英語を話しているとき、ネイティブ・スピーカーや同時通訳者の頭の中はどうなっているのでしょう?また、その状態に近づく方法はあるのでしょうか?同時通訳者で、英語指導の経験も豊富な横山カズさんに聞きました。
同時通訳者が英語を話すとき、脳の中はどうなっている?
洋画や英語ニュースなど、ネイティブ・スピーカーがすごいスピードで英語を話すの見ると圧倒されますね。長い英文を、どうしてあんなに早く話せるのでしょうか。それにはわけがあります。
前回 もお話ししましたが、英文の構造は、突き詰めれば次の2種類のうちいずれかです。
・A does B (AがBをする)
また、相手の発言を何とか理解しようとしていわゆる「返り読み」をしていると、集中力と時間を使い切ってしまい、話す余裕がなくなってしまいます。そしてこの問題は、いくら語彙を増やしても解決しません。
では、よどみなく話すネイティブ・スピーカーや同時通訳者はどうやっているのでしょうか。 ネイティブや同時通訳者は、どんなに長くても名詞節は1語として 処理 しています 。
例えば次のような英文の場合、太字の部分をまとめて1語として認識しています。
I do understand what my teacher was talking about.文の構造は「A does B」ですから、ネイティブ・スピーカーや同時通訳者には次のように聞こえているわけです。先生が言っていることはもちろん理解できる。
I may not have what it takes to be an English interpreter.
私には通訳者になる才能はないの かもしれない 。
I do undesutand B .このように、what 以下、数語分の内容を解読する代わりに、1語だけを聞いている感覚です。自分が話すときでも同じ。これならパッと聞き取れるし、言うこともできると思いませんか。Bはもちろん理解できる。
I may not have B .
私はBがないの かもしれない 。
そしてこの感覚は、音読練習することによって短期間で手に入ります。流ちょうなスピーキングを手に入れる最も効果的な方法ですし、リスニング力も上がります。
また、私自身が国内独学で同時通訳者になったように、「超」現実的な方法でもあるのです。
早速やってみて、英語を自動的に理解する回路をインストールしてください!
【ポイント1】what とhowで始まる節を1語として認識する
全ての物事を、「A is B」または「A does B」で言い表す。その感覚をつかむには、やはり声に出して英文を音読することです。最初は、what とhow で始まる文でやってみると、感覚をつかみやすいでしょう。
①名詞節だけを音読する
ではさっそく、次のフレーズをそれぞれ30回音読してみましょう。大文字になっている先頭の what や how は強く読んでください。
これらは実際に強く発音されることが多いので、自分が音読するときにもそうしておくと、リスニングで役立ちます。また、修飾される部分(名詞=この場合は what や how)が日本語とは逆に先頭に来ることを意識するのにも 有効 です。つまり、 前回 説明した「後置修飾」に体で慣れる手助けになります。
彼の言ってることWHAT he's talking about
やるべき事ことWHAT I should do
自分ができることWHAT I can do
できないことWHAT I can't do
どれだけ真剣になれるかそれぞれ1、2秒で読めると思いますので、1分間に30回以上読めるようになるまで練習してみてください。HOW serious I can be
②名詞節を含む文を音読する
次に、これらの節を含んだ長い文を音読しましょう。1文目の大文字で書かれたDO は強く読んでください。「確かに理解している」と強調したい部分なので、強く長く大げさに読むのが原則です。
I DO understand what he’s talking about .最終的には、この文章全体を12~14秒くらいで音読できるようになるまで練習しましょう。そこまでやると、what he's talking about や what I should do などの節が、1語のように感じられてくるはずです。Now, I need to know what I should do to break into fluency.
I need to know what I can do and what I can’t do , and I need to be able to do what I can’t do .
I know I have what it takes .
It just depends on how serious I can be .
彼の言ってること は分かる。
英語を滑らかに話すために今 やるべきこと をはっきりさせておかないといけないな。
まずは 自分ができること と できないこと を見極めて、 できないこと をできるようにしていこう。
自分には それをやるだけの才能 が備わってる.要するに *どれだけ真剣になれるかにかかってる。
*
【ポイント2】無生物主語を使いこなす
英語らしい表現方法の1つに「無生物主語」があります。無生物主語を使いこなせるようになると、be 動詞の使い方をあれこれ考えたり、無理に受動態をひねり出したりする必要がなくなります。そのため、一気に英語を話しやすくなるので、ぜひ音読で身に付けてください。
ここで おすすめしたいのは、無生物主語を使って愚痴を言うこと 。怒りや悲しみといったネガティブな気持ちは強烈なので、それを味わいながら音読すると、強烈に記憶に残るんです。
次の例文で太字にしたのが、無生物主語に当たる部分です。
ここでは、速さも大事なんですが、感情をこめて読むことにフォーカスしましょう。読みながら過去の自分を思い出したり、文の内容から浮かび上がるイメージをつかんだりすることを優先させます。
My English doesn't come out naturally,慣れるまでは、無生物主語を使うことに何となく違和感があるかもしれません。その違和感こそが日本語と英語の発想の違いです。but the situation doesn't allow me to work on it.
My job keeps me away from English and my family.
However , I'd better not wait for things to spin out of control because
time flies much faster than I think.
英語、もっと流ちょうに話したいけど今の環境じゃどうにもならないよ。
仕事に時間取られて英語もできないし、家族といる時間さえないし。
だからといって、いろいろ手に負えなくなるまで放置するわけにもいかない、
だって時間はこうしている間にどんどんたってしまうからね。
意識的に無生物主語を使うようにしていると、だんだん英語が自由に、楽に使えるようになってきます。英語日記や、英語でSNSをやっている人なら、 「1日1回は必ず無生物主語を使うようにする」というようにルールを決めて、習慣にする のもいいですね。 *
*
まとめ
今回は、音読を通して「A is B.」「A does B.」という英語のセンスを体得する方法、無生物主語の使い方を身に付ける方法を紹介しました。ぜひ、実際に声に出して音読し、効果を実感してください。
次回は、パッと英語が口から出てくるようにするための「瞬発力を身に付ける極意」と紹介します。お楽しみに!
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編集:川浦奈遠子文:横山カズ @KAZ_TheNatural
関西外国語大学・外国語学部スペイン語学科卒。発音検定EPT最高ランク(指導者レベル)、ICEE(国際英語コミュニケーション検定)2012年優勝、英検1級。同時通訳者(JAL)、翻訳家、英語講師。高田学苑英語科特別顧問。エスコラピオス学園 海星中・高等学校英語科特別顧問。学びエイド、リクルート・スタディサプリENGLISH講師。英語を日本国内で独学し、航空・IT・医療・環境・機械・国際関係・文学など多分野で同時通訳者として活躍中。JAL(日本航空)グループ、楽天株式会社では英語力向上と社内公用語化に貢献。「英語4技能」・英語スピーキングのエキスパートとして日本全国で授業と講演を行っている。著書多数。ジパングマネジメント株式会社・文化人枠 所属 。
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