『絵本で英語をはじめる本』の著者で、多読のガイドとしても活躍中の木村千穂さんに、大人が楽しむための英語絵本を3回にわたって紹介いただきます!1回目の今回は「すごく絵がきれい」な英語絵本です。
大人が読んでも楽しい絵本がたくさん!
こんにちは。英語絵本の案内人、木村千穂です。
絵本というのは「子どもが読むもの」「子どものために読んであげるもの」。そんなふうに思っていらっしゃいませんか?
もしそうだとしたら、それはとってももったいない!日本語、英語を問わず、絵本には大人が読んでも十分楽しめるものが、実はたくさんあるのです。
そこで、昨年紹介した おすすめの英語絵本10冊 に続き、今回から3回にわたって「大人でも楽しめる英語絵本」をご紹介していきたいと思います。「はあ、英語絵本?それも大人向け?」・・・ごもっとも、ごもっとも。
英語子育てに関心のあるママさん、パパさんならいざしらず、これまで英語絵本にあまりなじみがなかった方も多いかもしれません。英語絵本なんて一般の書店ではあまり見掛ける機会もないですし。
けれども、日本にも赤ちゃんから楽しめる絵本があるように、やさしい英語絵本もいろいろあります。そして、今は日本でもインターネットなどで、どなたでも簡単にそれらを手に入れることができる時代です。
「ふーん、それなら、ちょっと手を出してみようかな?」と思ってくださった大人のあなたに、まずは「とにかく絵がきれいで楽しめるもの」を2冊、ご紹介します。まずは、英語の本を最後までめくることになじむために、手に取ってみてはいかがでしょう。友達にプレゼントしたくなるような2冊です。
by Jerry Pinkney)">The Lion & the Mouse( by Jerry Pinkney)
- 作者: Jerry Pinkney
- 出版社/メーカー: Little, Brown Books for Young Readers
- 発売日: 2009/09/01
- メディア: ハードカバー
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
コールデコット賞は、アメリカで出版された絵本の中で、最も優れた作品に対して年に一度贈られる賞です。
イソップ物語の『ライオンとネズミ』としてお話は知っている、という方もいらっしゃるでしょう。この絵本は、イソップ物語の『ライオンとネズミ』を基にしていますが、 文字がほとんどありません 。 まとまった文章は、見返し(表紙カバーをめくった裏)のあらすじと作者紹介、作者による Artist's Note くらいです。
ただ、絵に添えられた動物の鳴き声は英語で書いてあるので、
「フクロウは、ホーホーじゃなくて WHO Who Whooo ね」とか
「ライオンは、ガオーじゃなくて GRRR とか RRROAARRRR なんだ」とか
「ネズミは、チューチューじゃなくて Squeak Squeak かあ」
なんていうのを知ることができるのも、英語絵本ならではの面白さです。
しかし、この本で特筆すべきは、描きこんである絵です!
美しい絵が本当にすばらしく、「 絵本は絵を楽しむもの 」という原点に返るというか、見れば見るほど引き込まれます。文はなくても、細かく丁寧に描かれているジャングルの情景や、ライオン、ネズミの表情が、とても多くのことを読む人に直接投げ掛けてくる感じがします。
ライオンは、ある日捕まえたネズミを逃がしてやります。そしてライオンが人間のわなに気付かず、網に捕らわれてしまったとき、ガリガリとロープを食いちぎってその窮地を救ったのがネズミでした。大きなライオンが、小さなネズミに命を救ってもらったのです。巣に帰ったネズミには子どもたちがいて、ライオンにも奥さんと子どもたちがいる。そんな情景が最後に描かれているところも、ちょっとジーンとくるかもしれません。「読む」のではなく 「感じる」絵本として、楽しんでほしい一冊 です。
迫力満点なライオンの顔が大きく描かれている表紙のカバーを外してみると、そこには、また違う表紙が現われます。その違いに、「おお~!」っとなるのも、ハードカバー絵本ならではの醍醐味。ぜひ体験してみてください。
by Helen Cooper)">Pumpkin Soup( by Helen Cooper)
ケイト・グリーナウェイ賞は、イギリスで出版された絵本の中で最もすぐれた作品の画家に対して年に一度贈られる賞です。
こちらもまた、絵がとてもきれいで、秋の色合いが満載。よく描き込まれた動物の表情も素晴らしく、絵だけを見ていても十分楽しめるような絵本です。単語数は750語くらいありますが、やさしい英語なので、さほどお話の長さは気になりません。
登場するのは、森の中の一軒家に仲良く暮らしているネコ、リス、アヒルの3人組(あえて3人、と呼びたいくらい、表情豊かなんです!)ネコがかぼちゃを切って、リスが水と一緒に混ぜて、アヒルが塩加減を調整します。とびきりおいしいパンプキンスープを作って3人はいつも幸せでした。
ところが、ひょんなことから仲たがいが起こり、アヒルが家出してしまいます。そのうち戻ってくるよ、と待っていたものの、だんだん暗くなってもアヒルは戻りません。
もしかして森で食べられちゃったかも?
もっと、仲良く歓迎される友達に会っちゃったかも?
ああ、こんなことなら、もっとアヒルの好きにさせてやればよかった・・・ポロリと涙をこぼすネコとリス。この表情を見ていると思わずこちらも悲しくなってきます。そしてアヒルを探し疲れたネコとリスがとぼとぼ帰った家には明かりがついていて・・・。
仲良しって、時々、面倒くさいこともあるけど、やっぱりいいな。おいしそうなパンプキンスープの、いい香りが漂いそうな絵を見つつ、そんな 穏やかな心にしてくれる、秋の雰囲気たっぷりの一冊 です。
いかがでしたか? 大人の心に染みてくる英語絵本をぜひお楽しみください!
木村千穂さんの本
文:木村千穂
リリオブランコ英語教室を主宰。「一生楽しめる英語を身に付ける」をモットーに、英語絵本からはじめる英語、を提案している。年齢を問わず、教室に1500冊以上ある英語絵本の貸出をしながら多読のガイドをする、プライベートレッスンが好評。著書 『絵本で英語をはじめる本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)