英語の「動詞」③:重要な違いを表す「動詞の形」を見極める5問【大竹保幹の英文法パラダイス】

現役の高校英語教師・大竹保幹さんの連載「英文法パラダイス」。つまずきがちなポイントや、苦手な人が多いところを、分かりやすく解説します。前回に引き続き、第6回のトピックも「動詞」。「動詞の形」を意識しながらクイズに挑戦し、英文法が楽しくなるパラダイスを目指しましょう。

パラダイス行き切符を手に入れる問題

この連載も今回で第6回です。英文法パラダイスに入り込んでから半年が経つわけですが、文法には少しは自信が付きましたか?

「解けば解くほど、自分の文法力の弱さを知ってしまうようで怖い」なんてこともあるかもしれません。しかし、弱点と向き合うことは英文法を極めるためには必要不可欠です。引き続き問題と向き合っていきましょう。

【問題】

次の (1) ~ (5) の英文について、正しいかどうかを判断してください。
正しい:○   間違っている:×  ちょっと怪しい:△

(1)

I finished my homework, and I can go out with you.

(2)

When I came home, my father cooked dinner for me.

(3)

Naoto once lost the shoes his girlfriend gave to him.

(4)

Somebody! Help me! I am going to fall!

(5)

If Santa Claus comes to my house, I will be really happy.

今回も「動詞の使い方」がテーマです。英語は動詞の形をさまざまに変化させることで、その出来事がどのように起こったのかを描写します。

日本語では「~した」と表すことも、英語では過去形と完了形という2つの形を使い分けなくてはいけません。英語学習の序盤で習うはずの文法ですが、いつ使ったらいいのかを身に付けるまでには結構時間がかかります。

似たような意味を表すけれど、大切な違いがある。今回はそんな動詞の形を確認していきましょう。

解答と解説

(1)

【答え:△】
I finished my homework, and I can go out with you.
  ↓
I have finished my homework, and I can go out with you.
宿題が終わったし、一緒に外へ行けるよ。

「宿題が終わった。だから外出できる」――日本語だけを見れば、finishを過去形にして、go outにはcan(できる)を付け加えれば英作文が完成しそうです。

しかし、英語の過去形が表すのは現在とは切り離された過去の出来事。「今」に話をつなげるには別の形を使うことになります。そう、現在完了形です。

I have seen a TV personality at Tokyo station!
東京駅で有名人を見たんだよ!

なんだかとても興奮している様子がうかがえます。一体誰を見かけたのか気になるところですが、この「have + 過去分詞形」で表される現在完了形は「いつ」の出来事なのかは一切問題にしていません。むしろここで伝えたいのは、「今」の興奮なのです。

I have just seen a TV personality at Tokyo station!
東京駅で有名人をちょうど見たところなんだよ!

I have seen a TV personality at Tokyo station once!
東京駅で有名人を一度見たことがあるんだってば!

上の2例のように例のように、ある程度「今」に近いことを強調するならjust(ちょうど)を加えることもありますし、「そういう経験を持っているんだ」と言いたいならonce(一度)などの回数表現と一緒に使うこともありますよね。ただ、どちらにしてもいつのことなのかははっきりとは述べていません。

❖「いつ」を伝える過去形、「含み」を持つ現在完了形

一方、過去形は結構冷静で、過去の出来事を淡々と述べるときに使います。「いつのことなのか」を伝える形なので、基本的には過去を表す語句と一緒に使います。

Last week, I lost my key.
先週、鍵を失くしてしまったんです。

I have lost my key.
鍵を失くしてしまったんです。(だから今は・・・)

過去形lostを使っている方は、先週の鍵紛失事件を過去のこととして述べています。いまだに見つかっていない可能性もありますが、そこは問題ではありません。「先週こんなことがあったんだ」という事実をただ伝えているからです。

しかし、現在完了形have lostでは意味合いが変わります。「鍵を失くした」という過去の出来事が今に影響を与えている。含みとしては「まだ見つかってないから、今は家に入れない」という感じです。この、相手に行間を想像させる力が現在完了形の最大の魅力とも言えます。

(1)の英文では、宿題を終わらせたことが「今遊びに行ける」という状況につながっているので、finishedではなくhave finishedに変えるとより自然な英文になるというわけです。冒頭の解答をもう一度記載しますので、再確認してみてくださいね。

解答(再掲)
【答え:△】
I finished my homework, and I can go out with you.
  ↓
I have finished my homework, and I can go out with you.
宿題が終わったし、一緒に外へ行けるよ。


(2)

【答え:〇】
When I came home, my father cooked dinner for me.

日本語訳を出す前にここで問題です。この英文の「私」が帰宅したとき、お父さんは晩御飯を作ってくれていたでしょうか?――正解は「まだ作っていなかった」です。

では、作り途中だったことを表すにはどのような形にするのがいいでしょうか?もちろん、そのときは進行形を使うことになります。

When I came home, my father cooked dinner for me.
私が帰宅したときに父は晩御飯を作った。

When I came home, my father was cooking dinner for me.
私が帰宅したとき、父は晩御飯を作っているところだった。

+ V-ing(~しているところだ)で表す進行形はその名の通り、ある動作が行われている様子を表す形ですが、それは言い換えれば「ある動作がまだ続いている」、あるいは「まだ完了していない」ことを意味するということです。

❖継続中か完了か、形で違いが分かる

Saori was reading from 8 pm to 9 pm.
サオリは(少なくとも)午後8時から9時の間は本を読んでいた。

Saori read from 8 pm to 9 pm.
サオリは午後8時から9時まで本を読んだ。

進行形(was reading)が使われている方は読書がその時間で完結していないことを匂わせているので、いつ読み始めたのか、いつ読み終えたのかまでは分かりません。一方で単純な過去形(read)は動作が完了したことを表すので、サオリさんの読書時間は1時間だと言えます。

なんだかアリバイを証明しているような文ですが、動詞の形一つでこんな違いを表せるなんて面白いですね。


(3)

【答え:×】
Naoto once lost the shoes his girlfriend gave to him.
  ↓
Naoto once lost the shoes his girlfriend had given to him.
ナオトは彼女からもらった靴をかつて失くしたことがある。

靴を失くすってどういう状況で起こるのかはさておき、ここで大切なのは「どちらが先に起こったか」です。当たり前のことですが、「靴を失くしたこと」と「靴をもらったこと」ではもらった方が古い出来事ですよね。

❖過去のある時点よりさらに前:過去完了形

英語では過去の出来事を過去形で表すのですが、それよりももっと前に起こったことなのだとしっかり伝える必要があるときは過去完了形(had + 過去分詞形)を使わなくてはなりません。

The last train had left when I arrived at the station.
駅に着いたときにはもう終電は出てしまっていた。

The last train left when I arrived at the station.
駅に着いたときに終電が出てしまった。

大人なら一度は経験する(であろう)終電逃しですが、自分が駅に「到着した(arrived)」という過去の時点を基準にして、電車の出発がそれよりも前に起こったことかどうかは動詞の形で表すことになります。

had leftなら到着よりも前のことなので、すっかり真っ暗になった駅のホームにたたずむ様子。leftであれば、駅に着いたときに走り去る終電をただ茫然と見届ける感じでしょうか。どちらにしてもこのあとへこむことになりますが、この違いは英文法的には非常に大切です。

❖afterやbeforeを使った言い換え

I arrived at the station after the last train left.
終電が出たあとになって駅に着いた。

過去完了形は出来事の前後関係を間違いなく伝えるための形なので、上記の英文のようにafter(~の後)や、before(~の前)などの接続詞があるときは無理に使う必要はありません。いつかは使いこなして欲しいですが、慣れるまではこういった言い換えをするのがおすすめです。

本題の(3)の英文ですが、彼女が靴をプレゼントしたほうが明らかに昔の出来事なので、had givenにすれば英語は完璧です。ただし、彼女からもらったものを失くさないようにすることのほうがもっともっと大切なのは言うまでもありません。

解答(再掲)
【答え:×】
Naoto once lost the shoes his girlfriend gave to him.
  ↓
Naoto once lost the shoes his girlfriend had given to him.
ナオトは彼女からもらった靴をかつて失くしたことがある。


(4)

【答え:〇】
Somebody! Help me! I am going to fall!

だいぶ切迫した状況です。「誰か助けて!落っこちちゃうよ!」と助けを求めていますね。できればこんな場面には出くわしたくないものですが、もしものときに「未来の表し方」で迷わないようにしておきましょう。

一般的に、「その場でやると決めたこと」にはwill「あらかじめやると決めていたこと」にはbe going toを使うという使い分けがあることはみなさんご存知の通りです。

ではここで、買い物を頼まれた場面を想像して、次の英文を見てください。

I’ll get it for you.
ぼくが買ってきてあげるよ。

I’m going to get it for you.
ぼくが買いに行くつもりだったんだけど。

willが使われている文はお使いを頼まれたことを受けて、「よし、行くぞ」と決断している様子を表しています。それに対して、be going toなら頼まれる前から自分が買いに行ってあげると決めていたことになります。

このように、前から決まっていたことかどうかがこの二つの表現の違いの基本です。

❖be going toで「避けられない状況」を示す

改めて、この(4)の英文の状況を確認していきましょう。

こんな危機的な場面を前もって想定していなかったからといって I will fall! と言えば、「今から落ちまーす!」というよく分からない宣言となってしまいます。こんなセリフはバンジージャンプのときくらいしか使えそうにありません。では、I am going to fall! だとどんな意味になるのでしょうか。もちろん、「前もって落ちることを決めていたんです!」などではなく、「このままだと落ちちゃうよ!」です。

ここで押さえておきたいのは、be going toの「あらかじめ決められている」という意味が、ある種の「避けられない状況」にも用いられることがあるということなのです。

If you don’t study hard, you are going to fail the exam.
頑張って勉強しないと試験に落ちることになるぞ。

If you don’t study hard, you will fail the exam.
頑張って勉強しないと試験に落ちちゃうよ。

be going toが表す「避けられない状況」は、ifなどの条件が伴うことでやや脅しめいた響きを持つことにもなります。上の二つはどちらも言わんとしていることは同じなのですが、willの方が一般的な可能性として話をしている点で、注意の度合いが違いますね。


(5)

【答え:〇】
If Santa Claus comes to my house, I will be really happy.

現実世界であり得ないようなことにはifと助動詞の過去形からなる仮定法を使う。これは英文法の大切なルールです。だから、(5)の英文を「×」だと判断する人の気持ちは十分に分かるのですが、もしそちらを選んだとすれば、その方はちょっと大人になり過ぎたのかもしれません。

❖「あり得ないこと」だと思わないなら・・・

If Santa Claus came to my house, I would be really happy.
サンタがうちに来るとしたら、そりゃすごく嬉しいとは思うでしょうけどね。

If Santa Claus comes to my house, I will be really happy.
もしサンタさんがうちに来てくれたら、あたしとってもうれしい!

世の中を知り過ぎた大人たちは上の、まだ純粋な心を持つ子どもたちは下のセリフを言うことになるでしょう。

サンタさんが本当にいるかどうかの議論はさておき、仮定法を使うかどうかは話し手が物事をどのように捉えているかで決まります。本当に空を飛べると思っているなら I can fly. と言ったっていいじゃないですか。

言葉は心を映し出す鏡のようなものです。英文法だってその人の心を映し出すためにとても柔軟なところがあるんです。


まとめ

動詞はその出来事が「いつ起こった」のかを表すだけでなく、「すでに完結している」のか、「まだ続いている」のか、などさまざまな様子を描写する力があります。

日本語の「~した」を聞いたとき、これは英語では過去形かな、それとも完了形かななど考えてみるのもいいでしょう。日々の努力で少しずつ使い分けを身に付けていきましょうね。

大竹保幹
大竹保幹

明治大学文学部文学科卒業。神奈川県立多摩高等学校教諭。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。著書に『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』『まんがでわかる「have」の本』(いずれもアルク)『APPLAUSE LOGIC AND EXPRESSION Ⅰ~Ⅲ』(開隆堂出版)など。


大竹保幹さんの本

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』では、「仮定法」をはじめとする、子どもが抱きそうな疑問・質問に対して、ある程度答えられるように英文法の基礎を学ぶことができます。英語を学ぶ面白さに触れられる雑学的な小話も随所にあり、楽しみながら英文法を復習できます。

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