「発音が難しいから英語を話すのは苦手…」ではもったいない! 発音についての数あるお悩みを、英語教師の久保岳夫先生が「音のしくみ」を説明しながら、分かりやすく解決する連載第4回。きっと誰もが気になる、[l] と [r] の音、今回は [r] について見ていきましょう!
英語らしい発音といえば [r] の音!
さて、「英語らしい発音」と言うと、r] の発音を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。日本語の「ラ行」も ra - ri - ru - re - roとアルファベットの r を使って表していますが、英語の [r] とはずいぶん違って聞こえませんか。一体どのように発音すればよいのか、前回の [l] の発音に [引き続き 、英語の [r] の秘密に迫ってみましょう。
舌先は天井につけない
[r] の発音をする際に気をつけるべきことに、 舌先を口の中の天井につけない というものがあります。これが日本語との違いで、日本語のラ行を発音する時には、舌先は口の中の天井についていますが、英語でraと発音する場合、舌先は天井につかないのです。
この2つの場合の口の動きを、口の断面図や実際の発音と一緒に確認してみましょう。
図1:日本語「ら」の発音直前の様子
図2:英語raの発音直前の様子
日本語の「ら」の場合は、舌先が上の歯茎の後ろあたりの天井についているのがわかります。一方、英語のraの発音は、舌はやや反っていますが、舌先は天井にはついていません。
舌をうまく反らせるには?
このように、基本的には舌を天井につけないことはわかったかと思いますが、そう言われても難しいのが [r] の音です。なぜなら、英語の [r] の大きな特徴として、 舌先を巻き上げて「舌を反らせる」 必要があるからです。舌をうまく反らせるために、上の奥歯あたりに意識を向けて、以下の図を見てみましょう。
図3:上下の歯を開いた図(左)と舌をのばした図(右)
左は上下の歯を大きくひらいた状態の図です。右は舌をのばした状態の図です。舌をうまく反らせるためには、 舌の両端部分をそれぞれ上の奥歯の内側あたりにつける とうまくいくことが多いです。AとBをそれぞれ接触させてみましょう。 では、こうしたことを意識して、練習問題に取り組んでみてください。
図3を意識して、お手本を聞きながら、舌を反らせた状態で[r]の発音を5秒間維持させてみましょう。舌先が口の中の天井に触れないように気をつけましょう。
[rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr](5秒間)この状態の発音を聞くと、なんだか母音のように聞こえませんか。実はこの [r] という音は子音だけでなく、母音としても使われることが多い音なのです。
母音としての[r]とは?
「母音としての r] 」とはどんな音なのか、まずはそちらから見ていきましょう。母音の [r] は、単語の綴りの上でもparkや [work のように、 母音のすぐ後ろにくっついています 。 それでは、さっそく母音として [r] を含んだ単語の発音練習をしてみましょう。
「母音としての [r] 」の発音練習をしましょう。お手本の後に発音をしてみましょう。それぞれ2回ずつ発音してみましょう。
1.earn
2.park
3.door
4.ear
5.air
6.yourこの6つを発音するためには、それぞれにポイントがあります。①は小指を口にくわえたくらい口を開けた状態で発音してください。②は、あくびをするくらい大きな口を開けて「あ?」と発音し、その後にすぐ続けて先ほど練習した [r] を加えたような音です。③は、やや口を開き気味で日本語の「お?」と発音し、その後にすぐ続けて [r] を加えます。④は日本語の「い?」を歯をしっかり見せながら発音し、そのすぐ後に [r] を発音するイメージです。⑤は少し口を大きめにあけたまま「え~」と発音し、その後で [r]を発音する感覚です。⑥は日本語の「う?」を発音した後に続けて [r] を加えます。このように、母音としての[r] は ざっと6種類 はあります。
ちなみに 、この母音としての [r] は人によっては発音しないことがあります。有名なものに、標準的なイギリス英語の発音がこれにあたります。つまり、イギリス人はairの発音を舌を反らせずに単に「えー」のように発音することが多いのです。こうしたことも、[r] の発音のおもしろい特徴ですね。
子音としての [r]
それでは、次に「子音としての [r] 」に移ります。今度はどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。
私たち日本人は「ラ行」の発音に慣れてしまっていますが、まずは、この 先入観から脱出しなければなりません 。日本語のラ行に慣れてしまっていると、舌先が口の中の天井につかないということが最初はなかなか受け入れられません。そうすると、結果として舌先が天井についた日本語のラ行の発音になってしまうことも多いかと思います。
「子音としての [r] 」で一番意識してもらいたいことは、舌先と口の中の天井の間にできた 「せばめ」を瞬間的に広げる 、ということです。言葉だけではよくわからないと思いますので、以下の図を見てみましょう。
図4:英語でraを発音する際の口の中の様子
図3を見ながら、ゆっくり英語の[r]を使ってraと発音してみましょう。図のような舌の動きが感じられるはずです。その感覚が「子音としての [r] 」ということになります。英語の「子音としての [r] 」の発音のコツは、 少し唇をすぼめながら発音しようとする ことです。こうすると、だいぶ楽に発音ができます。人によっては「ら~」というよりも「わ~」のように聞こえることがあるかもしれません。それでは実際の単語の発音も練習してみましょう。
お手本を聞きながら、「子音としての [r] 」の発音を練習しましょう。1回目はゆっくりと、2回目は普通の速さで発音してみましょう。
2.rock
3. right
まとめ
それでは今回学んだ [r] の発音についてのまとめです。
●[r] は舌先を天井につけないで、反らせることが大切
●舌をうまく反らせるためには、舌の両端を上の奥歯の内側につけてみる
●[r] には「母音としての[r]」と「子音としての[r]」がある
●母音としての [r] はざっと6種類
●子音としての [r] の発音のコツは口をすぼめること
[r] の発音を身につけるには、自分自身でたくさん練習し、自分で発音した [r] を何度も聞いて、耳を慣らしていくことが大切です。繰り返し練習をして、自分の耳も慣らしていきましょう。
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文:久保岳夫
開成学園英語科講師。専門は英語教育学、英語音声学。学生時代に英語の音声に関心を持ち、英語教師の道へ進む。日本人英語教師として理想の英文朗読を研究している。趣味は英会話、囲碁、ランニング。資格はIPA Certificate of Proficiency in the Phonetics of English(英語音声学技能検定)、英検1級など。
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