英語ネイティブと会話をするとき、言いたいことがうまく伝わらなかったり聞き返されたりしたことはありませんか?それは英語ネイティブと「頭の中」が違うからかもしれません。スペイン語・英語・日本語トリリンガルの英語コーチ、ビルドソラ レネさんが、その違いを理解すべき理由や効果的な伝え方について解説します。
目次
トリリンガル英語コーチの経験を生かして
皆さん、Nice meeting you! 初めてENGLISH JOURNALで記事を書かせて頂きます、英語大学代表のビルドソラ レネです。現在、英語大学という英語コーチングスクールを運営しながら、Jリーグで同時通訳の仕事をさせてもらっています。
私の母国語はスペイン語なのですが、私が英語と日本語を習得した経験と今まで多くの方の英語指導を行ってきた経験から、皆さんが自然な英語コミュニケーションを取れるようになるためのこつをお伝えしていきたいと思います。
拙い日本語ですが、これからお伝えすることはどれも学校では教わらないこと(できれば学校で教えてほしいこと)なので、是非最後まで読んでみてください!
英語話者の「頭の中」を知ることが大切な理由
まず、なぜ単語や文法だけを勉強しても、英語で自然なコミュニケーションが取れるようにならないのかを解説していきます。
「頭の中」を知らないと、ミスコミュニケーションが生じてしまう
皆さんが次の日本語を英語で表現したいとしましょう。どのように英訳しますか?
「なるべく早く資料を送ってくれる?」
この質問をすると、多くの方は「なるべく早く」をas soon as possible/as fast as you can/right away などと訳して、次の英文が出来上がることが多いです。
- Could you send me the document as soon as possible?
- Could you send me the document right away?
- Could you send me the document as fast as you can?
一見正しく訳されているように見えますが、上のように伝えてしまうと、英語ネイティブは次のように反応してしまいます。
What do you mean?
(どういうこと?)
When exactly does “as soon as possible” mean?
(早急って具体的にいつのこと?)
学校で教わったとおり、正しく英訳しているにも関わらず、ミスコミュニケーションが生じてしまいます。それはなぜでしょうか?
それは英語ネイティブの人は、「なるべく早く」という言葉があなたにとって「どの程度の時間を意味するのか」を知りたいからです。
「そこは察してよ!」と日本人であればツッコミたくなるところですが、このような感覚の違いを学校や多くの英会話スクールでは教えていないので、一生懸命英語を勉強してもなかなかスムーズなコミュニケーションが取れるようになりません。
「頭の中」を知らないと、間違った学習手段を取ってしまう
英語ネイティブに先の英文のように聞き返されてしまうと、多くの方は「自分の発音や自分が知っている語彙量に問題がある」と間違った認識をしてしまい、as soon as possibleの発音を一生懸命に練習してしまったり、as soon as possible以外の言い回しをインプットしようとしたりします。
そしてまた聞き返される羽目になるので、負のスパイラルにハマってしまい、どんどん自信を失っていく・・・。私も同じような経験をたくさんしてきましたが「しなくていい努力で自信をなくしてしまう」のは非常にもったいないです。
こうした「意図しないミスコミュニケーション」と、「しなくてもいい努力で自信を失う」ことを避けるためにも、英語ネイティブの「頭の中」を知ることがとても重要です。
「頭の中」の違いを把握すれば、コミュニケーション力がぐんと上がる!
言葉というのは、その国の文化や歴史、習慣やマナーなどによって形成されています。そして、世界の言葉は物事のどの程度の具体性で伝えるかによって、2つのグループに分けられます。High Context Culture(ハイコンテクスト文化)とLow Context Culture(ローコンテクスト文化)という文化圏です。
ハイコンテクストな文化では、言葉にそこまで頼らず、共通の体験や価値観、つまり「以心伝心」でコミュニケーションを取ることが多く、他者や集団を尊重します。一方、ローコンテクストな文化では「言葉そのもの」に頼って意思疎通が行われることが多く、集団より個の意思を尊重します。
面白いですよね!こうした違いを知れば、日本人の心のまま、日本人のような振る舞い方でコミュニケーションを取ることなく、相手としっかり意思疎通が取れるようになります。簡単にではありますが、日本人の頭の中と英語ネイティブの頭の中には次のような違いがあるので紹介します。
日本人の頭の中(ハイコンテクスト) | 英語ネイティブの頭の中(ローコンテクスト) |
---|---|
聞き手に責任がある | 話し手に責任がある |
物事を曖昧に伝え、意図を解釈してほしい | 物事を具体的に伝えないと、意図が伝わらない |
話をさえぎらないでほしい | 話を途中でさえぎってもいい |
聞いているだけで会話に参加している気持ちになる | 発言しないと会話に参加しているとみなされない |
背景から説明することが多い | 結論から説明することが多い |
日本語では、物事を曖昧に伝え、少ない言葉数で相手に自分の意図をくみ取ってもらいたいという期待があります。つまり、話を理解する責任が「聞き手」にあります。「なるべく早く」と言われると、「相手はどの程度の速さで求めているのか」を、聞き手が解釈して判断しないといけません。
しかし、話し手が期待している「なるべく早く(今している作業を止めて、その場ですぐ)」と、聞き手が解釈した「なるべく早く(自分の作業が終わったらすぐ)」が異なってしまうと・・・「なぜすぐに送らないの?」「なるべく早くって言ったじゃない!」「そこは察してよ!」と相手が発狂してしまいます(笑)。
中学英語を最大限活用することが効果的
では、英語で効果的に伝えるにはどうすればいいのか?次の3つのW(英語の基本的な3つの具体性)を意識しましょう!
Who? 誰の話をしているのか
What?/Which? 何・どのことについて話しているのか
When? いつの話をしているのか
そうすると、次のような表現が出来上がります。
(日本語)なるべく早く資料を送ってくれる?
- Could you send me the document for the next meeting before 12:00 o’clock?
(次の会議の資料を12時までに送ってもらえますか?)- Could you send me the document you are writing now by 8:00 in the morning tomorrow?
(今作っている資料を明日の朝8時までに送ってもらえますか?)- Could you send me the document for project X before you go to lunch?
(プロジェクトXの資料をあなたがお昼に出る前に送っていただけますか?)
元の日本語に注目すると、「誰に」その資料を送ってほしいのか、「どの資料」のことなのか、「いつまでに」送ってほしいのかを伝えておらず、そこは「察する部分」に含まれています。
皆さんもお気付きかと思いますが、これらの表現は全て中学英語だけで構成されています。つまり、相手に最低限のことを伝えるには、難しい英語は一切必要ないということ。そして、中学英語を活用すれば、より丁寧で分かりやすいコミュニケーションが可能であるということです。
また、具体性を意識する習慣を付けると、日本語でのコミュニケーションもより効果的になるので、一石二鳥!
英語大学のインスタグラムでは、こうした文化の違いを考慮しながら、中学英語だけで言いたいことがどのように言えるのかを発信しているので、よかったら覗いてください。
次回は、英語でのコミュニケーションをスムーズでナチュラルにするポイントをお伝えします。お楽しみ!
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