「やっぱり、欧米で働きたい!」コネクションゼロからカナダで現地就職したTomaさんインタビュー

海外で働くための様々な方法についてお伝えしているこの連載。今回は、「それでもやっぱり、欧米で働きたい!」という人のために、現地での勤務経験も、コネクションもなにもない状態から、28歳でカナダで現地就職して、30歳で永住権を取ったToma君のインタビューをお送りします。

なんで欧米で働きたいと思ったんですか?

大学時代から海外で働く事に興味を持ち、イギリスやフィリピンに英語留学にいったり、カンボジアでインターンを体験したりしました。就職先の建設会社では外国人のスタッフと一緒に仕事をしたり、いろいろな国に出張したり、東南アジアに赴任したりしました。

20代で海外旅行・留学・出張・赴任を一通り体験し、次に何をするかを考えたときに、自分で国を選んで、自分の力で仕事を探し、移住をするというチャレンジをしてみたくなったんです。

そして、アジアにはたくさん行ったので、次のターゲットは、欧米先進国だったんです。「欧米に移住したい!」という人は非常に多いのですが、その夢を叶えるのは非常に困難です。それは、労働ビザが簡単にはとれないからです。

ビザとは、外国に入国する際に必要となる身元証明書のようなもの。 国によって大きく制度が異なるのですが、大きく分けて「観光ビザ」= その国に滞在していいよ。でも働いちゃダメ! と「労働ビザ」 = その国で働いていいよ! の2種類があります。

観光ビザに関しては、日本は世界の中でもかなり信頼がある国なので、ほとんどの国で観光ビザを取らなくても2週間から1か月くらい滞在することができます。カンボジアやインド、ブラジルなど、観光ビザが必要な国でも、空港でお金を払ったり、大使館で必要書類を提出するだけで簡単にビザがとれるので、日本人であれば世界のほとんどの国に簡単に入国ができます。

これに対して、労働ビザを取るのは一筋縄ではいきません。特に、アメリカやイギリスなど、世界中の人たちが移住したいと考えている国は、来たい人を全て受け入れていたら、そのうち外国人だらけになってしまいます。そこで、自分の国に必要な人材を選別して、労働ビザを発給しているのです。

欧米就職のためにToma君はどんな戦略を練ったんでしょう?

戦略ですか・・・まず、アメリカやイギリスはビザの要件が厳しくて絶望的でした。以前は比較的簡単だったとされるオーストラリアもかなり厳しくなっている中、英語圏欧米先進国で一番ハードルが低かったのが、カナダだったんです。

しかも、カナダは1年間現地で専職として働けば永住権までとれるらしい。これは、チャレンジしてみるしかない!って思ったんです。

カナダの大学には、外国人がIT等の専門課程を学ぶと、在学期間に応じた就労ビザをもらえるというコースがあるんです。お値段も15000カナダドル(当時のレートで120万円くらい)と安くはないけど、手の届かない値段ではありませんでした。

私は、建築会社で自社ウェブサイトの管理もやっていたので、知識がゼロなわけではない。だったら、1年間かけてITの知識を身につけ、1年間働く。また、年齢的にワーキングホリデーにも申し込めたので、ワーホリビザでもう1年働く事もできる。この2年間で就労期間を稼げば、永住権をとれるんじゃないかと思ったのです。

なるほど。なかなか戦略的ですね。大学の授業はどうでしたか?

ここまでは戦略的だったんですけど、その後、甘さが露呈しました。まず、大学の授業はウェブ作成だけではなく、グラフィックデザインからWebマーケティング、動画作成まで、広く浅くいろんな事を学ぶもので、専門性は高くありませんでした。このままではとても就職にまで漕ぎ着けることができないと考え、むしろ授業時間以外の自習に全力を注いだというのが実情でした。

そして卒業後、1年間の就労ビザを手に入れることができました。学校の最後の1か月はインターンで、現場で働く体験をするのですが、このインターン先を学校が斡旋してくれるわけではありません。自分で、応募書類を数十社に送り、タダで働かせてくれる会社を探さなくてはならないのです。

無給のインターンですらこんなに難しいのか・・・日本の新卒就活って、天国だなと思いながらも、なんとかインターン先を見つけ、働かせてもらう。そして、1か月のインターンの後その会社で正式に有給で採用していただく事ができました。これは、本当にラッキーでした。

それはレアケースなんですか?

はい。同じクラスのメンバーは、カナダ人も外国人も全て含めて、卒業直後に就職先が見つかったのはわずか数名でした。英語ネイティブの人でも就職先が決まらないのに、自分が決まったのは本当にラッキーだったと思います。

ただ、残念ながら、順風満帆にはいきませんでした。デザイン会社のウェブ制作部門で、英語環境の職場。テレビCMや街中で看板を見かけるクライアントのウェブサイト作成に関わるのは、非常にエキサイティングでした。しかし、コロナウィルスがそんな日々に終止符を打ってきたんです。

ある日オフィスのメンバーが集められ、CEOから話がありました。内容は、「経営不振につき、このオフィスをクローズする。従って、このオフィスに勤務する従業員は全員解雇となる」です。「これが、欧米か…」と思いましたね。社内の評価が悪くなくても、オフィスごと容赦なくなくなる。

とりあえず就職活動をするも、コロナ禍が始まったばかりの先行き不透明な時に、新規採用はほとんどありません。書類を出せども出せども無視される日々。だんだんやる気がなくなり、ニート期間は半年になりました。

それは、悲惨でしたね・・・その間、生活費はどうしたんですか?

実は、カナダは雇用保険が充実しており、自分のような永住権がない外国人でも条件を満たせば一定期間雇用保険を受け取ることができるのです。これによって、家賃分くらいは確保することができました。

また、解雇になった会社からちょっと仕事をもらってパートタイムとして働いたり、日本の会社から仕事をもらったりして、小さな仕事でちょっとだけ稼ぐこともできていました。

あまった時間は、自分で勉強をしていたのですが、コロナ禍で外に出られず、定職もない中で、長期間家に引きこもるのは精神的に厳しかったです。

さらにおそろしいことに、コロナ禍によりワーキングホリデーが一時的に停止になりました。学校卒業でもらった1年間のビザが切れてもワーキングホリデービザで滞在しようとしていたあてが外れたのです。

「これは、もうだめかも・・・」ということで、絶望的になったんですが「とりあえず、ビザが残っているうちは働こう」ということで、職種も業界も関係なく、とにかく応募をしてみたところ、とある会社で「ウェブ(と雑用)担当」というポジションに当たったのです。

犬も歩けば棒に当たる。最後まであがいていたら、天は蜘蛛の糸を垂らしてくれました。収入は以前より下がりましたが、そんなことをいっている状況ではありません。ビザも職場にサポートしてもらって更新し、一生懸命働かせてもらいました。

その後、カナダでの就労期間が1年間を越えたため永住権の申請条件を満たすことができ、申請から数ヶ月後、ついにカナダ永住権を取得しました!

Toma君のしくじり先生

移住前の自分に伝えられることがあったら、何を伝えますか?

「移住前に、スキルを身につけろ!」です。「少し日本で仕事の経験があるし、学校も行くから大丈夫だろ」と甘く見ていたのですが、それは大間違いでした。

ITエンジニアとして海外で食っていくのであれば、最低でも1年、日本でITエンジニアとして業務経験を積んでおくべきでした。

住むところと、業界、その2つをいっぺんに変えるのは無謀でした。「片方ずつ変えろ!ワーキングホリデーの年齢制限が迫っているからといって急いでも、どうせコロナ禍でワーキングホリデーなくなるぞ!」と伝えたいですね。

当たり前ですけど、就職ってのは自分のスキルを使って会社の業績に貢献すること。その対価として給料とかビザのサポートがもらえるわけです。自分が提供できるスキルが少ない状態では、貢献できることが少ないので、こうなるのは当然です。これを読んでる皆さん!ちゃんと学んでください!業務経験積んでください!

最後に、今後の予定はありますか?

コロナ禍もあけて、いろいろ元に戻りつつあるので、あらためてITエンジニアとしてキャリアを積みたいと考えています。また、将来的には日本とカナダ、2つの国でのデュアルライフが実現できれば最高だと思います!

Tomaくんの今後に興味がある方は、twitterやblogをどうぞ!

twitter : https://twitter.com/toma_wari
blog : https://www.tomawari.com/

こんな感じで、外で働くのは山有り谷有り。

それを、楽しみながら乗り越えて行くことができる人にはおすすめです!次回は、今度は欧州で、もっとダイナミックに楽しんで働いている人のインタビューをお送りします!

森山たつを
森山たつを

(株)スパイスアップ・アカデミア 社長。早稲田大学理工学部卒業後、日本オラクル、日産自動車などに勤務。これらの経験を元に世界7カ国で就活を行い全ての国で内定をとり、その内容を人に伝える「海外就職研究家」として独立。著書4冊(電子書籍は20冊以上)。現在は、大学生・高校生・社会人が海外ビジネス体験できるインターン、 サムライカレーSDGs を運営。 https://twitter.com/mota2008

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