学生時代、英語が苦手でずっと避けて通ってきた、会社も英語とは縁遠いところに就職した……なのに、急に仕事で必要になるなんて! という方に向けて、「とりあえず押さえておけば大丈夫」という基本的な文法をご紹介します。
英語は語順で意味が異なる!
「英語はさー、単語さえあってれば、順番を適当に使ってもさー、なんとか意味が通じるんじゃないの?」という人、結構多いのでは?
単純なものは通じると思いますが、単純じゃない表現のほうが世の中多いですよね。日本語はある程度語順がバラバラでも意味が通じます。だから「英語でも語順がバラバラで通じる」と考えてしまう人はいるのかもしれません。
しかし英語は日本語とは事情が違います。英語の場合、語順によって意味が180度変わることがあるからです。それでは「正しい語順」というものを説明しましょう。本来は「5文型」を学ばなければならないのですが、今回は「語順」のみに特化して解説してみようと思います。
日本語と英語の構造の違い
【質問】次の日本語の意味として、それに続く英文は正しいでしょうか?
- 佐藤さんを社長は叱った。
Mr. Sato scolded the president.- 佐藤さんはその報告書を社長に手渡した。
Mr. Sato passed the report the president.- 佐藤さんは「Zプロジェクト」とその計画を名づけた。
Mr. Sato named “Z project” the plan.
さあどうでしょう? 普段「単語さえあってれば意味はなんとか通じるはずだ」・・・と考えている人ほど「3つとも正しいんじゃない?」と思うはずです。そう考えるといつも変な英語を使う羽目になります。実はこの文は3つとも日本語の意味の英語にはなっていません。
日本語は「て・に・を・は」、英語は語順が重要
1.から考えましょう。「佐藤さんを社長は叱った」ですが、日本語の場合これは 「佐藤さんを」「社長は」「叱った」の3つに区切れます。日本語の場合、「て・に・を・は」さえ正しくついていれば、順番を多少変えても意味は通じます。
【日本語】「佐藤さんを社長は叱った」・・・
- 「社長は」「叱った」「佐藤さんを」
- 「叱った」「佐藤さんを」「社長は」
- 「社長は」「叱った」「佐藤さんを」
どれでも「て・に・を・は」さえ正しく付いていれば、意味は分かるものです。
しかし英語は違うのです。英語は語順で意味が決まるのです。順番を変えると意味は全く別のものになります。
【英語】Mr. Sato scolded the president.
Mr. Sato / scolded / the presidentの3つに区切れるが、Mr. Sato scolded the president.の順番だと意味は「佐藤さんは社長を叱った」
なぜか? 実は語順のせいなのです。
英語の場合、日本語と違い、語順がかなり大事になってきます。ここでは特に「動詞の直後」を注意して見てみましょう。
Mr. Sato scolded the president.
この英文の場合scoldedが動詞。その直後はthe presidentですね。 scold ~ で「~を叱る」なのでscolded the presidentだと「社長を叱った」になるのです。
じゃあ、「叱ったのは誰?」という話になるのですが、scoldedのすぐ手前(左側) にあるMr. Sato、つまり佐藤さんが叱ったとなってしまいます。
ではどうすれば社長が佐藤さんを叱ったことになるでしょうか?お分かりですね。Mr. Satoとthe presidentの位置を逆にします。
→ The president scolded Mr. Sato.
です。
佐藤さんは何を誰に手渡したのか
今度は2.を考えましょう。「佐藤さんはその報告書を社長に手渡した」ですが、1.と同じように考えると「佐藤さんは」「その報告書を」「社長に」「手渡した」の4つに区切れます。
【日本語】「佐藤さんはその報告書を社長に手渡した」・・・
- 「社長に」「手渡した」「佐藤さんは」「その報告書を」
- 「手渡した」「佐藤さんは」「社長に」「その報告書を」
- 「その報告書を」「手渡した」「社長に」「佐藤さんは」
意味はどの順番でも通じますね。
【英語】Mr. Sato passed the report the president.
Mr. Sato / passed / the report / the presidentの4つに区切れるが、Mr. Sato passed the report the president.の順番だと意味は「佐藤さんはその報告書に社長を手渡した」
よーく読んで下さいね。報告書に社長が手渡されたのです。意味を成しませんね。なぜか?もちろん語順のせいです。
「動詞の直後」を注意して見てみましょう。
Mr. Sato passed the report the president.
この英文の場合 passed が動詞。そしてthe report (その報告書)とthe president(社長)で、「名詞が2つ」続きますね。 pass は「・・・を(手)渡す」という意味ですが、passの後に名詞が2つ続く場合は、事情が異なります。
最初の名詞を「~」、次の名詞を「…」で表すと pass ~ …で「~に…を(手)渡す」になります。「に」と「を」は逆になりません。passed the report the president は最初の名詞が「the report」その後の名詞が「the president」ですから、最初の名詞には「に」がつき、後の名詞には「を」が付くので「その報告書に 社長を 手渡した」になってしまうのです。
その報告書を社長に手渡したことにするには「the report」と「the president」の位置の順を逆にしてpassed the president the report にします。
最後にpassed(手渡した)人物、Mr. Satoをpassedのすぐ手前に置きましょう。
→ Mr. Sato passed the president the report.
これで「佐藤さんはその報告書を社長に手渡した」になります。
佐藤さんは何になんと名付けたのか
最後に3.を考えましょう。「佐藤さんは『Zプロジェクト』とその計画を名付けた」ですが、日本語の場合は「佐藤さんは」「Zプロジェクトと」「その計画を」「名付けた」の4つに区切れます。順番を変えても
【日本語】「佐藤さんは『Zプロジェクト』とその計画を名づけた」・・・
- 「その計画を」「名づけた」「佐藤さんは」「『Zプロジェクト』と」
- 「名づけた」「佐藤さんは」「『Zプロジェクト』と」「その計画を」
- 「『Zプロジェクト』と」「その計画を」「名づけた」「佐藤さんは」
意味は分かりますね。しかし英語だと
【英語】Mr. Sato named “Z project” the plan.
Mr. Sato / named / “Z project” / the planの4つに区切れるが、Mr. Sato named “Z project” the plan.の順番では、意味は「佐藤さんは『Zプロジェクト』をその計画と名付けた」
もう一度よーく読んで下さいね。「Zプロジェクト」を「その計画」と名付けたのです。計画の名前が Z プロジェクトではないのです。
では「動詞の直後」を注意して見てみましょう。
Mr. Sato named “Z project” the plan.
この英文の場合namedが動詞で、“Z project”(Zプロジェクト)とthe plan(その計画)で、「名詞が2つ」続きますね。nameという単語は動詞だと「…に名前をつける」や「~の名前を言う」という意味です。ただし の(2)のpassと同じく、後に名詞が2つ続く場合は、事情が異なり、name ~ … で「~に…と名つける」という意味になります。このときも「に」と「と」は逆になりません。
だからnamed “Z project” the planは「『Zプロジェクト』をその計画と名付けた」になってしまうのです。
正しくは・・・もうお分かりですね。“Z project”とthe planの位置の順を逆にし、named the plan “Z project”にすればOKです。
残りはnamed(名付けた)人物Mr. Satoをnamedのすぐ手前に置きましょう。
→ Mr. Sato named the plan “Z project.”となります。
これで完成。「佐藤さんは『Zプロジェクト』とその計画を名付けた」になります。
【正解】
- 佐藤さんを社長は叱った。
The president scolded Mr. Sato.- 佐藤さんはその報告書を社長に手渡した。
Mr. Sato passed the president the report.- 佐藤さんは「Zプロジェクト」とその計画を名付けた。
Mr. Sato named the plan “Z project.”
以上の説明で「英語は語順が大事である」ということがお分かりいただければと思います。でもこのままではまだ説明が実は中途半端なのです。英語が苦手な人ならば「でも具体的にどういう動詞をどういう語順で使うか分からない」と思うと思います。これらは「5文型」という文法で学ぶことができます。5文型では語順のみならず単語の性質についても学びます。
5文型については次回と次々回で基礎から説明するので、お楽しみに。
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