リスニングの《常識》を疑え!たった10分で効果を得る【同時通訳者・横山カズ】

同時通訳者の横山カズ先生が、英語スピーキングの大人気講師としても活躍する中で、実際に役に立った「無限のスピーキング力上達法」を教えます。第10回は、たった10分あれば上達が実感できるリスニングの練習方法を紹介します。

皆さん、こんにちは。同時通者の横山カズです。

前回まで は英語スピーキングの瞬発力を得るためのテクニックについてお伝えしてきました。今回は、 これまでの常識を覆す かもしれない 、リスニングの上達法 を紹介します。

日本語を第一言語とする私たちにとって、英語のリスニングは常に攻略しがたい「難」であり続けています。

当たり前のことですが、英語は「聞き取れなければ話せない」ので、まずはリスニング力を鍛えないことには、せっかく音読練習などで鍛えた「 英語の瞬発力 」の出番がありません。

私は今でこそ同時通訳や英語講師の仕事をさせていただいていますが、以前はリスニングに大変苦労をしました。リスニング力を向上させるためにさまざまなアドバイスを聞いたものの、どうしてか、効果を得ることができなかったのです。

今回は、そんな苦労続きの駆け出しだった当時の私に会えるなら「絶対に伝えたい!」と思っているリスニングのトレーニング法を紹介します。

「キーワードを拾え」は正解か?もっと手前でやっておくこと

英語を国内で独学し始めた20代後半のころのつらかった気持ちを、私は今でも忘れられません。当時は今ほど生の英語に触れられる機会は多くなく、英語の音源があれば、それがニュースであれ、インタビューであれ飛びついては何度も何度も何時間も聞き続けました。

しかし、10年近くもこのような努力をしたにも関わらず、悲しくなるほど聞き取れるようにはなりませんでした。時々知っている単語が耳に引っ掛かるくらいのもので、「どのような単語が発信され」「どのような内容が話されているか」を理解できる領域には到底たどり着くことができなかったのです。

当時私が出会ったアドバイスには、次のようなものがありました。

  • 「英語を速読、多読すれば聞き取れる」
  • 「語彙が 少ない から聞き取れないのだよ」
結論を言えば、これらは当時の英語レベルの私には全く役に立たないアドバイスだったのです。私は、 英文をできるだけ読むようにしていたし、語彙を増やす努力もしました。しかし、それ以前の「根本」が欠落していた のです。

その「根本」とは、「機能語が聞き取れていない」ということです。機能語とは、代名詞や前置詞、接続詞、助動詞などのことで、レベルとしては、中学1年で習うような、短いつづりの簡単な語です。実はこれらの単語はいくつかくっ付いた状態(コンビネーション)で、非常に弱く、短く発音されるため、聞き取るのが難しい語でもあります。

しかし、この機能語が聞き取れなければ、いくら難しい「キーワード」の方がわかったとしても、それがどういう役割で使われているのかという、「英文の骨格(構造)」をとらえることができません。それでは、結局、内容は 把握 できないのです。

言い換えれば、「スペリングの長い難しい単語」は知っていればその単語単体では聞き取れるし、意味も分かります。ただ、それだけでは文全体の意味はわからないのです。

私が通訳や英語プレゼンの担当をしている医師の方々も「専門領域のディスカッションよりも、学会の後のフリートークのほうがむしろ大変」と口をそろえて言いますが、これはその典型例だと言えます。日常会話のようなどんな話題が出てくるかわからない場こそ、しっかりと文構造を 把握 して発言全体の意味を理解することが大切だからです。

さて、ではその「機能語の聞き取り」の力を付けるには、どうしたらよいのでしょうか。

10分あれば効果が得られる!発音のパターン先回り練習法!

先ほども説明した通り、機能語はとても短い単語で、しかもほかの単語とくっ付いて発音されやすいため、ちゃんと聞き取るのが難しいのです。

しかし、実はその音のくっ付き方にもパターンがあります。その発音のパターンを知っていれば、聞き取りは驚くほど伸びます。それらを「先回り」して練習しておきましょう!自分で発音できる音は、必ず聞き取ることができます。発音のパターンは限られているので、10分間集中して口で覚えてしまいましょう。

つづりごとに発音のパターンを覚えよう

表の左は機能語と呼ばれる短い綴りの単語、右は読み方です。太字の箇所は強く発音しましょう。

「~t」⇒「~ッ」
wha t ワッ
tha t ダッ
i t エッ
difficult ディ フィカォッ
to do i t ドゥ エッ
just need to doジャs・ニー・タドゥー
※just need to do の読み方に含まれる「ジャs」の「s」は、「ス=(su)」の発音から「u」を引いて「s」と発音しましょう。また、difficultは機能語ではありませんが、単語の最後のt の音が「~ッ」と脱落する代表的な単語です。
「~d」⇒「~ッ」
andエン
and Iエナイ
hardハーッ
hard to do ハー ッ・タドゥー
※読み方に「~ッ」と表記していない単語は、「~ッ」の発音は声に出さない音です。また、hard は機能語ではありませんが、単語の最後のt の音が「~ッ」と脱落する代表的な単語です。
「at」⇒「アッ」
at アッ
at theアダ
at that time ッ・ターイm
※特に「~ッ」と表記していない単語は、「~ッ」の発音は声に出さない音です。 at that time の読み方に含まれる「ターイm」の「m」は、「ム=(mu)」の発音から「u」を引いて「m」と発音しましょう。
for 」⇒「ファ」">「 for 」⇒「ファ」
for meファ ミィ
for youファ ユゥ
for himファ ヘm
for thatファ ダッ
for him の読み方に含まれる「ファ m」の「m」は、「ム=(mu)」の発音から「u」を引いて「m」と発音しましょう。
to 」⇒「タ」">「 to 」⇒「タ」
to meミィ
to you ユゥ
to him
to her ーッ
to do itドゥ エッ
to him の読み方に含まれる「タ m」の「m」は、「ム=(mu)」の発音から「u」を引いて「m」と発音しましょう。
with 」⇒「ウィッ」 ">「 with 」⇒「ウィッ」 
with meウィッ ミィ
with youウィッ ユゥ
with him ウィ ディm
with her ウィ ダー
to be with a ウィダ
with him の読み方に含まれる「 ウィ ディm」の「m」は、「ム=(mu)」の発音から「u」を引いて「m」と発音しましょう。
「about」⇒「バウッ」
talk about   ター クバウッ
talk about it  ター クバウリッ
think abou t θィ ンクバウッ
think about it  θィ ンクバウリッ
※think about の読み方に含まれる「 θィ ンクバウッ」の「θ」と、think about it の読み方に含まれる「 θィ ンクバウリッ」の「θ」は無声音の方のth音を表します。

英文の中で応用しよう

発音の仕方のパターンが分かれば、単語だけではなく英文中でも、応用できるようになります。次の英文は、日常会話の一例です。さまざまな場面に当てはまるように作成しましたので、自分に起こり得る場面を想像しながら音読してみましょう。発音の仕方に迷ったら下のヒントの表をみて確認し、スラスラ言えるようになったことを実感してください!

I though (t) i(t) was har(d) to do a(t) tha(t) time, bu(t) I don'(t) think it's difficul(t) anymore. I jus(t) nee(d) to do i(t) to be with a person like him.

当時それをやるのは難しいと思ったものですが、もう大変だとは思いません。 彼のような人と一緒にいるためにはやるしかないのですから。

I though (t)θ アーッ
i(t) wasエッワz
har(d) to do ハー ッタドゥー
a(t) tha(t) timeダッ ターイm
jus(t)ジャs
nee(d) to do i(t)ニータ ドゥ エッ
to be with a ウィダ
今回の練習法で音の数自体が減っていることを実感すると、例えば音読する英文が「100メートル走」のように思っていたものが、実は「70メートル走」位に短くなっていることがわかります。読むときも力まずに楽に読めると思います。

また、英語を聞いたときに「この人は音の省略が多い( 少ない )なぁ」と気付くことができるはずです。それは、リスニングの力は知識レベルではありませんが、音レベルで大幅に向上している証です!

英語の発音は追求すればキリがないとも言えますがリスニング力向上の「実際に役立った、最優先すべきで、手っ取り早い」練習としてまずはこちらをやることを強くおすすめします。

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