映画英語シャドーイングのすすめ ~オススメ勉強法から作品の選び方までを解説!

上級者が独学で英語力を上げるのに効果的なシャドーイング。この連載では、人気ハリウッドスターが出演する映画作品を「モノマネ」することで、楽しくシャドーイングを行う方法を紹介します。

はじめに

英語の勉強法にはさまざまなものがありますが、主にリスニング力(やスピーキング力)の強化のために、よくシャドーイングという勉強法(訓練方法)が取り上げられます。

シャドーイングとは、読んで字のごとく、「影のようについて行く」こと。英語の音声を聞きながら、あとに続いてどんどん同じ英語を復唱していくという内容です。何も見ずに聞こえた音を繰り返すことで、まずは「聞く」ことに全力で集中するよう仕向けるのです。

今連載では、そのシャドーイングの教材として、映画のセリフを活用するという試みをおこないます。いろんな名作に登場する映画スターたちの力(と声)を借りて、英語のリスニング力を養っていきましょう。

シャドーイングとその効果とは

TOEICや英検などで高得点を取りたい、または、英語母語話者とスムーズに英会話をしたい、と願う人にとって、リスニングはとても重要になります。しかし、リスニングの最終目的は内容理解ですが、その前段階として、どんな単語や文が話されているかを聞き取らなければなりません。そのためには、普段から耳を英語に慣れさせておく必要があります。なぜなら、日ごろ聞き慣れていない音の連続は、ただの雑音にしか聞こえないからです。

英語には日本語とは異なる、発音やイントネーション、リズムや言葉の切りかたなどが多く存在するので、日常的に耳や脳に英語の音を覚え込ませておくことが、リスニング力強化の第一歩です。

その目的で広く知られている訓練方法が、シャドーイングです。大量の英語を耳で聞き、あとを追う形で即座に、なるべく忠実に、次々と同じ英語をくり返して発していきます。もちろん、あと追いすべき音声を聞き逃すと、自分も発音できなくなるので、リスニング中は耳の瞬発力に加え、集中力も鍛えられます。

いろんなシャドーイングの種類

シャドーイングの中にも、さまざまなタイプがあり、主に次のようなものが挙げられます。

・プロソディー・シャドーイング:とにかく、聞こえた音を忠実に再現することに集中する。

・コンテンツ・シャドーイング :内容の意味も理解しながら、復唱を行う。

映画を使ったシャドーイングでは、プロソディー・シャドーイングをお勧めします。というのも、まずは映画スターの英語の「音」を真似てもらいたいからです。また、好きで何度も観たことがある映画なら、すでに各シーンで話されている内容が分かっていることも多くなると思います。まずは無理なく、楽しく映画スターの英語を「モノマネ」することから始めましょう。

おススメの映画英語シャドーイング方法

映画英語のシャドーイングで注意していただきたいことは、以下です。

1.イヤホン・ヘッドフォンを着用する。

2.短時間を、長期間つづける。

3.できるだけ大きな声が出せる環境を用意する。

1.に関しては、あと追いするべき英語音声を自分の声でかき消さないために、イヤホンなどをつけると効果的です。2.に関しては、シャドーイングは非常に負荷がかかる作業ですので、一日に何時間も行うようなものではありません。まずは、一日に5~10分程度でいいので、長い期間継続することを心がけましょう。3.に関しては、淡々と話されるニュース英語などとは異なり、映画英語では発話者の喜怒哀楽の感情が込められた英語が多数登場します。できる限りそれらも正確に再現(モノマネ)するためにも、大きな声を出しても周囲の迷惑にならず、自分も恥ずかしくない環境をセッティングしましょう。

映画英語ならではの楽しみ方

シャドーイングの教材として映画英語を使う利点は、何と言っても、楽しく英語学習ができることです。お気に入りのシーンを自分の英語で再現したり、好きな俳優のモノマネをしたりするのは、やっていて苦にならない作業だと思います。

また映画のセリフは、プロのスクリプトライターによる良質の台本を土台にしているので、英文の一つひとつがよく練り込まれています。シャドーイングをしていると、それまで気づかなかった英語表現の奥深さに気づくこともあるでしょうし、もしかすると、物語の伏線などを発見できるかもしれません。

さらに、映画英語ならではの英語を観察できる点も重要です。例えば、地球に来た火星人にどう対応するかを話し合っている次のシーンでは、中盤で下のような白熱した会話があります。

President : General Decker, if you do not shut up, I’m going to relieve you of your command.

大統領:デッカー将軍。もし黙らんようなら、君の指揮権を解くぞ。

General : We have to strike them now, sir! Annihilate! Kill! Kill! Kill!

将軍:すぐ攻撃すべきです。全滅させろ。倒せ!倒せ!倒せ!

President : Shut up! Shut up! Shut up!

大統領:黙れ!黙るんだ!黙ってろ!

(『マーズ・アタック!』より)

上の会話では、shut up(黙れ)が4回登場しますが、発音が2タイプあります。ひとつは、2語がつながり「シャラップ」に聞こえる発音で、2つ目のshut upで確認できます。もうひとつは、2語を区切って発音する「シャット・アップ」の発音で、2つ目以外は全てそう聞こえます。

「シャラップ」のように、/t/の音がラ行やダ行に聞こえる現象は「弾音化」と呼ばれ、母音に挟まれた/t/でよく起こります。そのため、とりわけアメリカ英語ではよく、waterは「ワラ」に、let it goは「レリゴー」に聞こえます。しかしこの弾音化は、常に起こるわけではありません。相手に警告を与える目的などで、あえてshut upをゆっくりと、区切って発音する時にはラ行にはならないのです。このような特殊な意図を持つshut upの発音が、まさにこのシーンで激怒している大統領のshut upから確認できるのです。

一般の英語教材には、こんなにshut upを連呼する会話はないですよね。でもこのような2種類のshut upの発音だって、リアルな英語の一側面です。こういった会話こそ「映画英語ならでは」と思って、いろいろと楽しみましょう

映画英語のシャドーイングの注意点

映画でのシャドーイングで大事なのは、具体的な教材選びです。もちろん自分が好きな作品を使うのがベストですが、あと追いをする英語自体に問題があれば、大変な負荷がかかる作業が無駄になります。あくまで英語学習であることを忘れてはいけないのです。

教材選びの大前提となるのは、語彙、文法、話し方、スピードなどの点で、聞き取りやすいシーンであることです。そのほか、シャドーイングでより高い効果が見込まれるのは、次のような映画やシーンです。

アニメや、レイティングがG指定であるなど、子どもの視聴者も想定した映画。

・恋愛系やヒューマンドラマ系など、身近な話題を話すシーンが多い映画。

・学校や職場が主な舞台になっていて、すぐ使える英語表現が多く出てくる映画。

避けるべき映画やシーンは、次のようなものです。これらは、シャドーイング教材として不向きであったり、聞こえる英語に実用性がなかったりします。

・銃撃音や爆発音など、効果音やBGMがたくさん入ったシーン。

・法廷系や政治系などの、専用語がたくさん出てくるシーン。

・古い英語表現がたくさん登場する、史劇などの映画。

・英語以外の言語のなまりが強く出る、英語圏以外の地域が舞台の映画。

まとめ

上記の点を踏まえて、次回からは人気映画スターが出演する映画を取り上げながら、楽しくシャドーイングを行うための具体的な方法を紹介していきます。映画英語の魅力をふんだんに活かして、英語力アップを目指しましょう。

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