SVOで考えると解けないrunの用法を問う問題【難問クイズで学ぶ文法知識⑤】

Twitterで話題になった北村一真さん作成の英語クイズで文法知識&読解力を高める本連載。第5回は英文で使われているrunの用法を問う問題です。

クイズ

下の英文を読んでクイズに答えましょう。

For most of recorded history, people stayed married because they were keen to fit in with the expectations of society, had a few assets to protect and wanted to maintain the unity of their families. Then, gradually, another, very different standard took hold: couples were to remain together, ran the thought, only so long as certain feelings still obtained between them―feelings of authentic enthusiasm, desire and fulfilment.

―Alain de Botton (2016) : The Course of Love

文脈:イギリスの哲学者アラン・ド・ボトンによる恋愛論をテーマにした小説から。人類史において支配的であった結婚観が近代以降にどのように変化したかを述べている箇所です。

下線部ranのここでの用法に最も近いのは?

(1)worked
(2)went
(3)moved
(4)enjoyed

単語・語句

問題を解き終わった人、出てきた語句を理解できなかった人は、ここで確認しましょう。

  • stay married:結婚したままでいる、結婚関係を続ける
  • be keen to ~:~することを熱望している
  • fit in with ~:~とうまくやっていく、~と一致する
  • assets:資産
  • take hold:定着する
  • obtain:通用する、成立する
  • authentic:正真正銘の
  • fulfilment:充足感 ※イギリス式つづり。アメリカ式はfulfillment。

ヒント

第2文のコロン(:)以下はどういう役割になっている?

つまずきポイント

ran the thoughtの部分をran (V) the thought (O)と考えてしまうと、とんちんかんな解釈になってしまいます。

第1文の構造

第1文は人類史の大半において支配的だった結婚観を説明しています。people (S) stayed (V) married (C)「人々は結婚した状態でい続けた」という主節の後にbecause節を続けて、その理由を説明する流れ。並列された3つの動詞句が結婚生活継続の具体的な理由になっています。

要するに、were keen to fit in with the expectations of society「社会の期待に合わせたいと強く願った」から、had a few assets to protect 「守るべき少々の資産を持っていた」から、そして、wanted to maintain the unity of their families「家族の団結を維持したかった」から、そういう考えで結婚生活を続けたということです。

第2文の構造

第2文では、そういう考え方にどのような変化が起こったかが述べられます。まずは前半を確認すると、gradually, another, very different standard took hold「徐々に別の非常に異なった規範が定着した」とあることから、第1文で述べられていたような考え方とは異なる結婚観が幅をきかせるようになったことが分かります。

となれば、その「異なる結婚観」とは具体的にはどういうものなのか、という方向に考えを向けたいところ。それができていれば、took holdの後のコロン(:)が、「これからanother, very different standardの具体的内容を述べますよ」というサインだということが読み取れるでしょう。

以上のことを前提として、コロン(:)以下の部分を読んでみましょう。問題となるran the thoughtのところを、were to remainと並列されていると読みそうになっても、2つの異なる意味を持つ動詞句を並列する際にandやbutのような等位接続詞を用いないのは奇妙です。

ここから、ran the thoughtの部分はコンマ(,)で挟まれた挿入語句なのではないか、という方向で考えることができたかどうかがポイントです。

あとは、この挿入語句がどういう意味、役割なのかというところですが、これは類例の知識があるかどうかも大きいですね。なんらかの思想や考え方、言い伝えなどを解説する際に、The story goes that … 「その言い伝えによると…である」、 The argument goes that …「その主張によると…である」のような言い方がなされることがありますが、この主節部分とthat以下の従属節の部分の主従が逆転して、the story goes(runs), the argument goes(runs)といった語句が挿入的に用いられることがあります。

[例]
After all, we are God’s chosen nation, the argument goes, so what’s good for our nation is pleasing to God too.
―Yuval Noah Harari (2018): 21 Lessons for the 21st Century

「その主張によると、なんといっても私たちは神に選ばれた民なのだから、私たちの国にとってよいことは神にとっても満足のゆくものだ、ということになるのだ」

原理としてはI think that …やit seems that …の文で…の部分が主になり、そこにI thinkやit seemsが挿入されるケースと同じですが、goやrunが少しユニークな形で使われていることに加え、runs the argumentのように主語と動詞が倒置する場合もあり、少し注意が必要な構造です。

今回のran the thoughtもまさにそのパターンで、The thought ran that …「その考え方によると…だった」のThe thought ranの部分が挿入的に用いられ、かつ、主語と動詞が倒置して、ran the thoughtとなっているというわけです。

したがって、下線部のranに最も近いのは、この種の構文でほぼ同義で使われるgoの過去形のwentということになります。

解答と訳例

正解 (2)

訳例
人類史の大半にわたって、人々は、社会の期待に応えたいという強い気持ちのため、なけなしの資産を守るため、そして家族の団結を維持したいがために結婚生活を存続させてきた。しかし、徐々にそれとは別の全く異なる規範が幅をきかせるようになった。その考えによると、夫婦が一緒にいるべきなのは、一定の感情、つまり、互いに心から熱中して求めあい、満たされていると感じる気持ちが二人に残っている間だけだというのだ。

前回までのクイズはこちらから

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北村一真(きたむら・かずま)
北村一真(きたむら・かずま)

1982年生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、2009年に杏林大学外国語学部助教に就任。2015年より同大学准教授。著書に『英文解体新書』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)、『知識と文脈で深める 上級英単語ロゴフィリア』(共著、アスク出版)、『ジャパンタイムズ社説集2022』(解説執筆、ジャパンタイムズ出版)、『英文読解を極める 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ』(NHK出版新書)など。Twitter:@Kazuma_Kitamura

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