TOEICスコアアップ200点請負人の Jay(ジェイ)こと早川幸治さんが、TOEICのスコアをどうしても上げたいあなたに贈る連載。第4回は、英文が速く読めるようになる秘策を伝授していただきます。
連載1回目から3回目までのことができるようになったあと、最後の課題として残っているのが、おそらくほぼ全員に共通している「アレ」ではないでしょうか。
「やっぱり最後まで終わらないんです・・・」
そうはいっても、ただ本番で目を速く動かすだけだと、理解度が下がりミスが増えるだけかもしれません。
また、今の時点で、「わからない単語が多い」とか「英語の語順(文法)がわからない」という場合は、速く読むための素地が不足しているため、ビジネス系の語彙やフレーズ、基礎文法力を身につける必要があります。
英文が速く読めない理由とは?
単語も文法もだいたいわかっているのに速く読めない場合は、どんな原因があるのでしょうか。もしかしたら、次のような状態が読むスピードを遅くしているのかもしれません。
きれいな日本語に訳して読んでいる
きれいな日本語に訳そうとすると、英語を読んだあとで「翻訳作業」が始まるため、「読む」よりも「訳す」に時間がかかり、結果としてスピードが遅くなります。
理想は日本語に訳さずに英語のまま読んでいくことではありますが、訳しながら読みたい場合は英語の語順で訳すことをお勧めします。しかし、本番に意識しても変わるものではありませんので、普段から読むスピードを上げておく必要があります。
次の英文を読んでください。
I am writing in response to your inquiry dated September 2 regarding our latest microwave oven.
日本語に翻訳すると、
「最新の電子レンジに関する9月2日付の問い合わせのお返事です」となり、our latest microwave oven / regarding / dated September 2 / your inquiry / I am writing in response toと戻っていくために時間がかかります。
これを、「書いてる/返事→問い合わせ/9月2日/最新の電子レンジについて」という英語の語順のまま訳すことで、戻らずに理解することができるようになります。
さらに速く読むには、訳しながら読むことを卒業する必要があります。
知らない単語や意味が取れない箇所があると止まってしまう
知らない単語や表現に出合ったときに読むスピードが落ちることは、全く問題ありません。ただ、止まってしまうことでそこまでの話の流れが途切れてしまい、それが原因でそこまでのストーリーを忘れてしまう可能性があります。これを防ぐには、文書の構造を意識しながら読むことが大切です。
なお文書の基本構造は以下のようになっています。
次の英文を読んでください。文書の概要として、先ほどの「電子レンジに関する問い合わせ」を頭に置いておくと読みやすくなります。
Please note that the latest model is expected to sell quickly due to recent coverage in various media such as newspapers and magazines.
例えば coverageという語がわからない場合はここで減速してしまいます。しかし、英語は細かい情報が後ろに続く言語ですから、そのあとを読んで意味が理解できれば、知らない単語を推測できる場合も多くあります。
冒頭から確認すると、「知ってください/最新モデル・すぐ売れる/理由はrecent coverage」。そのあとを読むと、「さまざまなメディア・新聞や雑誌」とあります。この内容から、「すぐ売れるのは新聞や雑誌で紹介されるから」だと推測できます。
100パーセントの理解を求めるのではなく、わからない単語があっても前後の展開から推測したり、場合によっては無視したりする読み方を活用することをお勧めします。
フレーズや構文レベルではなく、単語レベルで読んでいる
単語レベルで1語1語読んでいては、速く読むことができません。
足を引っ張られている状態を日本語で実際に体験していただきます。1語1語読むというのは次のような感じです。
たんごれべるでよむというのは、このようにひらがなをよんでいるじょうたいににています。すべてひらがなのぶんをよもうとすると、あたまのなかでおんせいかしないといけないため、よんだしゅんかんからいみにてんかんされるまでにじかんがかかります。
いかがでしょうか。このように、単語レベルで英文を読んでいくことは、全てひらがなの文を読むのと似ています。意味を理解するまでに時間がかかったと思います。
ちなみに、今読んだものを漢字やカタカナを混ぜたものにすると以下のようになります。
単語レベルで読むというのは、このようにひらがなを読んでいる状態に似ています。全てひらがなの文を読もうとすると、頭の中で音声化しないといけないため、読んだ瞬間から意味に転換されるまでに時間がかかります。
読みやすいですし、漢字が読むスピードを速くするのに役立っていることがわかりますね。
なお、Part 6(長文穴埋め問題)やPart 7(読解問題)でこの状態を作るには、慣用表現に大量に触れることが大切です。次の文を読んでください。
Thank you very much for coming to the job interview last week.
おそらく翻訳しなくても素早く読めたと思いますし、人事部から面接を受けた応募者へのメールだという状況まで理解できたのではないでしょうか。
これはThank you very muchという慣用表現やjob interviewというフレーズを知っていることで一瞬で頭に入る状態となっていること、さらに何度も読んだことがある場面であることから自動的に状況を思い浮かべることができたのです。
この「自動化」こそ、素早く読むために必要なスキルです。
英語速読環境の作り方
次の英文は、Part 7によく出てくる慣用表現を含んでいます。英語の語順のまま素早く読めるかどうかで、慣用表現に慣れているかどうかがわかります。
- Thank you very much for your inquiry our service.
- I am writing to inform you of the upcoming event.
- If you have any questions, please do not hesitate to contact me by e-mail.
- Please submit your resume and a reference list no later than December 10.
- I am looking forward to serving you again.
- We apologize for any inconvenience this may cause you.
もちろん、この「一瞬で理解する状態」は一朝一夕では作れません。大量に英文を読んでいるはずなのに、なぜか速く読めないという方の原因は次のものです。
速く読む環境に身を置いていない
大切なのは速く読む環境を作ることです。
この早く読むトレーニングには、すでに解答したことがあり、答えを覚えてしまった教材、つまり「解く練習ができなくなってしまった教材」こそ適しています。
解く練習はできなくなっても、読む練習はいくらでもできます。うっすら内容を覚えていても構いません。おそらく、英文を速く読めないという方は、ストーリーを完璧に知っている話、たとえば桃太郎を英文で読んでも速く読めません。
そこで、Part 7の知っている話を使って速く読む練習をすることで、素早く読むことはどういうことか、英語のまま理解するのはどういうことか、ということを脳に覚えさせる必要があります。
同じ文書を3回繰り返して読んでみてください。当然、徐々に速くなりますし、フレーズのまま頭に入る感覚がつかめてきます。毎回時間を測って、上達を「見える化」すると達成感につながります。
さらにお勧めなのが、時間制限がある中で読む練習をすることです。
たとえば、駅のホームに着いたら、「電車が来るまでの5分間でできるだけ多く読む」とか、「電車に乗っている12分間でできるだけ多く読む」とか、「昼休みの最後の5分でできるだけ多く読む」と、終わりがある状態で意識的に速く読むことで、ハイペースで読むことに慣れてきます。こうして、「ハイペース」を「マイペース」にすることができます。
環境が人を作るように、制限された環境は読むスピードを速めます。
最後に、今回の格言です。
平穏無事な環境が続けば、いつしかそれに馴れてしまい、自分の実力も向上しない
松下幸之助
早川幸治さんの本
写真(1枚目とプロフィール写真):山本高裕(アルク GOTCHA! 編集部)
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