持っていませんでした。医学部には結果的に二浪して入ったのですが、当時のセンター試験(現:大学入学共通テスト)でも英語は9割くらい点を取れていた記憶があります。
しかし、いつになっても英会話となると全くダメ!本当にダメ。これがもうね、自分のコンプレックスをグサグサと刺激してくるんです。さらに医師として社会に出ると、大きな壁にぶつかります。それが「世間の偏見」。
あなたは、「あの人、お医者さんだよ」と聞いたら、その人はどれくらい英語ができると思いますか?なぜこんなことを聞くかというと・・・そう!「さぞ、お勉強ができたんでしょ。英語もペラペラなんでしょ?」と思っている人の多さと言ったら!
なんなら「ドイツ語もペラペラですよね!?」なんて言ってくる人までいます。「んなわけあるかい!」とツッコミを入れつつ、その「世間の偏見・期待」と、「英語ができない自分」とのギャップにプライドが傷つくというわけです。
要するに、私はまだまだ英会話ができるようになっていません。
英会話スクール、最初は「正解」を知らなくていい
そしてもう一度言いますが、この連載では最終回まで進んでも、「やったー!実はこんな方法で英語ペラペラになりました!」みたいな話にはなりません。受験英語はまあまあできた奴でも、いまだに英語を身につけるのにかなり苦戦しているよ、というリアルな話です。
「じゃあ、英会話習得にどんな努力をしてきたのか」と問われると・・・そうですね、「それなりにお金と時間をかけてきた」と言えるでしょう。
もうずいぶん前ですが、大学に入ってからは、英会話はおろか英語に触れる機会自体、一気に減りました。だけど時代の流れでしょうか、2000年以降は医師国家試験でも医学英語の出題が始まり、“なんとなく英語が求められる空気”みたいなものは確実にあった。
それに実際、外国人観光客の方が患者として受診するケースも増えていたため、「英語ができた方が絶対にいいよな」と、学生時代からずっと思っていたんです。
そんな中で、この世にまだスマホも存在していない時代――たしか医学部5年生の時に「オンライン英会話スクール」と出会いました。今では当たり前のサービスですが、当時としてはかなり画期的な印象。名前は伏せますが、今でも運営している老舗企業で、その頃は「ここ一択」と言えるような、オンライン英会話の有名ブランドです。フィリピン人の先生が教えてくれるスタイルで、月額数千円で受け放題のシステムだったかな。
先生に褒められ続け上達したのは・・・
それはもう、最初はテンションがぶち上がりましたね。「ここで英会話の特訓をたくさんやれば、現地の人と話せば、スピーキング力も上がるっしょ!」と思い込んでいましたから。

オンライン英会話。その手軽さから人気を集め、
現在は数十~数百ものサービスがあると言われている。
初回のレッスンでは、パソコンを通して海外の人と会話するという体験そのものだけでワクワクしたし、楽しかったんですよ。でも・・・数か月くらいでふと気づいちゃったんです。「全然、成長してへんやん!!」ってことに。
主な授業内容は、先生がその日に選んだ文章を画面共有し、私がそれを音読する、というものでした。内容もよく分からないまま、知らない単語もテキトーに発音して音読してみる。すると先生が満面の笑みで「グーーーッド!」と言ってくれる――この繰り返しです。(あくまで当時の授業・指導内容です。恐らく現在は大きく変化しているでしょう)
そう、絶対にgoodなのです。最初は「おー!俺、できてるんやなあ!」とうれしく思っていました。しかし、「ここはgoodだけど、あそこは~」といった指導はほぼありません。ひたすら褒めて伸ばす方針だったのでしょうか。そのため、めちゃくちゃ褒められているにもかかわらず、伸びている実感はずっと0でしたね・・・。
たまに「グーーーッド!」以外の反応もあったものの、先生が何を言ってるのかさっぱり聞き取れないから、私も「アーハン」「イェア!」と言いながら、愛想笑いだけがどんどんうまくなっていくのでした。
勉強している“つもり”だっただけという発見
このオンライン英会話の便利な所が、自分の都合に合わせてレッスンを受講できること。いつでも受けられることにあぐらをかき、どんどん受けなくなって半年ほどで終焉を迎える、というわけです。
これも今だから気づけたこと。何がよくて何が悪いかも分からない状態のまま、「話せば伸びるやろ!」という思いだけで飛びついた結果なのです。
そもそも、どんな分野であっても、レッスンとは「ここがあなたの課題だよ」と教えてもらったり、自分で気がついたりするもの。それがない限り、成長のためのスタートすら切れないわけです。そして、レッスン以外の時間にその課題と向き合い、次のレッスンの時に「先生、これでどうでしょうか?」と確認してゴールラインに近づいていけるんですよね。
小学生のときから言われる「予習と復習は大切ですよ」というシンプルな事実。当時はそれすら気づかず、「分からない所が分からない」まま時間だけ費やしていました。ただ褒められて気持ちよくなり、勉強しているつもりになっている状態。そりゃ、何も変わらんわ。
空高く、意識高く飛び続けなくていい
とまあ、こんな感じで学生生活を終えて医師として働き始めるのですが、その後も、華々しい成功体験もなければ、劇的なビフォーアフターもありません。そのあたりについては、今後の連載でお話しできればと思います。
ただ不思議と、止めてもまた繰り返し繰り返し、英語の勉強をしたくなるんですよね。うまくいかなくても、全然できなくても、どこかで「やっぱり英語を話せるようになりたい」と思い続けている自分がいるんでしょう。だからこそ、あれこれといろいろな勉強法に手を出しちゃうわけで・・・。
そんな経験の中で気づいたことや、失敗しながらも得た小粒な工夫、「これはアカンわ!」ってなこともたくさんありまして。そういったTipsみたいなものも、この連載でお伝えしていけたらと思っています。
「低空飛行で飛び続けよう!」―― これは、すぐに勉強を止めたがる自分によく言い聞かせている言葉です。もし共感してくださる方がいたなら、とてもうれしいです。
ということで、次回からもリアルな話を赤裸々にお届けしていきます。
ではまたお会いしましょう!
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