北九州市立大学で大学教員として働くアメリカ人のアンちゃんが、日本の面白い和製英語について紹介するコラム。第四回は、「バトンタッチ」について紹介していただきます。
こんにちは。大好きな福岡県の田舎にある宗像市で、文化と言葉を研究しているアンちゃんです。 前回の和製英語「ハイテンション」 に続いて、今日は「バトンタッチ」について説明するバイ。
和製英語とは?
日本語の語彙は10パーセント以上が外来語だと言われています。そのうちの、約90パーセントは英語からきています。ただ、和製英語は外来語とは違います。
和製英語は、英語っぽく作られている日本語 です。
多くの日本人にとって、和製英語と本当の英語を区別することは難しいですが、和製英語はクリエイティブでバリバリおもしろい!だからアンちゃんと一緒に和製英語の魅力を探しましょう!
今日の和製英語「バトンタッチ」
この単語を、多くの日本人は英語だと思っている かもしれない けど、実は違います。「バトンタッチ」は純粋な和製英語です。
バトンタッチは、前任者から後任者へ責任や任務を譲るという意味で使われますね。これは、陸上リレーで選手が次に走る選手にバトンを渡すことから来ています。こんなに短い単語ひとつで意味がはっきり分かるから、アンちゃんは和製英語が大好きです!
さて、「バトンタッチ」を言いたくてたまらないときに、英語ではどんな風に言ったらいいと思いますか?
もし「バトンタッチ」を英語で表したいなら
英語で「バトンタッチ」を表したいときには、 “passing of the torch ”や“changing of the guard”という慣用句 があります。
torch という単語は、アメリカ英語で(ハワイのディナーショーで見るような)松明(たいまつ)、イギリス英語では、懐中電灯という意味を持っています。
torch という表現で思い浮かぶのが「五輪の聖火」です。聖火リレーでは、ギリシャのオリンピアで採火された火を開催地の競技場まで選手たちが走り、松明を手渡しして繋ぎます。松明をバトンタッチをすることを、 pass the torch と言います。 ちなみに 、イギリス英語では、 pass on the torch を使うこともありますよ。
changing of the guardという表現は、元々はイギリスのバッキンガム宮殿のセレモニーを指す言葉です。日本語では「バッキンガム宮殿の衛兵交替式」と呼ばれている、英国衛兵隊が音楽に合わせて行進する催しは、イギリスでは有名なイベントです。
changing of the guardを使って「バトンタッチする」を表したいときは、“have a changing of the guard”と言います。大事な政府の建物を守っている兵士たちが任務交代をするという意味から広がって、前任者から後任者へ任務を交代するという意味になりました。
使い方としては、 pass the torch は個人から個人に、changing of the guardは集団から集団に バトンタッチするイメージがあります。
両方とも慣用句でちょっと固い感じがするので、 もう少し砕けた表現を使いたい場合によく使うのは、“ take over ” で、日本語で言うと、「 引き継ぐ 」や「引き取る」という意味です。
バトンタッチは、「前の人」が後ろの人に渡す感じですが、 take over は、「後ろの人」が前の人から引き継いだ、という感じで少しニュアンスが変わります。
下記の例文を見てみましょう。
He has been the company president for more than 40 years. Next month, he will retire, and pass the torch to his son.彼は、40年間以上社長として勤めていた。来月退職する時に、息子にバトンタッチをする。
Last year when Donald Trump won the presidential election, it was a major changing of the guard.昨年、トランプ氏がアメリカの大統領選挙で勝ったことは、大きな政権交代だった。
He will take over the company when his father retires next month.来月、彼の父親が退職すると彼は会社を 引き継ぐ 。
He will take over as the manager of the SoftBank Hawks next season. 彼は来シーズン、ソフトバンク・ホークスの監督の任を 引き継ぐ 。
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スポーツ関係の和製英語はたくさんあります。
例えば「トップバッター」も和製英語です。野球の一番打者という意味もあるけど、何かに最初に 取り組む 人にも使いますね。個人的にこれは英語に入ってほしいなぁ。何となく「最初にする」という意味だとすぐわかるからです。トップバッターの一番近い表し方は“go first”です。
「あなたはトップバッターだ」は、“You will go first.”と言います。 トップバッターをネイティブスピーカーに対して使った場合、一回も聞いた事がなくても文脈でわかる 可能性 は高いですよ!
それからよく和製英語で見るのは、 単語自体は存在するけど英語圏で使われている意味とは違う 、というものです。
ある日、娘が小学校から帰ってきてこう言いました。
「ママ!明日学校でマラソンするよ!」
私は、どういうこと?と、あまりのショックでどう答えたらいいかわからなかった!
どうしてこんな反応をしたかというと、英語では、“ marathon ”という単語は、長距離レースの意味しかないからです。だから、2年生の娘がマラソンするって聞いて、マジでビックリしたバイ。その後、日本語では距離と関係なく持久走の意味でも「マラソン」と言うと知って 安心 しました(笑)
あとは「フライング」も。水泳や陸上などで使いますね。この和製英語はすごくわかりやすくて好きなんだけど、絶対に英語圏では通じません。英語では、“false start”と言います。「不正スタート」という意味です。
カタカナ語を聞いたら、これは英語なのか?和製英語なのか?辞書やインターネットで由来を調べてみるとおもしろいですよ!
今日の勉強があなたのためになれたら、バリバリうれしいバイ!
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アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語で綴る「 アンちゃんから見るニッポン 」も 更新 中!
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