教会なのに異例の面白さで10万人以上のフォロワーを獲得し、広く一般に大人気のTwitterアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」。その運営を行う「まじめ担当」と「ふざけ担当」のうち、まじめのMAROさんによる連載「聖書で英語!」では、聖書からキリスト教と英語について楽しく紹介します。第3回は、「天国」の英語表現からわかる教養と豆知識あれこれです。
「天国」と「楽園」の話をしよう
こんにちは。MAROです。冬の寒さ深まる近頃ですが、皆さま体調を崩されたりしていないでしょうか。
聖書から英語を学んでしまおうというこのコラム、早くも第3回です。今回は寒い冬とはイメージが反対の「天国」や「楽園」について、英語でどう表現されているのかをお話ししようと思います。 よろしく お付き合いください。
聖書に「天国」という言葉は登場しない!
そもそも の話なのですが、「天国」ってなんでしょう。辞書を引くと、「信者の霊魂が永遠の祝福を受ける場所」といった意味が書かれています。
しかし、なんと日本語の聖書に「天国」という言葉は出てきません。 聖書では「天の御国」とか単に「御国」 とか表現されます。・・・でも面倒なので、このコラムでは「天国」でいきますね。
さて、「天国」を英語で言うとHeaven・・・と、思いがちですが、実は 厳密にはHeavenという単語が示すのは「天」 であって「天国」ではありません。現在では Heavenの1語でも「天国」を指す ケースも多いのですが、これはどうも10世紀頃に定着した表現らしく、それよりもさらにずっと前に記された聖書では 「天国」はKingdom of Heaven と表現されます。
体制 とは?">天国の政治 体制 とは?
Kingdom of Heavenって、日本人からすると面白い表現だとは思いませんか。日本語では「天国」としか言わないものを 「天の王国」と表現 しているんです。
つまりこの一言だけで、 天国の政治 体制 は社会主義でも民主主義でもなく、王政 だということまでわかってしまうというわけです。
もちろん、その王様になるのはイエス・キリストということになります。理想の王であるイエス様が治める理想の国、これが天国なのです。仏教でも「極楽浄土」という考えがありますけど、そこの政治 体制 まで考えることは 少ない ですよね。
キリスト教って、いわゆる 「あの世」のことも意外とリアリスティックに考えている のです。漠然と「苦しみのない素晴らしいところ」と思っているわけではないことが、この言葉だけでわかってしまいます。
「天国」と「楽園」の違い
もう一つ、 「天国」の英訳にはParadise という語もあります。日本ではあまり区別しないかもしれませんが、これは 「天国」というよりは「楽園」 と訳す方が正確かもしれません。
確かに、「天国」という意味でParadiseを使うケースは聖書にもあります。しかし、アダムとイブの住んでいた エデンの園を示すのはParadise であって、Kingdom of Heavenが用いられることはありません。
エデンの園は地上にあったので「天の」という意味のHeavenは使わない んですね。Kingdom of Heavenと言うと「死後の世界」のイメージが強くなりますが、Paradiseは必ずしもそうではなく、あの世この世に かかわらず 「理想郷」くらいの意味 になります。
Paradiseの方が守備範囲が広いんです。ただ、(×)Kingdom of Paradiseという表現の仕方はまずしません。政治 体制 はParadiseでは規定されないからです。「すてきな場所」であればそこはパラダイスではあるけれども、イエス様が王でなくては天国ではない。そんな感じです。
「タックス・ヘイブン」はheavenではありません
さて、ちょっと話は変わりますが、世界のお金持ちが 税金逃れのために利用する国や地域は「タックス・ヘイブン(租税回避地)」 と呼ばれて、何年か前にずいぶん話題になりましたよね。
これをtax heaven、つまり「税金天国」と思ってしまっている人が日本では少なくないのですが、これは 正しくはtax haven、つまり「税金の避難所」 です。
発音も似ていますし、スペルも「e」が一つあるかないかですから非常に紛らわしいです。しかもさらに紛らわしいことに、フランスなどではこれを「paradis fiscal 」など、「税金天国」と訳される言葉で表現したりします。
今回の聖書英語フレーズ
Blessed are the poor in spirit, for theirs is the Kingdom of Heaven.先月に 引き続き 「山上の説教」の有名フレーズ です。心の貧しい者は幸いです。天の御国はその人のものだからです。(マタイ5:3)
倒置が2回もあって読みにくいのですが、聖書ではとてもよく見られる表現ですから、聖書を読むなら慣れておいた方がいいでしょう。受験英語としても、難関校を目指すなら覚えておいて損はないフレーズです。
Assuredly, I say to you, today you will be with Me in Paradise.この Assuredly, I say to you,(まことに、あなたに告げます)というのは、イエス様が大事なことを話すときに口癖のように言うフレーズ です。聖書には何回も出てきます。かみ砕いて訳せば、「これから大事なことを言うからよく聞けよー!」です。聖書以外ではほとんど使われないフレーズなので、覚えなくてもよいと思います。まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。(ルカ23:43)
後半でMeというのが出てきますが、これはmeの誤記ではありません。 聖書では神様やイエス様を示す代名詞はすべて頭文字を大文字 にします。三人称であればHe, His, Himですし、一人称ならI, My, Meとなります。
それではまたいつか。MAROでした。God Bless!
※聖書の出典:日本語『聖書 新改訳2017』、英語“Holy Bible: New King James Version” 1983
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上馬キリスト教会ツイッター部 MARO 1979年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。キリスト教ではない家に生まれ、23歳のときに洗礼を受けた「クリスチャン1世」。Twitterアカウント「上馬キリスト教会( @kamiumach )」の運営を行う「まじめ担当」と「ふざけ担当」のまじめの方でもある。2015年2月からキリスト教を面白おかしく紹介し始めたところ10万人以上のフォロワーを獲得した。
「ふざけ担当」LEONとの共著に『 上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門 』、『 上馬キリスト教会ツイッター部の世界一ゆるい聖書教室 』(共に講談社)がある。単著に『 上馬キリスト教会ツイッター部の キリスト教って、何なんだ? 本格的すぎる入門書には尻込みしてしまう人のための超入門書 』(ダイヤモンド社)。
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