TOEIC指導の専門家・ヒロ前田さんが、学習者の悩みに答える連載「TOEIC学習お悩み相談室」。今回は、「TOEICを何回受けても、オーストラリア発音が苦手」という相談を取り上げます。4カ国の英語発音に対応するには、どのような学習が必要なのでしょうか。
目次
今回の相談
TOEICを何回受けても、オーストラリア発音が苦手です。どんな対策がありますか。
――会社員(TOEICスコア760点、20代・男性)
まず確認したいこと
受験を繰り返すだけでは苦手は解消しません
TOEICを何回も受けているのに、オーストラリア発音が苦手なまま。そう感じているなら、まず確認したいことがあります。
それは、受験するだけでは、苦手な発音に自然と強くなるわけではないということです。
TOEICを受けることで、「自分はオーストラリア発音が苦手だ」と気付くことはできます。しかし、気付いただけでは、聞き取れるようにはなりません。
試験は、体力測定に似ています。腕立て伏せを10回しかできない人が、体力測定を何度受けても、それだけで20回できるようになるわけではありません。結果を変えたいなら、測定と測定の間に何らかのトレーニングが必要です。
TOEICも同じです。
苦手な発音があると分かったなら、その発音に慣れるための練習をする必要があります。受験を繰り返すことは、現状を知る手段にはなりますが、それだけで弱点が消えるわけではありません。
何に慣れるべきかを明確にする
オーストラリア発音が苦手だと感じると、「オーストラリア英語全般に慣れなければ」と考えたくなるかもしれません。
ただし、TOEICのスコアアップを目的にするなら、少し見方を変えた方がよいでしょう。
あなたがまず慣れるべきなのは、オーストラリア英語全体というより、TOEICに登場するナレーターの発音です。
TOEICでは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアの発音が登場します。ただ、それぞれの国の発音を完全に代表しているわけではありません。あくまで、テストに登場するナレーターの音声です。
ですから、「オーストラリア発音が苦手」と大きく捉える前に、まずはTOEIC教材に出てくる音声の中で、どのナレーター、どの問題、どの単語や表現が聞き取りにくいのかを確認するとよいでしょう。
苦手を大きく捉えすぎると、何から始めればよいか分からなくなります。苦手な音声を具体的に切り出せば、対策もしやすくなります。
TOEIC受験対策としてできること
公式教材でナレーターの発音に慣れる
まず、目的を明確にしましょう。
あなたがTOEICの特定スコアを目指している、またはTOEIC受験そのものを重視しているのであれば、解決策は比較的シンプルです。
TOEICの公式教材を使ってください。
公式教材に登場するナレーターと、試験本番に登場するナレーターは重複することがあります。つまり、公式教材を使えば、本番に近い音声に触れられる可能性が高いのです。
もちろん、教材に登場しないナレーターが本番に登場することもあります。そのため、すべてを完全に予測することはできません。
それでも、公式教材を使ってTOEICらしい音声に慣れておくことは、受験対策として有効です。
ここで大切なのは、ただ何となく聞くのではなく、特定の発音に意識を向けて聞くことです。
苦手な発音だけを取り出して聞く
アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアの4カ国の発音があるうち、オーストラリア人ナレーターによる発話だけをすぐ聞けるようにしておくと、練習しやすくなります。
例えば、Part 1やPart 4では、1問につき1人のナレーターだけが登場することがあります。その場合、「Part 1の問題2と問題5」「Part 4の広告と留守番電話メッセージ」のように、特定の音声を取り出して再生できるようにしておきます。
スマートフォンや音声アプリを使えば、苦手な音声だけを繰り返し聞くこともできるでしょう。
苦手な音声を何度も聞くときは、ただ流すだけではなく、次のような練習を組み合わせると効果的です。
- 書き起こす
- 脳内ディクテーションをする
- モノマネ音読をする
書き起こす
まずは、音声を聞いて紙やメモアプリに書き起こします。
書き起こしをすると、聞き流していたときには気付かなかった細かい音に意識が向きます。どの単語が聞き取れていないのか、どの音が別の音に聞こえているのかも見えやすくなります。
オーストラリア発音とほかの発音との違いを認識するうえでも、書き起こしは役立ちます。
脳内ディクテーションをする
書き起こしは効果的ですが、いつでもどこでもできるわけではありません。
そこで、紙に書く代わりに、頭の中で文字化する練習もできます。歩きながら音声を聞き、聞こえた英語を頭の中で正確に思い浮かべるのです。
あいまいな部分があったら、そのままにせず、後でスクリプトを確認します。
聞き取れなかった部分を確認して初めて、次に聞き取るための準備ができます。
モノマネ音読をする
聞いた音をそっくりまねする練習も有効です。
ナレーターの発音、リズム、間の取り方をできるだけまねして声に出します。自分で出せる音が増えると、その音を聞いたときにも認識しやすくなることがあります。
特に、オーストラリア発音が苦手だと感じるなら、「聞く」だけでなく「まねして言う」練習を入れるとよいでしょう。
これら3つの練習に共通するのは、意識を音に集中させることです。
ぼんやり聞くだけではなく、しっかり聴く。そうすることで、リスニング練習がスコアアップに効きやすくなります。
コミュニケーション力を高めるためにできること
目的によって学習の方向は変わります
もし、TOEICスコアだけでなく、コミュニケーションの手段として英語を学んでいるのであれば、もう少し視野を広げる必要があります。
TOEICに登場するオーストラリア人ナレーターの発音だけに慣れるのではなく、さまざまな発音に触れることを考えたいところです。
なぜなら、TOEICに登場するナレーターは、それぞれの国の発音の代表ではないからです。
オーストラリアであれ、アメリカであれ、イギリスであれ、カナダであれ、地域や話者によって発音には大きな幅があります。
現実のコミュニケーションを想定するなら、1つのテストに登場するナレーターの発音だけではなく、実際にさまざまな人が話す英語に慣れていくことも大切です。
さまざまな英語に触れる
英語を使う人は、ネイティブスピーカーだけではありません。
むしろ現実には、英語を第二言語・外国語として使う人も非常に多くいます。当然、発音にも大きなバリエーションがあります。
TOEICのためだけなら、公式教材を中心に本番に近い音声に慣れることが効率的です。
一方で、英語を使って仕事をしたい、海外の人と話したい、会議ややりとりに対応したいと考えているなら、より幅広い英語に触れていく必要があります。
インターネットを使えば、世界中の英語を簡単に聞くことができます。ニュース、インタビュー、動画、ポッドキャストなど、素材は豊富です。
最初からすべてを聞き取る必要はありません。大切なのは、聞き慣れた発音だけを選ぶのではなく、少しずつさまざまな話し方に接していくことです。
TOEIC対策と実用英語を分けて考える
TOEICのリスニング対策としては、公式教材を使ってナレーターの発音に慣れる。コミュニケーション力を高めるためには、さまざまな英語に触れる。
このように、目的によって学習素材を分けて考えるとよいでしょう。
どちらか一方だけを選ぶ必要はありません。
TOEICの試験が近い時期は、公式教材の音声を重点的に聞く。試験が少し先なら、ポッドキャストや動画などで幅広い英語に触れる。こうしたバランスを取れば、スコア対策と実用的なリスニング力の両方につなげやすくなります。
「TOEICの発音に慣れること」と「世界の英語に慣れること」は、似ているようで目的が少し違います。
自分が今、何のためにリスニング力を伸ばしたいのかを確認しながら、学習素材を選ぶことが大切です。
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