TOEICスコアアップ200点請負人の Jay(ジェイ)こと早川幸治さんが、TOEICのスコアをどうしても上げたいあなたに贈る連載。第2回は、勉強してもスコアが上がらない、という多くの方の悩みを解決します。
勉強してもスコアが上がらない原因は?
前回は、「勉強したのにスコアが下がった」という場合の原因と対策についてお話ししました。
今回のターゲットは、次のような悩みを抱えている方です。
すでに800点を超えていて、TOEIC対策もしているのになかなかスコアが上がらない・・・」
「Part 3(会話問題)やPart 4(説明文問題)で設問の先読みはできたのに、なぜか正解を選べない」
「Part 7(読解問題)で答えを見つけるのに時間がかかりすぎてしまう」
こういう悩みを持つ方はたくさんいらっしゃいます。
「TOEIC対策」が足かせになっている
ところで、Part 2(応答問題)はどのように解いていますか?
「冒頭を聞き逃さないようにする」でしょうか?
はい、正しいです。
When か Where か Who かがわかれば解ける問題は多いですし、そもそも疑問詞を聞き逃したら解くことができません。
これは合計スコア400点を目指すときに即効性のある解き方です。
確かに、意味が分からなくても、ポイントだけ理解できれば解ける問題もあります。でも、800点以上を目指しているのに400点を目指すときと同じ戦略でいいのでしょうか?
もしかしたら、その解き方がネックとなり、問題を解くことに意識が行き過ぎて、「冒頭は聞けたけど、意味までは取れていない」という状況になっているかもしれません。
実際にPart 2には、ポイントだけで解ける問題もありますが、意味を理解しないと解けないものも多く登場しますし、意味を理解しただけでなく、コミュニケーションが成り立つかどうか、という視点で聞かないと正解を選べないものも登場します。
このように、高得点者は気づかないうちに「TOEIC対策」が足かせとなって、スコアアップを妨げることが多々あります。
ほかにも、TOEIC対策が足かせになっている例は次のようなものです。
- Part 3、4 は設問を先読みして答えを待ち伏せしているが、ストーリーは理解していない。
- Part 5(短文穴埋め問題)やPart 6(長文穴埋め問題)は空欄の前後だけを見て解こうとしている。
- Part 7は設問の答え探しに終始している。
いかがでしょうか。思い当たるものがあれば、あなたのスコアアップを阻止しているのは、英語力不足ではなく、「TOEIC対策」自体かもしれません。
いずれも「意味を取らずに正解を得る」というテクニックに頼ってきた受験者は、この落とし穴にはまります。これは「意味を取れないから取らない」のではなく、「意味を取れるのに取らない」という中~上級者ほど、「TOEIC対策」が足かせになっているのです。
テスト対策は自転車の「補助輪」と同じ
対策はあくまで自転車の「補助輪」です。補助輪なしで、二輪でも十分乗れるバランス感覚があるのに、まだ 補助輪に頼っていて、実力が出せていない状態 かもしれません。
Part 3、4であれば、先読みをした内容に気を取られて、会話やトークの内容が頭に入らずに聞き逃してしまっている状況です。
Part 7であれば答えと関係ないところを読み飛ばそうとしすぎて、結局答えと関係のあるところも読めていないという状況です。
Part 5も意味を取らずに解くことでミスが増えますし、Part 6は基本的には文書を全て読まないと正解できないにもかかわらず、時間を短縮するために意味を取らずに解こうとすることで、逆に解答に時間がかかってしまいます。
まさに、「策士策に溺れる」です。
あえて挑戦!「対策外し」
最近のTOEIC L&Rテストは、「ストーリーの理解」が重視されている問題が多く、答えをピンポイントで見つける問題が少なくなっています。そのため、ストーリーの理解度がそのまま正解数に比例します。
「もしかしたら上のような状況かもしれない」という方は、一度練習で「対策外し」をしてみることをオススメします。「対策外し」とは、問題を解くためのテクニックを一度封印することです。
Part 3、4では、あえて設問の先読みをせずに会話やトークを聞いて、その後で3問に答えてみるという方法です。当然ですが、不正解の選択肢に並ぶものは会話やトークには登場していません。そのため、内容をしっかり理解できていれば、設問を先に読まなくても全て正解できるのです。
設問の先読みをしないことで、会話やトークの内容に集中することができますし、何が問われるかわからないため、自然と最初から最後までストーリーを理解する聞き方になります。
Part 7では、「設問を見てから、答えを探す解き方」ではなく、普通に最初から本文を読んでから、設問に取り組み、必要なところだけ本文と照らし合わせながら解答する形です。
どんな内容が問われるかわからずに読むため、文書の冒頭から話の概要や目的をつかみ、その後の話の展開を理解しながら読むという流れが自然とできるようになります。
つまり、「普通に聞いて/読んで、普通に解く」というアプローチです。
Part 3、4は先読みなしで取り組んでみても、意外と解けることに気づきます。また、Part 7はストーリーに沿って読むことで、What is indicated about ~?(~について何が示されていますか)や What is suggested about ~?(~について何がわかりますか)など、文書の広い範囲を参照しないと問題が解きやすくなることを発見するでしょう。
ちなみに、ダブルパッセージやトリプルパッセージ(※)は、複数の文書の関連を読み取ることが求められるため、設問を読んでから答え探しをするよりも、普通に全部読んでから設問を確認して、本文の該当箇所を改めてチェックするという「普通の読み方」こそが、最強のアプローチとなります。
※ Part 7の長文読解問題の最後に出される、2つないし3つの関連する文書を読んで解く問題のこと。
テスト直前に「対策戻し」
ここまで「対策外し」の話をしてきましたが、テスト本番では、聞き逃しや時間の節約のために設問の先読みをすることをお勧めしています。
ただ、そうするとリスニングセクションではストーリーが頭に入ってこなくなるという方は、次の会話やトークに関する3つの設問を先読みしたら、顔を上げたままストーリーを聞きましょう。そうすると、読みに引っ張られず、ほどよく内容も理解できて正解に直結します。
まずは「対策外し」で、ストーリーを理解することを優先してください。
そして、「聞けばわかる/読めばわかる」ということを確立したうえで、改めて「対策戻し」で解く練習をしていくことで、今持つ力を確実にテストで発揮することができるようになります。
本来のジャンプ力を取り戻そう
最後に、「ノミのジャンプ」の話はご存じでしょうか。
ノミは、なんと自分の身長の150倍もジャンプできます。私の身長は170センチですから、255メートルジャンプできることになります。東京都庁が243メートルですから、地上からジャンプして屋上に到達できる感じですね(笑)。
そのノミを逆さにしたコップに閉じ込めておくとどうなるでしょうか。
最初は頑張ってジャンプしますが、徐々にコップの底(逆さに置いているので天井ですね)にぶつかって、それ以上飛べないことに気づきます。
ノミはそこが自分のジャンプの限界だと理解します。そうすると、コップから出しても、それ以上ジャンプしなくなるといいます。
もしかしたら、必死に進めてきた「TOEIC対策」が、逆さにしたコップになってしまっているかもしれません。
そこで、対策を外した状態で練習をしてスキルを使って解答するようにし、その後で改めて対策を戻すことで、本来のジャンプ力を取り戻し、スコアもジャンプさせることができるようになるはずです。
最後に、今回の格言です。
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。
野村克也
早川幸治さんの本
写真(1枚目とプロフィール写真):山本高裕(アルク GOTCHA! 編集部)
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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