45歳2児の父、夢への第一歩は4時起きから【Age is just a number】

『45歳 仕事をやめてコロンビア大で見つけた 英語の新しい勉強法』の著者・西山数紀さんが、ご自身の留学のリアルな体験をつづる連載です。英語教員として20年間教壇に立った後、45歳で仕事を辞め、米国コロンビア大学教育大学院への留学を決意。本には書ききれなかった挑戦の舞台裏や、ニューヨークでの生活、現地での驚きや発見を紹介します。第1回は、留学を決意したときの奥さまの意外な反応から、午前4時起きの出願準備、そして思いがけない奨学金獲得までを振り返ります。

突然の挑戦を宣言、そのとき家族は……

「仕事やめて、コロンビアかハーバードに留学しようかなって思ってるんやけど……」

妻に打ち明けたときのことです。

反対されるのを覚悟で伝えたら、キッチンで夕飯準備をしていた妻は5秒ほど固まったあとにこう言いました。

「……ここ10年で一番テンション上がったし、興奮したわ。やっぱりまだあきらめてなかったんだね。いいよ挑戦してきて。子どもたちは任せといて」

お金はどうする?子どもの教育は?という当たり前の反応を想定して、怒られる準備をしていたところ、妻はこう続けました。

「家族のために20年頑張ってくれた分、今度は私が頑張る番やと」

泣く

こうやって、45歳にして世界最高峰への挑戦が始まりました。志望校は「コロンビア大学教育大学院」、出願締め切りまですでに1年を切っている、超突貫出願のスタートでした。

私が挑戦を決意した理由〜教員自身が挑戦しないでどうする!

教師って子どもたちに夢を与える職業なんですよね。いろんな教科の先生がいますが、私たち教員に共通しているミッションって、教科指導を通じて「子どもに夢を与えること」だと考えています。教員はよく生徒に「大きな夢をもて」と言いますが、自分自身はどうなんだろうって。日々の忙しさを言い訳にせず、挑戦する背中を見せることで生徒たちに伝えられることがあるのではないか、と思うようになりました。これが留学を決断した1つ目の理由です。

新しい学年が始まった4月、始業式の後のホームルームで「今年度の目標」を決める、年度初めの恒例の時間がありました。生徒たちが自分の目標を手帳に書いているとき、私も同じように手帳に書きました。

「2025年3月、私はコロンビア大学教育大学院に奨学金付き合格をする」

挑戦したもう1つの理由は、20年間の教員生活の中で、必死に努力して第一志望の大学に合格をして羽ばたいていく生徒たちを見るのは嬉しかったのですが、同時に羨ましいなと思うようになってきたことです。

「もう一度、最後にボロボロになるまで学びたい」

インプットが枯渇し、自分の日々の成長が緩やかになり始めているのに気づいた40代前半、このまま大きなアップデートのないまま、予想できる未来に向かってただ歳をとっていくのはあまりにも人生もったいないなと思い始めたのです。人生の折り返し地点とも言える40代、日本に生まれ、健康な身体もあり、支えてくれる家族や仲間もいる。唯一足りないものは自分の覚悟だけ。

だから挑戦することにしました。

そして、やるからには、自分が世界一だと信じる最高峰の教育大学院に出願しよう、そこで世界レベルの教授や仲間たちと一緒に教育を学べたらどんなに幸せか。そう考えてニューヨークにあるコロンビア大学教育大学院を第一志望に選びました。

今振り返ってみると、このような思い切った決断ができた理由には、40歳になって「死ぬこと」を意識し始めた、ということもあるかもしれません。どうせ自分はあと40年もすれば死ぬ、それなら周りの目を気にせず、やりたいように生きようと。このように死を意識することは、本当に自分のやりたいこと(やりたくないこと)が明確に整理できるので非常におすすめです。

夢への第一歩は4時起きから

「お願いだから静かにして!」

早朝からシャドーイングをして妻に怒られること数え切れず……。

45歳英語教員、それなりに責任あるポジションを任されて夜遅くまで働いていた自分にとって、自分の英語学習や海外大学院の出願準備をする時間は早朝しかありませんでした。IELTSのスコアメイキング、志望理由書、推薦書、エッセイなど、あまりにも膨大な準備が必要なので、途中であきらめる人も多いほど海外大学院の出願は大変です。自分の納得いくものにするために、私は挑戦を決めてすぐに4時起き生活を始めました。朝起きてすぐに白湯で目を覚まし、手帳に書いた目標を読み上げることから1日が始まります。子どもと妻が起きてくるまでに、英語の勉強や出願準備に必要なエッセイなどに集中する3時間が私にとって最も大切な時間でした。

よくタイムマネジメントや継続のコツなどを聞かれますが、私の答えはいつもシンプル、「朝やること」です。たとえTo-Doリストを作っていても、夕方以降の時間帯は達成確率がガクンと落ちる、仕事が長引いたり急なトラブルが起こったりするからですね。また、40代に入ってから睡眠時間を削るのはNG、20代の若い頃と違って睡眠不足は翌日のパフォーマンスがガタ落ちします。日中の教員としての仕事には全力で取り組みたかったので、そう考えると朝時間の活用しかありません。朝が苦手という人もいますが、必ず達成するという覚悟が決まっていれば苦手とか関係ありません、そこは気合いで解決しましょう♪

想定外だった「まさかの奨学金」

なんとか必要な書類を作り終え、IELTSスコアも取得し、締め切り前日に出願書類を提出し終えてからおよそ2カ月後の3月10日、第一志望のコロンビア大学教育大学院に合格することができました。しかしながら、それと同時に我が家にもう1つ別の試練が訪れます。

そう、「お金」です。

45歳で仕事を辞めて、家族を日本において自分だけニューヨークで大人留学と聞くと「実家が太いんでしょ」とSNSでコメントされたことがありますが、全然そんなことありません笑。むしろ我が家は教師だけの給料でなんとか生活するごく普通の経済力で、子どもの留学費用を毎月少しずつ貯め、つみたてNISAでなんとか元手を増やそうとするような、非常に平均的な家庭です。さらに私の場合は、45歳という年齢から、国内の給付型の奨学金は年齢制限でほぼ全て対象外。そんな平凡ファミリーが学費だけで年間64,000ドル(約1,000万円)かかるようなコロンビア大学教育大学院に受かってしまったものですから、我が家はもう大変な状態でした。合格したにもかかわらず、家の中はまるで不合格の雰囲気でしたね……。娘のために少しずつ貯めてきた留学費用をあてても、授業料と、世界でも物価が高いことで知られるニューヨークの生活費には焼け石に水でしたから。毎日のように、ニューヨークで体力的に過酷な高時給のバイト情報などを調べていました……。

「どうする?あきらめるのか?」

合格の発表からおよそ10日後、大学から1通のメールが届きました。いつものように朝活をしていた私がそのメールを開けると、コロンビア大学から「Scholarship(奨学金)について」というタイトルのメール。

「まさか?!」

興奮しながらおそるおそる金額を見てみると、3,200ドル、日本円にして約50万円。まだまだ全然足りないけど、出してくれるだけ本当に有り難いな。え?違うぞ!ゼロが1つ多い!32,000ドル!!!!

なんと信じられないくらいの奨学金が下りたとの通知メールでした。日本円にしておよそ500万円。神様……。

「これでいける……」

「高時給バイトしなくていい……涙」

海外大学院の出願を考えている方から、よくお金の相談を受けます。そんなときに必ず伝えるようにしていることは「お金で挑戦をあきらめないこと」です。

私の場合は、国内の給付型奨学金はほぼ全て年齢制限でアウトでしたが、30代までだとかなり多くの奨学金に申請が可能です。また、たとえ奨学金が出なくても、大学側が提供しているFinancial Aidプログラムや大学内でのOn-Campus Job(大学内アルバイト)などもあり、私たちが考えている以上に経済的に苦しい学生への救済措置はたくさん用意されているのです。お金で挑戦をあきらめないでください。お金は後からでも稼げば手に入りますが、この目の前の挑戦機会は今しかありませんから。

連載の第2回は、ついに渡米、ニューヨーク生活が始まり、初日から英語が全く通用しなくてどん底に突き落とされた話です。ちゃんと聞き取れたのはわずか30%ほどでした。お楽しみに。

西山数紀さんの本

西山 数紀(にしやま かずき)
西山 数紀(にしやま かずき)

教育者。1978年生まれ。英語教員として20年間教壇に立った後、「世界の教育」を学びたいと考え、日本に家族を残して単身渡米。米国コロンビア大学教育大学院(Teachers College, Columbia University)にて教育リーダーシップの修士課程を修了。ニューヨークでの生活や英語学習の苦闘をリアルに発信したX(旧Twitter)が、多くの英語学習者の共感を呼ぶ。帰国後は、留学・駐在者向け英語オンラインスクール「RECIPRO」を立ち上げ、海外に挑戦する方の伴走を続けている。将来の夢は「自分の学校を作ること」。英検1級。2児の父。X(旧Twitter): @kazuuuu3150

サムネイル画像:Teachers College of Columbia University/Bohao Zhao/Wikimedia Commons/CC BY 3.0(色調補正あり)

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