「おもてなし」をグローバルに:英語とデジタルスキルで地方観光を活性化

日本で初めて、リスキリングに特化した非営利団体を設立した後藤宗明さんに英語リスキリングのメリットやおすすめの英語学習法についてお話しいただきます。第3回は、訪日インバウンドで生かせる英語とデジタルのリスキリングについて語ります。

観光産業で求められる英語力

将来の選択肢を広げるために、英語学習は重要なリスキリングの一つです。特にこれからは、訪日外国人の増加を視野に入れた英語力が求められています。「おもてなし」文化をはじめとする日本のサービスの質の高さや、高品質かつリーズナブルな商品は、外国人観光客にとって今後も魅力的です。こうした日本の特長を活かすためのリスキリングとして、英語学習は今も大切です。

しかしなんといっても、日本が抱えている課題は、外国語を話せる人材が圧倒的に少ないことです。日本好きの訪日外国人観光客の中には、日本語を話そうと勉強している人もいますが、やはりトラブルなどの対応が必要な場合には、日本語ができない観光客でも、彼らの言語で安心して相談できる仕組みが大切です。比較的大きな宿泊施設では、英語や中国語を話せるスタッフが常駐している場合もありますが、やはり一般的なホテルや飲食店においては、現状ではなかなか外国語対応が難しい状況にあります。この観点から、地域企業でも多言語が操れる人材を育成していくことは急務です。

今では外国人誘致の大成功事例となったニセコですが、まだ皆に知られていない時期から、ニセコ町役場では、英語、中国語、韓国語などで発信ができるフルタイムの外国人を採用しており、それぞれの自国語でニセコの魅力を発信し続ける業務を担当していました。それが起爆剤の一つとなって、ニセコは海外大手ホテルチェーンが次々と参入するなど、どんどん外国人観光客が過ごしやすい環境へと変化していき、次第に移住する方々も増えていったのです。ニセコは海外からの投資がさかんであるものの、まだまだ発展途上ではあります。しかし、地道な努力を発端として海外の人たちを惹きつけているという点で、本当にお手本となる自治体です。

英語力とデジタルスキルを駆使して日本の魅力を海外へ発信!

また、英語学習のリスキリングに加えて、現代の日本人に求められているのは、デジタルマーケティングのスキルです。私が日本の地方を訪れるたびに感じるのは、美しい自然や素晴らしい歴史的建造物、おいしい食べ物、そして心温まるおもてなし文化といった、豊富な資産が存在しているにもかかわらず、それらが適切に宣伝されず、海外での知名度を得ていないことです。英語や中国語などの外国語に加えて、デジタル分野の知識とスキルを身に付けることで、インバウンドを見据えた成功が期待されます。

さらに、外国人観光客の中には、多忙の中で観光に訪れる人達がいるため、事前にアクティビティや食事などの予約を計画的に行なっておきたいというニーズがあります。YouTube、Instagram、TikTokなどで世界中のコンテンツを常に見られるようになった現在では、それらを見て、事前に予約をしておきたいというニーズが高くなっています。外国語だけでなく、デジタル分野の知識とスキルが必要なのは、このような外国人観光客に特有のニーズに対応するという観点からも意味があることなのです。

具体には、以下に示す業務を実行できるように、積極的にリスキリングを進めることがおすすめです。

SNSを使って情報発信

最も手軽に始められるのは、皆さんご存知のFacebookやInstagramといったSNSです。ターゲット設定をすれば、特定の国や地域(例:ASEAN、欧州、南米など)ごとに広告出稿のエリアを選択できるので、それぞれの地域に合わせたプロモーションが可能です。また、もともと日本語で広告を作った場合でも、自動翻訳によって複数言語で広告発信を行うことが可能です。広告においては、伝え方、言葉選びが重要であるため、自動翻訳の内容をネイティブスピーカーなどにきちんとチェックしてもらうなどは必要かと思いますが、近年は圧倒的にグローバル展開がやりやすくなっているのは事実です。

既存のウェブサイト、アプリの多言語化

例えばWovn Technologiesという企業は、Webサイト・アプリをさまざまな言語に多言語化できるサービスを展開しています。このようなサービスを積極的に導入することができるリテラシーがあれば、グローバルな規模でのビジネスを実現することができます。例えば、自治体の観光資源に特化したポータルサイトを、多言語で本格的に運用できるとなれば、海外で商品を販売したい代理店候補とつながりやすくなります。日本人が知っている以上に、海外では日本の文化、製品、サービスが流行しており、日本ブームになっているので、この機会を逃すわけにはいきません。

アドテクノロジーを駆使したデジタル広告運用

また、広告配信の効率を上げるために利用されるアドテクノロジーの活用もおすすめです。海外メディアへの広告出稿を得意とするプラットフォームを活用すれば、自社の製品やサービスの広告を、グローバルな規模で効果的に配信できるようになります。

海外メディアでの記事掲載および記事広告出稿

2023年1月、『New York Times』が特集した「52 places to go(訪れるべき52地域)」において、ロンドンに次いで盛岡市がなんと第2位に選ばれました。そのため、現在の盛岡市は溢れんばかりの外国人訪問客が訪れているそうです。日本在住のライター、クレイグ・モド氏が『New York Times』に寄稿したことがきっかけでした。インバウンド展開を行うためには、メディアに記事広告を出稿し、知ってもらう地道な活動が大切になります。

以上のように、インバウンド市場では英語学習とデジタルマーケティングのリスキリングが非常に重要な意味を持っています。リスキリングは、日本の地方がグローバルな舞台で活躍するためのカギを握っていると言えるでしょう。日本のインバウンド観光はさらに進化していくと私は確信しています。

後藤宗明(ごとう・むねあき)
後藤宗明(ごとう・むねあき)

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。SkyHive Technologies日本代表。30代はグローバル分野、40代はデジタル分野で自身のリスキリングを実施。フィンテック、通信ベンチャー、外資コンサル、AIスタートアップを経て、2021年ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。著書『自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング』

連載「年収アップにつながる英語リスキリング」記事一覧

後藤宗明さんの本

『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング 【実践編】』9月1日発売

現在注目されている「リスキリング」が実践できるようになる一冊。これからリスキリングを実践しようとしている人だけでなく、リスキリングの意味やこれからのビジネストレンドを知りたい人にも役立つ一冊です。

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画像:Oliver Dickersonmits hak from Unsplash

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