mutated geneってどういう意味?遺伝子治療で少年の難聴が改善【ニュース英語】

海外メディアが報じたニュースから、英語表現を学びましょう。最先端の遺伝子治療が、生まれつき重い難聴だった男の子の世界に「音」をもたらしました。さらに、将来的には、お腹の中にいる赤ちゃんに治療を施す未来さえも訪れるかもしれません。

少年の耳に「音」がやって来た

時事英語専門のオンライン辞書サイト「RNN時事英語辞典」編集長の廣です。

今回は、画期的な遺伝子治療によって、難聴の一種が回復したというニュースを英語で見ていきましょう。「耳」に関する言葉がたくさん登場します。

新しい治療の臨床試験はいくつかの国で行われてきましたが、アメリカの小児病院での事例を紹介します。

An 11-year-old boy is able to hear for the very first time in his life thanks to a groundbreaking gene therapy procedure, according to the Children's Hospital of Philadelphia (CHOP).

The boy -- who was born profoundly deaf in both ears due to hereditary hearing loss -- was the first person to receive the experimental gene therapy treatment, CHOP said.

フィラデルフィア小児病院(CHOP)によると、画期的な遺伝子治療の結果、ある11歳の少年は、まさに生まれて初めて音が聴こえるようになった。

遺伝的な聴覚障害によって両耳が極めて重度の難聴であったこの少年は、実験的な遺伝子治療を受けた最初の患者であると、CHOPはしている。

記事引用元:NBC Philadelphia

先天性の重度難聴であった少年は、この治療を受けたことで、父親の声や通り過ぎる車の音などが初めて聴こえるようになったとのこと。画期的な治療法が登場しました。

キーワード①

  • gene therapy:遺伝子治療
  • deaf:聴覚障害の、耳が聞こえない
  • hereditary hearing loss:遺伝性難聴

働きかけるべき変異遺伝子

この治療法は、オトフェリンと呼ばれるタンパク質を作る遺伝子の異常で引き起こされる難聴に対するもので、先天性難聴のうちこれが原因となるのは1〜8%といいます。

The mutated otoferlin gene destroys a protein in the inner ear’s hair cells necessary to transmit sound to the brain. With many of the other mutations that cause deafness, hair cells die during infancy or even at the fetal stage. But with otoferlin deafness, hair cells can survive for years, allowing time for the defective gene to be replaced with gene therapy.

変異したオトフェリン遺伝子は、音を脳に伝達するのに必要な、内耳の有毛細胞のタンパク質を破壊する。難聴の原因となる他の多くの遺伝子変異では、乳児期または胎児期に有毛細胞が死滅する。しかし、オトフェリンによる難聴の場合、数年間有毛細胞は生き続けるため、遺伝子治療で不完全な遺伝子を置き換えるための時間を稼ぐことができる。

記事引用元:The New York Times

キーワード②

  • mutated gene:変異した遺伝子
  • inner ear:内耳
  • mutation:突然変異
  • deafness:難聴

聞こえる奇跡をもたらした手術とは

この遺伝子治療は、具体的にどのような内容なのでしょうか。

On October 4, 2023, he underwent a surgical procedure that involved partly lifting his eardrum and then injecting a harmless virus, which had been modified to transport working copies of the otoferlin gene, into the internal fluid of his cochlea. As a result, the hair cells began making the missing protein and functioning properly.

2023年10月4日、鼓膜の一部を持ち上げ、正常に機能するオトフェリン遺伝子のコピーを運ぶように改変された無害なウイルスを、蝸牛殻(かぎゅうかく)の内液に注入する手術を彼は受けた。その結果、有毛細胞が欠乏していたタンパク質の生成を始め、正常に機能するようになった。

記事引用元:AFP

欠乏していたタンパク質とは、オトフェリンのことですね。病気の原因である遺伝子を突き止め、さらに正常に機能する遺伝子を注入して、症状を改善したということになります。これまで難聴の改善策は、補聴器や人工内耳を用いることがほとんどでした。

キーワード③

  • surgical procedure:外科手術
  • eardrum:鼓膜
  • cochlea:蝸牛殻

“生まれる前から治療”という期待

この治療法が確立されれば、胎児のうちから聴力を検査して治療してしまうという未来を想像する研究者もいるようです。

As more treatments come online, the hope is that if a newborn fails a routine hearing test at birth, it will then be tested for possible genetic causes such as OTOF and can be treated immediately. Some deafness researchers dream of eventually treating inherited deafness in utero if broad genetic testing of a fetus eventually becomes part of prenatal care.

より多くの治療法が利用可能となるにつれ、新生児が出生時の定期聴力検査で異常が見つかった場合、OTOFなど遺伝的要因について検査して、速やかに治療を始められる。難聴研究者の何人かは、胎児への幅広い遺伝子検査が胎児検診の一部となったら、最終的に胎内で遺伝性難聴を治療できることを期待している。

※OTOF:オトフェリンのこと

記事引用元:Science

キーワード④

  • newborn:新生児
  • inherited deafness:遺伝性の難聴
  • fetus:胎児
  • prenatal care:胎児検診

まとめ

いかがでしたでしょうか。遺伝子異常が原因となる難聴は150程度あるといわれているため、今回のケース以外の症例の治療にも道を開くかもしれません。前々回も医療の話題でしたが、技術の発展スピードは凄まじいですね。

次回もお楽しみに。

EJ
廣川 亘(ひろかわ わたる)

RNN時事英語辞典」編集長。1998年に同サイトを立ち上げる。RNNは「Rapid News Network」の頭文字。最新の英文ニュースを常にウォッチし、多用されるキーワードや現代用語、専門用語を多数収録する。

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