年収アップに必要なのはデジタル分野の英語力

日本で初めて、リスキリングに特化した非営利団体を設立した後藤宗明さんに英語リスキリングのメリットやおすすめの英語学習法についてお話しいただきます。第2回は、英語のリスキリングが年収アップに効果的な理由やグローバルなビジネスパーソンが身に付けているスキルについてお話しいただきます。

英語のリスキリングはなぜ年収増に効果的なのか

給与の金額が決まる大前提として、需要と供給の関係があることは皆さんご存じのことかと思います。例えば、需要が高いにも関わらず供給が少なく希少性が高い場合(例:英語での交渉などが必要な仕事はたくさんあるのに、できる人が少ない)、給与は高くなります。希少性というのは、日本人なのに英語ができる、ということが前提にあります。英語が母国語の国で英語が話せることは、年収アップとは関係ないわけです。外国語を駆使して、グローバルに活躍している人材は希少性が高いので、年収が高くなるわけです。つまり、日本においてはビジネスレベルの英語力を駆使する交渉力を身に付ければ、年収アップのチャンスが大きく広がります。

また、先日驚くべきニュースが飛び込んできました。2022年12月の日本人のパスポート所有率はなんと17.1%でした。新型コロナウイルス感染症が始まる前の2019年でも23%、つまり現時点で外国に行って交渉できる日本人は2割以下しかいないこの状態が、スタート地点なのです。まさに飛び込んでやったもの勝ち、の状況です。グローバルなビジネスパーソンとして英語を駆使して仕事をすることは今までも重要で、これから更に希少かつ重要になると思います。

リスキリングに積極的に取り組むグローバル人材の7つのスキルとは

リスキリングを成功させた経験を持つグローバルなビジネスパーソンの価値を分類すると、以下の7つの能力を持っていると推察できます。(以下は、『自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング』272~275ページから一部抜粋・修正したものです)

1. 未来志向の考え方

リスキリングを行う人は、外部環境の変化を捉え、自分の将来の方向性やキャリアパスについて考えた結果、行動に移すのだと言えます。場合によっては、現在の職務を継続することに不安を感じるからかもしれません。いずれにせよ、未来に向けて現状を変えようとする「未来志向」の人であることが分かります。企業の変革期に用いるシナリオ・プランニングのように、自分の人生の未来を見据えているが故に、リスキリングに取り組むことができるのです。

2. 変化への適応力

現在の仕事や職務をそのまま継続していて大丈夫と考えるのではなく、激しく変化する外部環境に適応していくべく、自分を変化させる「適応力」が高いと考えられます。シリコンバレーでは、この適応力を計測するAQ(適応指数)を向上させるプログラムなどに注目が集まっています。今後も著しく外部環境が変化していくと仮定すると、企業にとって「変化への適応力」がある人材はとても魅力的です。

3. キャリアオーナーシップ

ここ数年、日本では自分のキャリアパスを自ら構築していく「キャリア自律」という考え方が主流になってきました。自らのキャリアを自ら構築していくキャリアオーナーシップを発揮できる人材を育てるにはどうしたらいいか、という相談をいただきます。リスキリングを成功させる人は、自ら自分のキャリアを作っていくことができる人だと言えます。またリスキリングを成功に導くまで努力できるということは、英語でよく使う褒め言葉であるself-disciplined(自己規律のある)、つまり自らの生活を律することができる人であるとも言えます。

4. 学習能力

言うまでもなく、学習能力が高いこともリスキリングに取り組むビジネスパーソンの能力としてアピールできます。DX(デジタル・トランスフォーメーション)、GX(グリーン・トランスフォーメーション) 、SX(サステナビリティー・トランスフォーメーション)といった企業変革が求められる現在、所属組織の新たな方向性を先取りして、自ら学ぶことができる人材は喉から手が出るほど欲しいはずです。特に、海外企業の採用面接においては、fast learner(習得の速い人)であることが、とても評価の高いポイントになります。

5. 継続力

通常の業務タスクをこなし、日々のさまざまな予定外の出来事やトラブルに直面しながらリスキリングを行い、成果に結びつけるためには、並々ならぬ努力が求められます。好きだから続けられる、といった場合もあるかもしれませんが、いずれにしても、リスキリングを完了するまで行う「継続力」があると言えます。

6. ストレス耐性

5の継続力に加え、ストレス耐性が高い人という判断もできるかもしれません。所属組織の方針との兼ね合いで、自分の望まない方向にリスキリングをしなくてはいけなくなる方もいます。リスキリングを進めていく上で、途中で挫折してしまうようなつらい出来事が、仕事であれプライベートであれ、起きる可能性もあるでしょう。そうした中でリスキリングを継続できるということ、そして「知らないこと」「分からないこと」に立ち向かっていくことができるのも、「ストレス耐性」の証明であると言えます。

7. 目標達成能力

最後に、ここまで述べてきた1から6の集大成として、リスキリングを成功させるという「目標達成能力」が高い人材であることを証明していると思います。多くの場合、リスキリングは短期プロジェクトではありません。海外の調査結果で、成果が出るまでには平均で約12カ月から18カ月かかるという試算も出ています。goal-oriented(目標指向型の)であることも、海外企業含め採用面接で高く評価されるポイントです。

上でご紹介した7つのスキルは世界中で活躍しているグローバル人材が共通して持っているものと言えます。つまりリスキリングに取り組んで成果を出せる人材の市場価値が高いため、年収の高いオファーをもらうことができるのです。

デジタル分野の英語力が年収アップに必要な理由

最後に、給与が上昇し続けている成長市場で働くことの重要性についてお伝えしたいと思います。現在、全世界で注目されているリスキリング分野はなんといってもデジタル関連のスキルです。デジタル分野における雇用は拡大し続けており、2020年から2025年の5年間でデジタル分野の雇用が約1.5億件増加するという予測も出ているくらいです。成長市場であるデジタル分野で活躍するためのスキルを身に付けることで年収アップにつながるのです。

例えば、僕自身が3年前に米国でAI分野の事業開発担当者を採用しようと募集した際には、スタートの金額が15万ドル、当時のレートで2000万円近い金額でした。同じ仕事をしても、日本の給与の1.5倍から2倍近いのでは、と感じました。デジタル分野の最新情報収集は圧倒的に英語が重要です。なぜなら最新技術やサービスがアメリカを中心とした英語圏から生まれているので、リスキリングを進めていく上で英語でデジタル分野の最新情報の収集ができることはかなりのアドバンテージになります。

次回は生成AI、ChatGPTが広がる時代でもなぜ英語学習を行いグローバルスキルを身に付ける必要があるのか、また、その実践方法についてお伝えしたいと思います。

後藤宗明(ごとう・むねあき)
後藤宗明(ごとう・むねあき)

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。SkyHive Technologies日本代表。30代はグローバル分野、40代はデジタル分野で自身のリスキリングを実施。フィンテック、通信ベンチャー、外資コンサル、AIスタートアップを経て、2021年ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。著書『自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング』

後藤宗明さんの本

「自分のスキルをアップデートし続ける『リスキリング』」

本連載で紹介する「英語に関するリスキリング」を含む、リスキリングの概要と実践するための方法をまとめた書籍『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』が好評発売中です。

写真(中央):Jason Goodman from Unsplash

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