英語とドイツ語が堪能なことで知られるジュビロ磐田の山田大記選手。大学時代は英語が苦手だったという彼が、どうして語学を勉強しようと思ったのか。また、多忙なプロサッカー選手生活の中で、どのようにして語学を身に付けたのか。2020年12月刊『ジュビロ磐田の通訳が教える超実践的英語勉強法』(ジョージ赤阪著/アルク)の中から、ジュビロ磐田の通訳を務めるジョージ赤阪さんとの特別対談の一部をお届けいたします。
ジュビロ磐田・山田大記選手×ジョージ赤阪 特別対談
――山田選手は、学生時代のころから英語を話せるようになりたかったそうですね。 そう思ったきっかけはどのようなものでしたか?
山田 大学時代、街を歩いていたら外国の人に英語で道を尋ねられて。でも、全然教えられなかったので、道案内ぐらいできたらいいな、と思ったのがそもそものきっかけです。サッカーで海外遠征にも行っていたので、そのときにも「やっぱり英語を話せると便利だな」と思うこともあって。英語を話す人と触れ合うことで、英語を勉強したいな、と思いました。
山田大記/ジュビロ磐田・元日本代表
――大学時代は、プロサッカー選手を目指していたと思うのですが、海外でプレーすることも視野に入れていたのでしょうか?
山田 プロになるんだという強い気持ちで日々の練習や試合に取り組んでいましたが、当時は海外でのプレーについては考えていなかったです。実は大学時代、英語は苦手だったかもしれない。
赤阪 え、意外だね!
山田 それでも、英語を話せるようになりたいなと思って、大学の会話クラスを見に行ったんですよ。そしたら、英語ペラペラの人しかいなくて・・・すっかり気圧されて、結局履修しなかったです。でも、失敗したっていいんだし、恥ずかしがらずに飛び込めばよかったのに、って今は思いますね。大学には学べるチャンスがいっぱいあったんだなと、社会人になり、英語学習に投資するようになって、ようやく気づきました(笑)。
ジョージ赤阪/ジュビロ磐田 通訳
―― ちなみに、第二外国語は何を?
山田 僕は中国語。
赤阪 僕はドイツ語ですね。でも、単位を取るだけで精いっぱいでした。
――それでは、山田選手が2011年から2014年にジュビロ磐田に所属されていたときに行っていた英語学習についてお伺いします。英語学習に取り組み始めたのはいつごろでしたか?
山田 プロになってすぐのころから、英語の勉強を始めました。自分一人で勉強しても続かないので、ジョージさんに英会話の先生を紹介してもらって、マンツーマンで教わったりしていました。本格的に力を入れて英語を勉強するようになったのは、2013年12月にスコットランドのセルティックで練習参加することが決まったことがきっかけです。
赤阪 そうそう、大記にネイティブ・スピーカーの先生を紹介しましたね。僕が大記が解いてくる問題集を丸付けしていたのが2013年のことだから、その前からちょこちょこ勉強していたんですね。
――プロサッカー選手は試合にトレーニング、体のメンテナンスなど非常に忙しく、時間を捻出するのが難しいと思うのですが、どのように勉強していましたか?
山田 今までのようなペースで勉強していては話せるようにならないなと思って、2013年は半年ぐらい、ペースを上げてしっかり勉強しました。週2、3回英会話レッスンに通い、マンツーマンレッスンと少人数のレッスンの両方を受講していました。ジョージさんに勧めてもらった問題集もやって。ジョージさんには「ここでしっかり中学英文法をおさらいしておくと、今後の英語力の伸びが違ってくるよ」とアドバイスをもらいました。なので、基礎的な英文法もしっかり学びましたね。あとは、「湯船に浸かりながら単語を覚える」「車に乗っているときは英語を聞き流す」というふうに、毎日のルーティーンの中に英語学習を取り込んで、すき間時間にも英語に触れるようにしていました。
赤阪 じゃあ、クラブハウスでお風呂に入るときも、単語帳を持ち込んでいたの?
山田 はい、朝、お風呂で体を温めるときはいつも持ち込んでいましたね。僕、家で勉強できないタイプなんですよ。「今日は勉強するぞ」と決心したら、練習場から直接カフェに行って。適度に人の目があると、頑張れるんです(笑)。自分が勉強したくなる環境を作る工夫はしていました。
赤阪 それじゃ、ファンに声かけられたでしょう?
山田 たまにかけられましたね。
――ちょっとした時間も英語に触れつつ、会話と文法の両方を学んで、基礎固めをしたのですね。赤阪さんに問題を解いて提出されていましたが、スケジュール的に難しいと思ったり、諦めようと思ったりすることはなかったですか?
山田 きっちりやって提出するのは、自分にとっては難しくなかったですね。
赤阪 大記は問題を解いて、定期的に持ってきてくれました。問題の8割から9割はできていましたから、残りについて添削した感じです。半年で英語の基礎をしっかり身につけたな、という印象を持っています。
山田 学び続けることで、少しずつ自信も出てきて。「話せるようになるかも」と手ごたえを感じ始めたのが、2013年の11月ぐらい。僕が目指していたのは「きれいな英語」「複雑な表現を駆使するビジネス英語」ではなく、サッカーをする上でコミュニケーションを取れる英語だったので、英会話の先生にも「カタコトでもいいから、意思疎通できる英語を教えてください」とお願いしていました。このころから、「どこで、どのようにアウトプットするか」ということは意識していましたね。
―― 今後身を置くであろうシチュエーションを想定して、そこで使える表現を学んでいったのですね。
赤阪 最初は粗削りでいいので、まずは英語の基礎を学んで、その後自分のニーズに沿って学んでいくことで、細かいところを「チューニング」するというか。そういう形で学んでいくのが大事だと思います。
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撮影:江間 志(くまふメディア制作事務所)
・山田大記(やまだ ひろき) 静岡県出身。2011年、ジュビロ磐田に入団。その後2014年から3年間、ドイツ・ブンデスリーガのカールスルーエSCでプレー。2017年、再び磐田に入団し現在に至る。ポジションはミッドフィルダー。背番号10番。Twitter: @yammaada10
・ジョージ赤阪(じょーじ あかさか) 埼玉県出身。慶應義塾大学理工学部卒。20代はヨーロッパ、中南米で語学を学ぶ日々を送る。1999年9月からJリーグ・ジュビロ磐田の通訳を務める(英語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、韓国語)。著書に、自身の実践から生み出した学習法を伝える『ジュビロ磐田の通訳が教える超実践的英語勉強法』がある。Twitter: @George_Akasaka
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