英検とTOEIC学習の違い&英検を学んで良かったこと【英検1級への道】

TOEIC満点でも英検1級の受験には苦戦したという英語コーチの星名亜紀さんが、英検についてつづる本連載の最終回。今回は、英検とTOEIC学習の違いや、英検を学んで良かったことについてお話しします。

TOEIC学習とは違った英検学習の魅力

皆さんこんにちは!英語コーチの星名です。連載最終回となる今回のコラムでは、英検とTOEIC学習の違いや英検を学習して良かったことをお伝えしたいと思います。

日本国内で「英語の試験」と言うと、最も知られて多くの方に受けられているのが英検とTOEIC L&Rテストです。2021年度の英検受験者数は、英検IBA、英検Jr.を含むと約410万人だったのに対し、2021年度のTOEICプログラムの受験者はSpeaking & WritingやBridgeテストを合わせて約230万人でした。社会人の皆さんにはTOEIC L&Rテストの方がなじみ深いと思いますが、実は英検も非常に多くの方に受験されています。

私自身も高校生のときに英検を受験したことはありましたが、大学生になってからはTOEIC学習のみ。就職活動ではTOEICのスコアがあると有利だと知ったこと、また客室乗務員の採用試験で募集要項に「TOEIC600点以上の英語力」と書かれていたことをきっかけに、TOEIC学習をスタートしました。

日本の就職・転職活動では、教員を目指している方など一部を除き、英検よりTOEIC L&Rテストのスコアの方が有利に働きます。私もこれまでの転職活動でTOEIC L&Rテストのスコアが大いに役立ってくれたと感じています。しかし、改めて英検1級合格に向けて学習をスタートすると、TOEICとは違う魅力や英語力の伸びを実感することができました

語彙力が広がる

まず、英検学習のおかげで語彙力の幅を広げることができました。TOEIC L&Rテストで必要となる語彙は、ビジネスパーソンが日常生活で必要とされるワード。社会人として英語で日常会話をするために必要な語彙力は、しっかりと身に付けることができます。

しかし、海外のニュースを聞いたり書籍を読んだりすると、TOEICには出てこないような語彙がたくさん登場します。例えば下の語彙は英検1級で出てくる単語ですが、TOEICで出くわすことはありません。

abduction(誘拐)
abominable(憎むべき)
decoy(おとり)
veto(拒否権)
wry(皮肉たっぷりの)

これら英検1級で必須の単語は、海外のニュースでは毎日のように出てきます。私は英検学習を通し、語彙力の幅を広げることができたおかげで、海外のニュースや本を読んだときの理解度がぐんとアップしたと感じています。

英文読解力が上がる

もう一つは、英文の読解力が格段に上がったことです。TOEICにもリーディングパートがあるので、精読や音読の練習をしている方も多いでしょう。ただし、TOEICのリーディングパートでは、読解力だけでなく情報処理能力が必要となります。75分間の中であれだけの問題数を解き終えるためには、それなりのスピードも求められます。

一方、英検1級では長文読解の問題はたった16問。そこまでスピードは求められませんが、かなり難易度の高い英文をしっかり理解していく必要があります。TOEICより一文の長さはぐっと長くなりますし、TOEICではあまり出てこない分詞構文なども頻繁に登場します。英検の長文問題を使って精読トレーニングをすることで、確実に読解力は向上するでしょう。

世界へと視野が広がる

最後に、英語力の向上とは直接関係ありませんが、私が英検を学習して良かったと思うことの一つが、世界へと視野が広がることです。英検(特に1級)で取り扱われるトピックは、TOEICのようにビジネスシーンに限らず、国際政治・経済、教育、環境問題、働き方、歴史、テクノロジーなど本当に幅広く、私は長文問題を読むたびに「世界には『数』という概念がない民族がいるのか!」「ヨーロッパでは環境問題に対してこんな取り組みがされているんだ!」など、新しい発見があり、日本語でインターネットで調べたり書籍を探したりしました。そして、私は世界のことを全然知らないんだということに気付きました。

海外の人と英語を使って会話をするときに大切なことは、「どんなに正しい文法、奇麗な発音で英語が話せるか」ではありません。そんなことより、会話の相手はあなたの持つ意見や価値観に興味を持ちます。より海外のことに興味を持ち、広い視野で物事を考えられるようになることは、英検学習の大きなメリットの一つだと考えています。

TOEICの学習は必要ない!?

では、TOEICではなく最初から英検だけを受ければよかったかというと、そんなことは全くありません。TOEICは英検のように合格か不合格の0か100のテストではなく、5点刻みでスコアが出てくるので、少しずつであっても着実な英語力の伸びを感じることができるテストです。TOEICであれば「あと5点で合格だったのに・・・落ちた!」ということがありません。成長を視覚的に確認できるのは学習の指標にもしやすく、モチベーションのキープにもつながるはず。

また、私自身、TOEICの学習を通して英文法の基礎固めをしたり、社会人として必要な語彙力を付けたり、シャドーイングのやり方を学んでリスニング力を伸ばすことができたりと、TOEIC学習はTOEICに限らず英検対策としても非常に効果があったと感じています。

英語学習者の中には最終的には話したり聞いたりなど、仕事や日常生活でもしっかりと使える英語力を身に付けることを目標にしている方が多いでしょう。まずはインプットを十分に行うことがその後の伸びにつながります。TOEIC L&Rテストはなじみのあるリーディングとリスニングのテストなので取り掛かりやすいですし、大人のやり直し英語としても適しています。

私は英検とTOEICという二つの試験を通し、私の英語学習の道のりにおいて欠かすことのできない英語力を身に付けることができました。覚悟を決めてこの二つの試験を本気で学習したことで、現在は英語コーチとしての活動をすることもできています。

どちらの試験を受けるにしても、学習の指標としてうまく活用し、これからの更なる英語力向上を目指していきましょう。初の英検に関する連載も今回で最後となります。最後までお付き合いくださりありがとうございました!これからも一学習者同士、目標に向けて頑張っていきましょう。

星名亜紀さんのその他の記事はこちら

星名亜紀
星名亜紀

英語コーチ、TOEIC講師。大学卒業後は全日本空輸株式会社で客室乗務員として勤めたのち、外資系企業にて外国人役員秘書を経験。現在は完全マンツーマンの英語コーチのほか、専門学校のエアライン科や企業研修でTOEIC講師として活動中。また、濱崎潤之輔先生と一緒に「濱崎・星名 英語学習研究所」オンラインサロンを開講中。TOEIC L&Rテスト990点。英検1級。Instagram:@hoshina_aki

【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。

語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発

  • スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
  • 制限時間は6秒!瞬間発話力が鍛えられる!
  • 英会話教室の【20倍】の発話量で学べる!

SERIES連載

2024 11
NEW BOOK
おすすめ新刊
名作に学ぶ人生を切り拓く教訓50
詳しく見る