大きな決断をしなければいけないときに、私が取った方法【女優・大久保麻梨子さんインタビュー(後編)】

2回に分けてお届けしている、女優・大久保麻梨子さんのインタビュー。今回は後編をお届けします。26歳のときに単身台湾に渡り、現地で女優として成功を収めた大久保さんは、今後「日本と台湾の架け橋」として、どのような活動を目指していらっしゃるのでしょうか。

前編はこちら

台湾に伝えたい日本、日本に伝えたい台湾

GOTCHA!編集部(以下、編集部):今は「日本と台湾の架け橋としての活動」を目指していらっしゃいますが、具体的にどんなことに取り組みたいとお考えですか。

大久保麻梨子(以下、大久保):今はコンテンツが豊富にあって、各国の作品が手軽に見られるようになっています。海外の人は、日本の作品を通じて日本の文化や慣習を知ることができます。これまで台湾で活動していましたが、これからは日本の作品にも出演して、台湾の方などに日本のことを伝えていきたいと思っています。

また、私が台湾にひと目ぼれして大好きで9年間住んできたので、台湾のいいところも発信し続けたいです。台湾の人は日本が大好きで、日本人より日本のことに詳しいようなところがありますが、日本の人はそれほど台湾のことを知らないように思います。SNSでの発信もそうですし、それとは別の形、例えば本などの形で、日本の人に台湾のこと知ってもらえる仕事ができたらいいと思っています。

現地の人とコミュニケーションを楽しみたい

編集部:台湾の魅力について、もう少しお聞かせいただけますか。

大久保:今、旅行で台湾を訪れる方は多くなっていると思います。でも、現地に行ったら日本人同士で楽しむのではなく、ぜひ現地の人と触れ合う機会を持っていただきたいです。そうしたらきっと、台湾のことがもっと好きになると思います。

編集部:例えば、どんなところが好きになると思います?

大久保:台湾の方々は、いい意味で本当におせっかいなんですよ。私が初めて台湾に行ったときは、中国語を一生懸命話そうとしても通じなくて、相手の言っていることも分からなくて。でも、分からないから終わり、とはならないんです。「日本語が話せる人、いない?」と探してくれて、その友達の友達が少し日本語が話せるからと、その場まで来て助けてくれて。

あと、私、台湾で5回くらい財布をなくしましたが、全部戻ってきました。こんな人の温かさ、台湾の良さは、現地の人とコミュニケートしないと体験できません。もし、財布とか携帯とかをなくしたら、諦めないでぜひ探していただきたいです。そうしたら台湾の人情味を感じられると思います。 

編集部:財布や携帯をなくす以外に、いいコミュニケーションの方法もありますよね。

大久保:そうですよね(笑)!タクシーの運転手さんもひょうきんな人が多くて面白いですよ。日本語がちょっと話せる方もいて、話しかけたらとても喜んで、いろいろな話を聞かせてくれたり、おいしいものが食べられるお店を教えてくれたりとか。タクシーの運転手さんにおいしいものを尋ねてみる、というのはどうでしょう。

庶民的な店で楽しめる台湾グルメ

編集部:おいしいものと言えば、好きな食べ物は「臭豆腐」とのことですが。

大久保:そうです!プロフィールにそう書いてありますよね。臭豆腐は大好きです。初めて台湾に行ったときに人に脅されて食べたんですけど、最初からおいしいと思いました。

私のリサーチでは、最初から臭豆腐を受け入れられる人は、台湾に長く住めると思っています。行ったらとりあえず臭豆腐を試してみると面白いかもしれませんね(笑)。私の日本人の友達は八割方苦手ですけど、でもオーケーだった子は気に入って住んじゃった子もいます。

編集部:臭腐以外におすすめはありますか?

大久保:「台湾といえば〇〇」という感じではまだ日本で取り上げられていませんが、ぜひガチョウの肉を食べてほしいと思っています。薫製のガチョウですが、なんとも言えないうま味がぎゅっと詰まっていておいしいですよ。栄養価も高いですし。庶民的な店でも楽しめます。ガチョウ肉で検索したら、すぐに見つかると思います。

編集部:その肉は何かで巻いて食べたりするんですか?京ダックのように。

大久保:薫製のガチョウ肉が塩漬けのようになっているんです。ショウガの千切りと一緒に食べます。ビーフンの入ったスープなどが一緒に出されることが多いです。台湾ビールによく合いますよ。

あとは、フレッシュジュースもおすすめです。台湾はフルーツ王国なんです。

編集部:台湾のお土産といえばパイナップルケーキを思い出します。

そうですよね、それしかないっていう感じで。それこそお土産に、ガチョウの油とネギを和えた調味料(鵝油金葱)があるんですけど、それはどうでしょう。それさえあれば、野菜を炒めるだけで、とてもコクのあるガチョウ風味の野菜炒めが作れます。それもお土産におすすめです。ガチョウ縛りですみません(笑)。

スクリーンを通じて伝えたい女性像

編集部:話を日本に移します。つい先日まで金沢で映画を撮影されていたとお伺いしました。台湾のドラマなどに出演されていたときは、スタッフは中国語で、大久保さんは役で中国語や日本語を話していたと思います。日本に来て完全に日本語の現場で映画を撮影されて、いかがでしたか?

大久保:最初は、みんなが日本語を話していることに違和感というか、くすぐったい感じがしました。あと、現場のスタッフさんが手際よく、撮影がサクサクと進んでいく感じもしました。とてもいい緊張感があって、そういうことを考える暇もないくらいすぐに撮影に集中することができました。

編集部:台の現場はどんな感じだったのでしょうか。

大久保:撮影がプロフェッショナルなのはもちろんですが、台湾では食事も大事なんです。だから、ここを撮り切らなくてはというシーンでも、ご飯が来たらいったん撮影を中断して、食事休憩に入るんです。

日本では撮影の途中に温かい食事を取る機会は少ない気がしますが、台湾では食事が温かくないとみんなが食べてくれないんです。あいさつも「こんにちは」じゃなくて「ご飯食べた?」って聞くくらいですから。だからピリッとした緊張感よりほんわかした雰囲気。和気あいあいとした現場が多い気がします。

編集部:金沢で撮影された映画は来年公開ということですけど、どのような映画になるんでしょう。

大久保:『種まく旅人~華蓮(ハス)のかがやき~』というタイトルの作品で、日本の農業の後継者問題や、女性が農業に関わるときに発生する問題などをテーマにしています。私が演じるのは、大阪で公務員をやっていて、とても堅実で将来のビジョンもはっきりしていて、それに向かって一歩一歩努力していく女性です。

交際している男性ともうすぐ結婚というときに、その男性の実家の農家で問題が発生します。農業というそれまで全く考えたことのなかった世界を前に、彼女がそれとどう関わり、どう選択していくのかという話です。

私が演じるその女性は、私もそうありたいと思っているのでとても共感できます。堅実な感じとか、一歩一歩地に足を着けて進んでいきたいと思っているところとか。

でも、「堅実に」と思っていても、経験や出会いを通じて、自分でもびっくりするような決断をするときがあると思うんです。私も「台湾に若くして来ました」と言っていますが、自分の本来の性格から振り返って考えると、実はよくあんな決断をしたなと思っています。

自分で動いているようでいて、実は周りの人に人生を動かされている。そんな物語の映画です。

人は助け合って生きているんです

編集部:GOTCHA!の読者にも、やりたいことがあるのに決断できなくて悩んでいるような方がいると思います。何かアドバイスできることはありますか?

大久保:私は人に頼ったり甘えたりすることが苦手でした。23~26歳の間、一人でもんもんとした生活を送っていましたが、その状況をなんとか打破したい、このままでは嫌だと思ったときに、多くの人の力を借りました。その方々がいなかったら、今の自分はありませんでした。

だから、人に頼ってみることも大事だと思います。私のように人に頼るのが苦手とか、甘えるのは好きではないとかあると思いますが、そうしてみると、実は相手も意外と悪い気はしないと思ってくれたり、喜んでくれたりします。

私は台湾でも、甘えていいんだ、人は助け合って生きているんだと学びました。台湾の人って遠慮しないんです。「今度、日本に行くから麻梨子の実家に泊めてくれない?」と言われたことがあって、「え?私、台湾にいるけど実家に泊まるの?」って聞いたら、「うん」って言うんですよ。だから「分かった」って言って。

私自身、台湾でその子には家族ぐるみで良くしてもらっているので、私も両親に友達が行くから泊めてあげてねって頼みました。私がいないときにその友達は一人で福岡に遊びに行って、言葉も分からない母と2人で朝ご飯を食べたりして。もちろん、そこには「私とあなたは友達だから」という信頼感がある前提ですが、私に甘えて頼ってくれているわけですから、私もとてもうれしく感じました。

頼ったり頼られたりするっていうのもいいものだよ、ということを台湾で学んだので、何かに迷って決断できずにいる方は、思い切って人に頼ってみたらいかがでしょう。何か良いアドバイスがもらえたり、良い経験ができたりすると思います。

大久保麻梨子さん出演映画情報
tanemaku-tabibito.jp
大久保麻梨子(おおくぼ まりこ)

2013年に台湾最大のテレビアワード「第48回金鐘獎」最優秀助演女優賞を受賞、台湾で役者を中心に活動している。台湾連続ドラマ『幸福不二家』で主人公を演じ、「金馬奨」最優秀作品賞の映画『血観音』など多数出演。最近では、番組のMCも務めている。

18歳のとき、日本の「ミスマリンちゃんを探せ」オーディションでグランプリに選ばれ、 芸能界デビュー。9冊の写真集、各雑誌の表紙を飾り、グラビアなどで人気を博した。2010年初めて訪れた台湾に一目ぼれし、思い切って生活の 拠点 を台湾へ移し中国語を習得。モデルとして数々のCMに出演し活躍。その後出演したドラマ『愛情替聲』で演じた役で「第48回金鐘獎」最優秀助演女優賞を獲得し、女優活動を本格化させた。 2016年、台湾人の一般男性と入籍。国際的な生活文化交流をつなぐ架け橋になることが一番の目標である。

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