映画俳優や監督などの通訳をする「芸能通訳者」の今井美穂子さん。この連載では、今井さんが通訳学習者の基礎訓練を活用した英語のトレーニング法を、完全オリジナルの英語エッセイ(日本語訳・英語音声付き)とともにお届けします。最終回である第4回のテーマは「通訳者はどのような訓練を経てプロになるのか?」。今井さんが、通訳をすることの本質について書きます。
芸能通訳者のトレーニングを大公開!
EJOの読者の皆さま、こんにちは。芸能通訳者の今井美穂子です。この連載では、私がTwitterで提唱している、英語の多面的なトレーニング方法をご紹介します。トレーニングの素材は、毎回私がオリジナルで制作、ご提供します。
毎回の構成は以下のようになります。
- オリジナル英語エッセイのテキスト:今回のトピックは「通訳者はどのような訓練を経てプロになるのか?」。大まかな日本語訳を付けました(逐語訳ではありません)。英語だけで内容が理解できる方は、日本語の部分はさっと読み飛ばしてもOKです。
- 英語エッセイを読み上げた音声:私が読み上げています。
- 今回の注目フレーズ!:英語エッセイの中から、なじみのない表現や、覚えておくと役に立つ表現をピックアップしました。
- 英語のトレーニング法:エッセイと音声を使用した英語訓練法をいくつかご提案します。ご自分に必要なトレーニングを選んでみてください。
通訳者はどのような訓練を経てプロになるのか?
過去に「達成したこと」を自信の源泉にする
通訳は言葉の置き換えにあらず
通訳スクールではどのような勉強をするのか
現場は自信と落ち着きが大切
今回の注目フレーズ!
- testament 証し
- rightful 公正な、正しい
- indisputable 議論の余地のない
- a given 当然のこと
- semantically equivalent 同義の
- dissociate 分離する
- extract 抽出 する
- utter 声を発する
- expressive capacity 表現力
- on the first listen 初見で
- cognitive load 認知的負荷
- squeamish ビクビクしている
- insecurity 不安感、自信のなさ
- up to the task 役割を果たせる
- small talk 雑談
英語のトレーニング法
上記のエッセイと音声を使用した英語訓練法をご提案します。ご自分にとっての英語学習上の課題に応じて、必要なトレーニングを選んでみてください。
ディクテーション
難易度 :★
対象 :リスニングが苦手と感じる英語学習者。
手順 :1センテンス 単位 で音声を止め、テキストを見ずに書き取りをします。一通り書き終えたら、原文のテキストと照らし合わせ、間違えたところや抜けたところを精査します。
効果 :音声をひとつのまとまった構造として認識する訓練になります。前置詞、冠詞、時制、動詞の活用、可算・不可算名詞等、後述する「リプロダクション」や「シャドーイング」では見落としかねない細かい文法を意識できるようになり、文法力、ひいてはリスニング力、スピーキング力のアップにつながります。
リプロダクション
難易度 :★★
対象 :リスニングはある程度できるが、正確に話すのが難しいと感じる英語学習者。
手順 :1?3センテンス 単位 で音声を止め、テキストを見ずにリピートします。慣れないうちは1センテンス 単位 で 実施 し、一言一句正確に再現します。慣れてきたら2、3センテンスと分量を増やしてもよいでしょう。文法に自信のある学習者の方は、多少表現を変えても、内容を正確に再現できていれば構いません。文型認識、意味理解が重要です。
効果 :文の形や理解した内容を瞬時に口で再構築することで、正確なスピーキング力が身に付きます。
シャドーイング
難易度 :★★★
対象 :リスニング力、スピーキング力、語彙力全般の底上げを図り、英語発話のリズム、発音、スピードを 改善 したい英語学習者。聞きながら話すので、負荷の大きい訓練法です。ある程度基礎力を付けてから 取り組む ことをお勧めします。
手順 :音声にかぶせるようにして、ほぼ 同時に まねをします。慣れないうちはテキストを見ながらでもいいでしょう。話者の声の高低やリエゾン、リズムを意識しながら、はっきりと声を出してシャドーイングしましょう。ヘッドフォン着用を推奨します。時間に余裕があればご自身のシャドーイングを収録し、書き起こし、原文テキストと照らし合わせると、語彙や文法上のウィークポイントをあぶり出すことができます。
効果 :大量にまねることで、リスニング力、スピーキング力、語彙力アップにつながり、自然な発話が身に付きます。
パラフレージング
難易度 :★★★★
対象 :表現の幅を広げ、文章構築力を身に付けたい英語学習者。相当な文法力と語彙力が要される訓練法で、上級者におすすめです。
手順 :言い換えの練習。1?3センテンス 単位 で音声を止め、原文と違う表現や文型を用いて内容を再現します。
【例】元の文:Her classic textbook was mandatory reading in the interpreting school that I enrolled in.効果 :表現の幅が広がることで、言葉の詰まりや言いよどみが減っていきます。言いたいことをずばり伝えられるようになります。パラフレージングの訓練は、日々多くの英語表現に触れ、インプットを十分に蓄積することが 前提 となります。パラフレーズした文:Every student was required to read her seminal textbook at the interpreting school where I went.
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。第4回の「芸能通訳の現場から!」、いかがでしたでしょうか?今回は通訳学習者の訓練法について書かせていただきました。今回で連載はいったん終了となりますが、少しでもお役に立てたのなら幸いです!
*2 :ある言語から別の言語へ通訳する時の元となる言語。原語。
*3 :ある言語から別の言語へ通訳する時の訳出後の言語。英語話者の発話を日本語に訳す場合、ターゲット言語は日本語である。

今井 美穂子(いまい みほこ) 日英通訳者。映画配給に10年間携わった後、2009年に通訳者デビュー。現在はエンターテイメント業界を中心に活動する傍ら、通訳者養成学校で後進の指導に当たっている。芸能通訳者としては、来日イベントや国際映画祭での記者会見、舞台あいさつ、レッドカーペット、取材での通訳を10年以上にわたり担当。過去に通訳した著名人には(以下敬称略)マーティン・スコセッシ、クリストファー・ノーラン、キアヌ・リーブス、岩井俊二、塚本晋也、黒沢清、仲代達矢、渡辺謙がいる。
Twitterアカウント: https://twitter.com/mihoko_imai
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