TOEIC受験力アップトレーナーのヒロ前田さんの連載「TOEICお悩み相談室」。今回は、英会話を上達させたいからTOEICで950点を取る!という方の相談をバッサリ切り刻みます。
今回のご相談
英会話が上手になりたいです。そのために、半年以内にTOEICで950点を取ってから、スピーキングテストを受ける予定です。アドバイスをください。
――会社員(TOEICスコア845点、30代・女性)
ヒロ前田の回答:
そんな変なことをよく平気で言えますね。
バッサリ辛口の解決策
間違いだらけの考えで行動してはいけない
そんな変なことを、よく平気で言えますね。論理の「ろ」の字もありません。自分では気付かないでしょうから、簡単に説明してあげます。
あなたは英会話が上手になりたい。そのために「半年以内にTOEICで950点を取る」と言っています。ということは、次の論理がベースになっています。
大 前提 英会話が上手になるには、950点が必要だ
小 前提 私は英会話が上手になりたい
結論 よって、私は950点を取る
自覚はないでしょうが、あなたはこの考えに基づいて行動しようとしています。ですが、何かが間違っていることに気付きますか。
英会話が上手になるためにテストは必要ない
では、あなたの場合を見てみましょう。あなたは小 前提 で「英会話が上手になりたい」と言っています。これが正しいとすると、大 前提 が間違っていることになります。
英会話の力を高めるのに必要なのは、英語を話す練習です。TOEICで950点を取る必要はありませんし、その後でスピーキングテストを受ける必要もありません。
繰り返します。
英会話の力を高めたければ、英語を話す練習をするべき です。
それなのに、あなたは半年以内に950点を取ると言っている。自分が何を望んでいるのか 把握 できていないようですね。
高得点を求める気持ちに問題はない。でも…
実は、もう1つの 可能性 があります。それは、大 前提 だけでなく小 前提 も間違っている 可能性 です。つまり、 あなたは「英会話が上手になりたい」と思っておらず、そう言っているだけ の 可能性がある ということです。
「半年以内にTOEICで950点を取る」と言っている時点で、あなたは「950点を取りたい人」なのではないですか。理由が何であれ、「とにかく950点を取りたい」のではないですか。
もちろん、それはそれで問題ありません。
問題なのは「スコアだけ追求する人だと思われたくない」とか「英語力を高めて何をしたいか考えているという印象を残したい」といった、つまらない思いを持っていることです。
だから、「英会話が上手になりたい」などと、必要がないウソをついた。
違いますか。もし、違うなら、最初に説明したように、あなたは自分が何を望んでいるか 把握 できていない人です。
いずれにしろ、あなたに必要なのは反省です。気持ちを入れ替えてから出直してください。
以上です。
スッキリ優しい解決策
とても積極的ですね
最初に、1つ質問があります。
半年以内にTOEICで950点を取りたいようですが、その「半年」という期限にどんな意味があるのでしょうか。もし大きな意味がないのであれば、今 すぐに 英会話の練習を始めることをお勧めします。
あなたは、もしかすると950点を取るための勉強と英会話のための勉強は異なるから、まずは会話のことを忘れてTOEICの学習に集中したいのかもしれません。ですが、必ずしもそれは正しいとは言えません。なぜなら、 TOEICのスコアを上げる勉強と英会話の練習には、共通点が多い からです。
次のように考えてみてください。
税理士になるための勉強と、イタリア語の勉強を 同時に 進めるのは、何かと困難を伴うかもしれません。人によってはそのような勉強も難なくできるでしょうが、2つの完全に異なる種類の勉強をすることによる「相乗効果」はあまり期待できません。
一方、TOEICと英会話には共通点があります。950点を取るためには、当然、大量の「英語」に接する必要があります。しかも、TOEICにはPart 2やPart 3のような「会話」がたくさん詰まっています。ですから、TOEICの教材を使いながら、会話の練習をすることは難しくありません。
Part 2、3の問題を使った会話練習の方法
例えば、Part 2の応答問題を使えば、以下のような練習が可能です。
- 質問と応答を聞き、直後のポーズを利用して口頭で再現する
- 質問を聞き、音声より 先に 自分で応答する
- 質問と応答を聞き、「会話の続き」を自分で考えて話す
- カラオケのように、音声をそっくりまねする練習をする
- 会話をまるまる覚えて口頭で再現する
- 会話に登場する人物の1人になりきってロールプレイをする
そして、もしテストを受けたいのであれば、 スピーキングテストをたまに受けて成果を確認することは良いこと だと思います。
目的に合わせて学習内容を考える
どのような力を手に入れたいかによって、どんな学習をするかを考えてください。
英会話の力を高めたいと願っているならば、「これはTOEIC対策、こっちは英会話練習」と分けて考える必要は全くありません。 大切なのは「英語」を学ぶことであり、話す練習をすること です。結果としてスコアも上昇します。
もし、半年以内に950点を取ることだけに集中すると決めたら、それはそれで悪くありません。 ただし 、1つ注意が必要です。それは、実際に950点や960点を 取得 できたときに、もっと高いスコアを取りたくなる かもしれない ということです。
半年後のあなたは、あたかも当然のことのように「1年以内に990点を取る」と言っているかもしれません。そして会話の練習を全然始めないかもしれません。英会話力を高めたいという今の思いが本物であれば、 それに向かってスタートを切るべきなのは、今 ではないでしょうか。
何を実現したいのかを決めるのはあなたです。ご自身で考えて、ご自身で決めてください。
「【リモート受講】TOEIC対策 納得の英文法」開催(T’z英語ラウンジより)
大人のための勉強スペース「T’z英語ラウンジ」では、ロス・タロックさんと私、ヒロ前田による、英文法を学ぶセミナーを開催します。しっかり考えながら解答せざるを得ないユニークな出題形式を用いて、40問を超える練習問題に 取り組む ことで、「納得」しながら英文法を学べます。12月15日のセミナーだけでなく、遠隔受講したい方を全国から募集しています。詳細は、T’z英語ラウンジ公式ウェブサイトをご覧ください。
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ヒロ前田(ひろ まえだ)
TOEIC受験力UPトレーナー。神戸大学経営学部卒。大人のための勉強スペース「T’z英語ラウンジ」経営。2003年5月に講師として全国の企業・大学で指導を開始。2005年にはTOEICを教える指導者を養成する講座をスタートし、トレーナーを務めている。2008年グランドストリーム株式会社を設立。TOEICの受験回数は100回を超え、47都道府県で公開テストを受験する「全国制覇」を2017年5月に達成。 取得 スコアは15点から990点まで幅広い。著書に『TOEICRテスト 究極の模試600問』(アルク)、『TOEICRテスト900点。それでも英語が話せない人、話せる人』(KADOKAWA)、共著に『TOEICRテスト 新形式問題やり込みドリル』(アルク)等がある。
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