英語ジム らいおんとひよこR代表のJunさんが、英検(実用英語技能検定)1級に18回合格した経験と英検合格コースでの指導経験を基に、英検1級の学習を効率的にコスパよく進めるための、おすすめ参考書を紹介します。
目次
英検1級の試験形式
英検1級は、一次試験と二次試験から成ります。
一次試験の試験時間は、「筆記」が100分、「リスニング」が約35分です。「筆記」には、語彙問題(25問、4肢選択)、長文問題(空所補充6問・内容一致10問、4肢選択)があります。リスニングは、会話文(10問)、説明文など(10問)、アナウンスなど(5問)、インタビュー(2問)で構成され、いずれも4肢選択です。
二次試験は約10分で、面接委員が2人いる個人面接です。選んだトピックについての2分間のスピーチとQ&A(質疑応答)が行われます。
詳細は、公益財団法人 日本英語検定協会 のサイトをご参照ください。
英検1級合格に必要なことと学習法
英検1級に挑戦することを考えている方は、すでに高い英語力をお持ちの方がほとんどだと思います。そんな方々が独学で合格を目指す場合に、効率的かつコスパもよく学習に取り組むには、何をどんな順番で進めればよいのでしょうか。
おすすめ書籍についてはジャンルごとに後述しますが、合格を目指すためにまずやるべきことは過去問を解くことです。過去問1回分を解いてみて、 語彙問題、読解問題、リスニング問題のうちで7割未満の分野 があれば、その分野の強化をしましょう。また、一次試験では英作文がほかの分野に比較しても重要なので、英作文の学習も優先的に進めましょう。
語彙問題
語彙については、最終的には覚えるしかないのですが、可能な限りセンテンスやフレーズで覚えるように頑張ってみてください。語彙問題はコロケーションや用法の知識が必要なものも多く、単語単体の意味を知っているだけでは、正解を選べないときがあります。自動詞なのか他動詞なのか、どんな前置詞とセットで使われるのか、どんな文脈で使われやすいのかを、単語の意味と一緒に覚えるようにしてみてください。正解率がグンと上がりますよ。
読解問題
読解問題では、空所補充でも内容一致でも「精読」が肝心 です。単語や文法構造、前後のつながりなど、正解選択肢に関わらない部分もすべて把握できるように、学習時には1文ずつ丁寧に読んでみてください。例えば、代名詞itがあれば何を指すのか、関係代名詞whichの先行詞はどれか、形容詞や副詞はどこに係っているのか、細かく丁寧に読むことが必要です。これを普段からやっておけば、試験中に「速く」「正しく」読めるようになります。
おろそかにしがちなのが問題文と選択肢 です。本文だけではなく問題文と選択肢も「精読」しておくことをおすすめします。不正解の選択肢を選んでしまう理由として、問題文と選択肢を読み違えているケースも多くみられます。
リスニング問題
リスニング問題については、解答した後に、なぜ間違えたか分析することが重要 です。流れる英文の速度の問題か、アクセント(スピーカーの話し方の癖)の問題か、単語や表現を知らなかったのか、問題文や選択肢を勘違いしてしまったのか。どの部分を聞くことができていれば正解を選べたのか、正解の根拠をきちんと確認しておきましょう。
英作文
英作文については、市販の書籍を参考に、どんなパラグラフ構成で書くのか、どんな構文が使われているかについて勉強しましょう。重要なのは、たとえ 面倒に感じても自分で実際に書いてみること です。英文を書くことより、アイデアを出すことに不安を感じる人は、模範解答をたくさん読んで自分の中で使える論点を蓄積しておきましょう。模範解答の日本語訳を読むのもいいですね。また日本語訳から自分の言葉で英語に書き直してみるのも、よいトレーニングになります。
二次試験
二次試験も英作文とほぼ同様ですが、市販の書籍に載っている模範解答を読んで、 自分の中で使える論点を蓄積し、スピーチ原稿を書いてみるとよい ですね。スピーチの場合は、暗唱をしてストップウォッチで時間を測定し、2分間のスピーチの分量を体感として持っておくことが重要です。150?170ワードくらいでよいのですが、話すスピードは人それぞれなので、時間の計測は毎回やっておきましょう。また、質疑応答セクションの質問に、瞬時にできるように解答するためには、書籍に掲載されている質問にランダムに取り組み、すぐに解答できるかを試してみるのもトレーニングになります。
独学に役立つツール・サービス
基本的には一人でも可能な練習方法についてまとめましたが、オンライン英会話なども、質疑応答セクションで聞かれたことに対して即答する練習には役に立ちます。また、自分で作成した英作文やスピーチの原稿は、 Grammarly という英文添削サイトでチェックをしてみると、文法エラーを発見できるので、活用してみるとよいですよ。
▼英作文と二次試験対策の詳細は、Jun先生の連載「英検1級ライティング&スピーキング対策講座」へ
英検1級 おすすめ過去問集&模試
英検対策を始める前に、 少なくとも過去問をやっておきましょう 。現在の実力を測って、勉強の戦略を練るためです。まだ受験をしたことがない方も含めて、今の英語力で英検1級にどれくらい通用するかを知り、また試験前に大量に過去問を解いておくことで、出題パターンに慣れることもできます。このように、模試と過去問は、英検1級に合格するまでずっと使うものです。
『2021年度版 英検1級 過去6回全問題集』(旺文社)
英検の過去問は、最新の3回分については、日本英語検定協会の公式サイトに公開されていますが、日本語訳や解説が付いていないので、独学だと勉強しづらい部分もあります。そこで毎年旺文社から発売されている 『過去6回全問題集』をおすすめ します。二次試験で出題されたスピーチトピックは各回10個ずつ掲載されているので、過去6回分を合わせると60個のスピーチトピックについて練習できます。
またそのうちのA日程分(半分、つまり各回5つ分)はサンプルスピーチの原稿も載っています。CDは別売りされていますが、 「英語の友」 というアプリを使用するか、または音声データダウンロードで使う分には特に追加の費用はかからないため便利です。
『7日間完成 英検1級 予想問題ドリル(5訂版)』(旺文社)
7日間完成の 内訳 としては、1~4日目で筆記試験とリスニングテスト対策を行い、残りの3日で模試を3回分解くようになっています。過去問ではなく、 過去問分析を基に作成されているオリジナル問題 なので、過去問を何度も解いたことがある方でも、新鮮な気持ちで、より試験本番に近い状態で問題を解くことができます。
CDも付いていますが、「英語の友」というアプリを使って音源を聞くこともできるので便利です。各分野の攻略法も詳述されており、問題を解く際に何を意識すればいいのかに関するヒントが詰まっています。
付録の英作文の用紙は、本番とほぼ同じサイズなのでコピーして 手書きの英作文の練習ができることもメリット です。最近はスマホやパソコンでの入力に慣れている人が多いと思うので、手書きでもきちんと書けるか、一度試験前に試しておくことをおすすめします。
英検1級 おすすめ総合対策本
特に、英検1級に初めて挑戦する人や、試験形式を把握したい人には、総合対策本がおすすめです。どんな問題形式で、どんな内容が出題されるかについて、各分野の攻略法が詳しく説明されています。問題数は多くないですが、 すべての分野を満遍なく一通り体験できる ものになっています。
『DAILY30日間 英検1級集中ゼミ 新試験対応版』(旺文社)
30日間で一次試験の全分野を練習できて、1回分の模試が付いています。この本のいちばんよいところは、1日30分勉強する想定で構成されているので、英検1級が初めての方にも始めやすいところです。 毎日少しずつ進められるので、継続しやすい でしょう。英検1級という一般的にはハードルの高い試験に挑戦するときは、少し長い目で試験対策をすることが必要です。そんなときに、1日30分という挫折しづらい仕組みを提供してくれているイチオシ書籍です。
『完全攻略!英検(R)1級』(アルク)
すべての分野を扱う総合対策本というだけではなく、日々のトレーニング方法も 具体的に 解説されています。例えば、リーディングについてはスラッシュリーディング、リスニングについてはリピーティングなど、本に沿って練習をするだけで、英語力もしっかり上がる 仕組み が提供されています。
またコロケーションで語彙を覚えられる工夫もあり、単なる単語暗記とは違う勉強方法も学べます。二次試験対策についてもページを多めに割いてあるので、初めて挑戦する方でも 安心 して準備が進められます。
英検1級 おすすめ単語・熟語帳
英検1級は、単語の難易度が高過ぎて受験するのを躊躇(ちゅうちょ)する人も多いかと思います。しかし、2016年度から新しい合否判定方法に変わったことで、現在は語彙問題の重要度はそこまで高くなく、必要以上に身構える必要はありません。とはいえ、語彙の知識は読解問題やリスニング、ライティングにも影響するので、 語彙問題で6割程度は正解できるくらいの単語力を付けておく ことをおすすめします。
『でる単語だけ大特訓 英検1級TOP800(省エネ合格)』(オープンゲート)
英検1級の語彙本としては、かなり少なめの800語を収録。最も重要な単語だけを重点的に覚えるための本です。素晴らしいところは、単語の意味のほかに、 コロケーションに注目した用法のフレーズ例が掲載されている ことです。大問1の語彙問題では、コロケーションを見抜くことで正解を選べる問題が数多くあります。この本に 取り組むときは、コロケーションも併せて覚えてみてください。
『究極の英単語 SVL Vol.4 超上級の3000語(究極シリーズ)』(アルク)
英検1級の語彙問題25問のうち、 『英検1級 でる順パス単』 と、『究極の英単語 SVL Vol.4 超上級の3000語』の2冊をやれば、6割がカバーできると言われることもあります。また 「究極の英単語 All-in-One版」 アプリも併せて使えば、隙間時間を単語の勉強に活用することできます。
英検1級 長文読解・リーディングのおすすめ対策本
英検1級の長文読解問題は、内容一致問題と空所補充の2つがあります。空所補充問題は、ストーリーの流れが読み取れないと、不正解を選んでしまいます。空所補充でミスの多い人は、 空所と関係ない部分も含めて、すべて「精読」し丁寧に理解することを 心掛けましょう 。内容一致問題も同じです。本文だけでなく、設問から選択肢まで、すべてを正しく読めていないと、正しい選択肢は選べません。「精読」する際には、構文解析と意味解釈を丁寧にしてみてください。
『英検1級文で覚える単熟語』(旺文社)
英検1級に出題されやすいジャンルの英文に絞って、 リーディングとリスニングの勉強をしながら、単語と熟語も覚えていける、一石三鳥の書籍 です。一つの文書につき音源と日本語訳と単語リストがついているので、「精読」によって文章読解力を高めつつ、「精聴」によってリスニング力を養い、同時に単語も覚えることができるという内容です。また一つ一つの文章が短いので、あまり気負うことなく少しずつ進められることもポイントです。
『英検1級 長文読解問題120』(旺文社)
過去問題が68問、オリジナル問題が52問も収録されており、空所補充問題、内容一致問題それぞれの傾向と特徴、さらに詳しい攻略法まで載っています。解説ではどこを読めば正解できるのかについて詳しく書かれているので、不正解の場合も、どこが読めていないか、どう勘違いしたのかなど、復習がしやすくなっています。また書籍自体はコンパクトなので、持ち運びにも便利です。
英検1級 リスニングのおすすめ対策本
本番のリスニング問題では、Part 1は口語表現が多く、Part 2はアカデミックな話題のパッセージが読み上げられます。Part 3は準備時間も与えられ、冊子に問題文が載っているので、一見難しくなさそうですが、 実際にはかなり正しく聞き取れないと正解を選べない問題が多い です。Part 4は難易度が回によって上下しますが、スピーカーの癖が強かったり、選択肢が長く短時間で正解を選ぶのが難しかったりします。
『英検1級リスニング問題150』(旺文社)
過去問とオリジナル問題を合わせて150問の演習ができるロングセラー対策本です。苦手な分野を集中的に繰り返しやるのに便利な問題集で、私自身も最初の頃はこの本のPart 2ばかりを繰り返しやっていました。模試が2回分付いているので、本番前のリスニング演習にも使えます。
『最短合格!英検1級 リスニング問題 完全制覇』(ジャパンタイムズ)
各分野の攻略法が詳しく載っているので、リスニングが苦手な人はじっくりと読み込んでみてほしい1冊です。リスニング問題で不正解を出してしまう原因はいくつかあるのですが、よくあるお悩み別に対処法が示されているので、苦手分野克服の大きな助けとなります。オリジナル問題で大量に演習できることも魅力です。模試は2回分付いています。
英検1級 英作文のおすすめ対策本
英検1級の英作文問題は、出題されたトピックに対して、自分の意見を述べるという内容です。その際に、指定されたパラグラフ数と“ Introduction, main body, and conclusion”という構成に合わせて、自分の意見を支える理由を3つ挙げる必要があります。
最初のパラグラフでは自分の意見を明示する導入を、2~4パラグラフでは意見を支える3つの理由をそれぞれ書き、最後のパラグラフで結論を書きます。トータルの語数は200?240語です。
出題されるトピックは、 経済、国際、世界平和、アジア諸国と日本、アメリカと日本、移民問題、テロ対策、大量破壊兵器、権利の侵害、死刑の是非、民主主義国家、宇宙開発、環境問題、エネルギー問題、クローン技術、感染症、教育、スポーツ(特にオリンピック) など多岐にわたります。
『英検1級英作文問題』(旺文社)
英検1級の英作文の書き方を初歩から説明してくれているので、受験が初めての方でも安心して使える1冊です。また、 各トピックをYes/ No, Agree/Disagreeの両側からまとめた模範解答が用意されている ため、ジャンルごとに説得力のある文章を勉強できます。収録されているジャンルは10種類。実際に出題されやすいテーマを優先的に学習できます。また、時事知識について学べる別冊が付いているところが、この本の最大の特徴です。別冊は、試験会場にも持っていって、試験が始まる最後の瞬間まで使いたくなるような内容です。
『究極の英語ライティング』(研究社)
英検1級の英作文がある程度書けるようになったら、ぜひ挑戦したい1冊です。私の愛用書でもあります。英検1級に特化した本ではないのですが、どんなふうに書けば洗練された英文になるのか、細かく順を追って説明してくれています。日本人が書きがちな(文法的に合ってはいるが)冗長な文や、ネイティブから見ると不自然な文が、どうやったらかっこいい英文に変わるかについて書かれています。
『ここで差がつく!英文ライティングの技術――英語は「I」ではじめるな』(テイエス企画)
こちらも英検1級に特化した本ではありませんが、英語らしい文章を書くための37のテクニックを、丁寧に一つ一つ練習できる本になっています。そして、学んだテクニックを実際に使って英作文をリライトする章もあります。この1冊で英作文のクオリティーをグンと上げることができます。
英検1級 面接試験のおすすめ対策本
英検1級の二次試験では、 与えられた5つのトピックから1つを選び、1分の準備時間の後、2分のスピーチをします 。その後は質疑応答セクションとなり、選んだトピックに関連する質問(時にはあまり関係のない質問)をされるので、それに回答します。面接官と会話をしながら受ける面接試験です。
特徴としては、スピーチだけではなく質疑応答セクションも得点できないと合格できないので、問われた質問について瞬時に回答できる練習をしておくことが必要です。また与えられる トピックの分野は、政治、経済、国際関係、世界平和、宇宙開発、環境問題など 多岐にわたります。5つの中から選ぶので、得意分野を2、3個くらいは準備しておくと、余裕を持って面接試験に臨むことができます。
『14日でできる! 英検1級 二次試験・面接 完全予想問題』(旺文社)
2021年5月に発売されたばかりの予想問題集です。 付録のDVDでは面接の様子を具体的にイメージできる ので、初めて受験される方にもおすすめです。11のトピックについての模範スピーチが収録されており、質疑応答セクションの予想問題と模範解答も付いています。
『英検1級 面接大特訓』(Jリサーチ出版)
二次試験で出題されやすいトピックについて、 論点やアイデアをブレーンストーミングできるダイヤグラムが付いています 。また、そのまま暗唱してスピーチや質疑応答セクションで使える例文も掲載されています。英語の短文をすらすら言えるように練習しておくと、スピーチや受け答えが安定してきます。
加えて、 スピーチエッセイの添削例や質疑応答の解答例が収録されている ので、どんな工夫をすると高得点になるのかについて学べます。また付録には、切り取って使えるフラッシュカードが付いているので、一人で面接の練習をするときにも便利です。
ここまでお読みいただきありがとうございます。英検1級は非常に高い壁のように思われるかもしれませんが、良質な参考書で効果的な学習を続けていけば、誰でも現実的に狙うことができます。
これから勉強を始めるという人も、英検1級まであと一歩という人も、記事内で紹介した参考書と勉強法を踏まえて、ぜひ挑戦してみてくださいね!
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