海外での現地採用を増やす日本の企業でも増えています。停滞する日本経済と発展するアジア経済を見据えて、待遇がよくなりつつあるアジアでの現地採用について解説します。
前回 、日本国内で、海外の人とチームを組んで仕事をする、外国人相手のビジネスに関わる仕事をする方法についてお伝えしました。
コロナ禍で、オンラインビジネスが一気に増え、日本国内で海外ビジネスをするチャンスが増えており、居住地はもはや大きな問題ではなくなってきました。
しかし、著名な経営コンサルタントの大前研一さんはこんなことを言っています。
人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える、この三つの要素でしか人間は変わらない。もっとも無意味なのは、「決意を新たにする」ことだ。かつて決意して何か変わっただろうか。行動を具体的に変えない限り、決意だけでは何も変わらない。
私も、20代中盤まではずっと東京に住んでいましたが、そこから、神奈川県厚木市→住所不定無職(仕事を辞めて1年間世界一周旅行)→東京→フィリピン・セブ→カンボジア・プノンペンを経て、現在は、青森とプノンペンと東京の3拠点生活をしています。
特に住む国が変わると、日々新しいことに触れる生活になり、知識や経験が増え、良くも悪くも自分がどんどん変化していることを感じます。
そこで、今回は、途上国に住んで働く方法についてお伝えします。
リッチだけど、絶滅危惧種となりつつある駐在員
「日本人が海外で働く」というシチュエーションで真っ先に思いつくのが「駐在員」会社員が、会社の辞令で、海外に転勤になるというパターンです。
駐在員のいいところは、非常に待遇が手厚いということです。特に途上国に駐在となると、最高級コンドミニアム、運転手付き社用車、子供のインターナショナルスクールなどが会社のお金で支給される上に、駐在手当などがつき、実質的な収入は国内で働いているときの2~3倍になります。
基本給が高い商社などでは「途上国に5年駐在すれば、家が建つ」などとも言われています。
駐在員として、海外で働いてみたい!と思った人がまずやるべきことは、会社選びです。
当然ですが、海外に支社があるような会社でなければ、駐在のチャンスはありません。また、会社によって積極的に駐在員を置く会社もあれば、基本現地に任せる方針の会社もあります。
また、いまだにアメリカなどの先進国に駐在員を置く会社もありますし、途上国以外は現地に任せる方針の会社もあります。それぞれの会社の方針は、外部からうかがい知ることは難しいのですが、SNSでその会社の駐在員を見つけてウォッチしたり、実際働いている人に話を聞くことによってそれなりに把握することができます。
どんな部門でどんな仕事をしていれば、どんな国に駐在できるのか、ある程度あたりをつけて就職することをおすすめします。
ただ、コロナ禍で駐在員の数は減っています。多くの会社が「駐在員いらなくね?」って気付いてしまったからです。
海外では多くの都市でロックダウンが行われ、出社ができなくなりました。また、工場は稼働していても必要最小限の人員だけ出社して、それ以外は在宅勤務という状況も多くありました。
そうすると、タイに駐在している社員が、バンコクの自宅で工場の管理をし、それでも問題ないことがバレてしまったわけです。「だったら、高い家に住まわせて、給料上乗せして、海外に勤務させなくてもよくね?」って話になってしまったのです。
待遇がよくなりつつある現地採用
日本本社に籍を置き、会社命令で海外赴任する駐在員に対し、自分の意思で渡航し、現地の企業に就職する「現地採用」という働き方があります。
現地の企業といっても、例えばバンコクで就職するなら、タイ企業だけではなく、在バンコクの日本企業に就職することもできます。例えば、「トヨタ タイランド」に就職するという形です。
この現地採用のメリットは、自分で行く国も選べるし、就職する会社も選べるし、いつまで滞在するかも選べることです。(クビにならなければ)デメリットは、駐在員と比較して給料が安いこと。まあ、駐在員の待遇が(普通に日本に住んで日本で働くことに比べても)破格に良いというのもありますが。
給料に関しては、「現地の人と比べたら破格の給料だから、良い生活ができる」レベルの場合から「日本人が、日本で当たり前の生活レベルを維持するには厳しい」レベルの場合まで千差万別。仕事内容も、駐在員の小間使いみたいな仕事から、現地責任者みたいな仕事まで様々。どこで働くにもそうなのですが、仕事選びが重要になります。
この現地採用、コロナ禍が明けた今、少し変化が生じています。というのも、日本企業が駐在員を減らしているものの、日本本社には英語が苦手で、日本人としかコミュニケーションをとれない人がたくさんいます。そんな会社では、現地に日本人がいないと、不安に思う人がたくさんいるのです。
そこで、駐在員をなくす代わりに、現地採用を増やし、駐在員がやっていたような責任ある仕事を任せるような会社が増えているのです。その分、給料も上がっています。
現地採用で海外で仕事をしたい!となったら、仕事探しからスタートする必要があります。これも、東南アジアの国々には、日系の人材会社があり、ここで日本人求人がでています。
Webでも検索できますが、多くの求人は人材会社に登録して探すことになります。今は、オンライン面接も増えているので、日本国内で就活を進めることもできますが、やはり現地に行き、現地の生活環境を確認しながら就活するのが王道です。
現地のいろいろな人材会社と繋がりがあり、現地での生活のアドバイスもしてくれる、グローバル人材塾 という会社もあるので、ぜひ相談してみてください。
日本と逆転する給料
私はこのような、現地採用の仕事の探し方や現地での生活などをまとめた「セカ就!?世界で就職するという選択肢」という本を2013年に書いています。
この本を執筆したときには、東南アジアの現地採用の給料は日本よりも安かったですが、物価も日本より安かったので、生活レベルは高くなるという状況でした。しかし、2022年の今、停滞する日本経済と発展するアジア経済、そして円安により、これが逆転しつつあります。
シンガポールや香港といった、アジアの先進国では、給料も物価も日本より遙かに高くなっています。そして、経営幹部レベルの給料だと中国韓国はもちろん、フィリピン、インドネシア、タイよりも給料が安くなっています。
ダイヤモンドオンライン 日本企業の経営幹部の給料が「タイ・フィリピン以下」の衝撃、日本は出世するだけ損?
特に、シンガポールでは給料が高騰しており、飲食店のスタッフでも35~45万円くらいの給料をもらうことができ、店長レベルだと80万円くらいになっています。単純に12をかけても年収1000万円近いです。(しかも所得税が安いので、日本より手取りは多い)
実は、この恩恵を日本人の若者も受けることができます。
というのも、現在シンガポールのワーキングホリデーのビザが取りやすくなっており、日本の大学生および25歳くらいまでの大卒者であれば比較的容易に6か月働く事ができるビザを取ることができるのです。
このビザを取り、月給35~45万円をもらって現地の飲食店で働きながら、外国人相手のビジネスを学ぶことができるわけです。
このレベルの給料であれば、半年間休学しても、金銭的なメリットは多いにあります。さらに、海外で働いたという実績を作る事もできるため、その後のキャリアに活かすこともできます。(飲食業に就職するのにはもちろん役立ちますが、それ以外の会社に就職する際にも非常に強い「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」になります。)
もしこのような経験を積みたいという人がいれば、私たちも国際ビジネスを学んでいただくプログラムを行っておりますので、こちらのフォームからお問い合わせください。
https://forms.gle/wF863yJwJKtsFboc7
このように、海外で働く場合もいろいろな選択肢があり、その状況はどんどん変わっています。間違いなく、これからアジアの新興国の経済成長と共に、アジアで働く事のメリットが増え、海外で働いたという経験の価値が上がります。
海外で働くという選択肢も、ぜひ考えてみてください。