海外ビジネスで百戦錬磨の岡田兵吾さんが25年の経験から学んだというビジネス英語の「気配り」についてご紹介します。「上司は決して威張らない」「部下は反対意見の表明を恐れない」など、グローバル人材なら抑えておきたい姿勢を解説します。
上司や同僚とのやりとり
上司は決して威張らない
日本の縦社会に対し、グローバル社会は横社会です。マイクロソフトシンガポールにいるフィリピン人役員は、最年少で役員昇進を果たした超エリートで、私よりも立場が上ですが、その彼は、私が話し掛けるたびに必ず立ち上がり、私の目を真っすぐ見ながら、How can I help you, Hyogo? と、穏やかに応えてくれます。
またアジアの元CFOもとてもオープンな人柄です。以前、同じエレベーターに乗り合わせて重量オーバーになったとき、自らぱっと降りて、「最近ダイエットが必要だから階段で降りるよ」と笑顔を見せてくれたことが印象的でした。
下への言葉もポジティブで丁寧、私は彼らのような人たちこそが、あるべき上司の姿ではないかと思っています。私も彼らの姿勢にならい、他人に対して、I count on you!(期待しているよ!)などと前向きな言葉を掛けるように心掛けています。
特にコロナで働く方・生き方が見直されて、欧米諸国では「大退職時代」と言われるように、労働人口の半分以上の人間が1年後に転職を考えていると言われる状況だからこそ、部下へのねぎらいは特に気にかけています。
部下は反対意見の表明を恐れない
グローバル社会では、異なる意見をぶつけ合ってこそ、新しい発見があると考えます。また仕事ができる上司ほど、反対意見を言える部下を評価します。
それがわかっている部下は、上司と反対の意見を口にすることを恐れません。ただ、ビジネスでは直接的でむき出しの英語は、誰に対しても失礼に当たります。そこで必ず、I’m sorry, but ~、I’m afraid ~, but ~、Honestly speaking、To tell the truthといった前置きから切り出します。
I’m sorry, but I have a different opinion.と、字面はきつくても、穏やかな口調で丁寧に話すので問題はありません。
上司は自分と違う考えや異なる発想を常に求めていますから、興味を持って耳を傾け、それが業務や会社にとって役立つ意見であれば、積極的に評価してくれます。What do you think we should do, then?(ではわれわれはどうすべきだと思う?)と、さらに部下の意見を求めることもよくあります。
日本人はまだまだ昭和型の上司も多く、自分の意志を押し付ける方も多いのではないでしょうか。コロナで日本が驚くほどに、東南アジアはじめ多くの発展途上国でDXが加速しました。DXのような新しいビジネスは、若手の才能を活かすことが大切だからこそ、上述の意見で、部下の意見を上司から積極的にオープンに組みとるコミュニケーションこそが、グローバルビジネスではますます大切となります。
依頼の表現を使い分ける
上司と部下の間では、お願いや頼みごとのやりとりも頻繁です。人に何かを頼むとき、私は部下に対しても、Will you ~? やCan you ~?は使いません。より丁寧な Would you ~? やCould you ~?を使います。
さらに丁寧なCould you possibly ~?という言い方もあります。主に外部に対して、Could you possibly send us an estimate ?(見積もりをお送りいただくことは可能でしょうか?)のように使いますが、頼みごとの中身によっては、親しい友人や会社の仲間に対しても使用することがあります。
ダイバーシティーの真ん中に身を置いてみて、私は Assume the best という言葉が、とても大事に思えてきました。いろいろな人がいますが、一人ひとりにその人の考えがあり、それぞれがベストを尽くしているに違いないという意味です。そう思えるから、私たちは互いに寛容でいられますし、それが「人に伝える英語」の原点だと思います。
コロナ後、日本でも注目される「ウェルビーイング」への関心は私たちの想像を超えてグローバル環境では広がっています。最高の自分でいられる仕事環境での仕事を外国人たちは今さらに希望していることもあり、一人一人の考えを理解したうえでのコミュニケーションが求められるのです。
使える表現例
上司から部下へ
I’m always impressed with your work .
あなたの仕事にはいつも感服しています。
部下から上司
Honestly speaking, I can’t agree with your plans.
率直に申し上げて、あなたの計画には賛同できません。
丁寧な依頼
I just wondered if you could spare a minute.
少しお時間を頂けると助かります。
つながりを築く・知らない人に声を掛ける
パーティーやイベントは、仕事以外の人脈を広げる絶好の機会です。知った顔がまったくないときは心細いですが、ションボリしていては何も始まりません。勇気を出して自分から、周りの人に声を掛けましょう。最初のひと言は、Are you enjoying yourself? でも、Having fun? でも、It’s hot, isn’t it? でも、何でもいいのです。
話し掛けてみて、相手の英語がよくわからなかったら、ここでもまた質問作戦です。「ステキに日焼けしていらっしゃいますね。何かスポーツでも?」「犬を飼っているのですか?写真が見たいなあ」。自分の話をするのが嫌な人は、パーティーにはまず来ていませんから、自分がしゃべれないなら、相手にしゃべってもらいましょう。
コロナとの共存する今、パーティーやイベントにも参加できるようになってきた方も多いのではないでしょうか。コロナ禍でリモートでの交流を強いられていたからこそ、リアルでの出会いをより大切にする時代でもありますので、コロナ禍で始めた趣味や始まった新しい生活なども楽しくお話しすることはおススメです。
楽しさを広げる笑顔の効果
英語があまりできなかった頃、話し相手がいないパーティーで、私は何度もさみしい思いをしました。それでも頑張って実行したのが、とにかく笑顔をキープすることです。笑顔の人がそばにいて、不快に思う人はいません。しかも自分が明るく陽気だと、ミラー効果で周りにも笑顔が広がっていくのです。
そこで思い出すのはジム・キャリー主演の映画『マスク』(1994)です。気弱な男がマスクを着けると、人格がガラリと変わるのです。It’s party time! というご機嫌なセリフが非常に印象的でした。
メラビアンの法則によると、コミュニケーションで重視されるのは、言葉よりも、圧倒的に非言語情報だといいます。話の内容を中心とする言語情報の重要度は7%ほどにすぎず、聴覚情報が38%、視覚情報が55%という割合で、人の印象が決まるというのです。映画の主人公がマスクで変身したように、聴覚情報・視覚情報のバージョンアップも、よりよいコミュニケーションには必須なのではないかと思います。
招待への感謝を伝える
あなたも見えないマスクを着けて、変身してみましょう。ビュッフェコーナーに、おいしそうな料理が出ていますよ。一つつまんだら、オーバーなくらいに感情を込め、満面の笑みでILOVE this! と叫びましょう。It’s really good!、I’ve never eaten this kind of great food before!、Why don’t you try this one? It’s so tasty ! いくらでも言葉が出てきます。あなたの楽しそうな様子を見て、みんなも愉快な気分になってきます。
と、私はそうやって、数々のよき出会いに恵まれてきました。プライベートな集まりで偶然話をした人が、大手グローバル企業のCEOや有名な投資家だったと、後で知って驚いたこともありました。
パーティーの終わりに、招いてくれた方へのあいさつはお忘れなく。 Thank you VERY much for inviting me today. I REALLY enjoyed it. 心からの笑顔でそう伝えれば、きっとまた声を掛けてくれるでしょう。
使える表現例
声を掛ける
You seem to be having a lot of fun!
とても楽しんでいらっしゃるようですね!
笑顔で言う
This is an amazing party!
素晴らしいパーティーですね!
感謝を伝える
Thank you for inviting me to a wonderful event like this.
このような素晴らしいイベントにご招待いただき、ありがとうございます。
岡田 兵吾さんの著作
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
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