英語をスラスラと読めない人に共通する二つの悪い癖とは?【英語お悩み処方箋】

頑張って英語学習を続けているのに、一向に英語力の上達を感じられない!と思ったことはありませんか?本連載では、イングリッシュ・ドクターの異名を持ち、1万人以上の英語学習者を見てきた西澤ロイさんが、あなたの英語の悩み「英語病」の解決方法を処方します。第4回は、リーディングが苦手な人が気付かないうちにしている悪い癖と、その対処法について紹介します。

英語力の重要な土台となるのがリーディング力

英語を読む力(リーディング力)は、英語力の土台となる非常に大切なスキルです。仕事で英語のドキュメントを読む必要がある人もいるでしょうし、英文記事やネットニュースなどが自力で読めれば、世界が大きく広がります。

ただそこで、機械翻訳に頼ってしまっている人も少なくないかもしれません。もちろん、そのような便利なツールはうまく活用するのがよいですが、依存してしまっていては自分の英語力が高まりません。

そこで今回は、英語のリーディング力を高める上で、「上達を妨げる原因」である「英語病」について取り上げたいと思います。まずは、拙著『英語学習のつまずき50の処方箋』の第4章「リーディング科」に登場する6種類の英語病について診断を行なえるチャートをご紹介します。

「リーディング」に関する英語病診断チャートに挑戦してみよう

以下のチャートで、質問に対して「はい」「いいえ」を選んでいってください。行きついた英語病に関して、かかっている恐れがあることが判定できます(「かかっている」と断定するものではありません)。

『英語学習のつまずき50の処方箋』P.119より引用

各英語病に関する概要と改善ポイントは以下の通りです。

【英語病名】24. シャイリーダー症
【概要】英文をしっかりと声に出して音読する習慣がない英語病
【改善ポイント】普段から、お手本となる音声を真似して、英文の音読を行なってください。

【英語病名】25. 英語骨粗鬆(こつそしょう)症
【概要】英語の構造文法(特に品詞や文型)に対する理解や意識が不足している英語病
【改善ポイント】リーディング力を高めるためには、ボキャブラリーを増やす前に、品詞や文型といった「構造文法」を理解することが重要です。

【英語病名】26. 逆行リーディング癖(へき)
【概要】英文を語順通りに理解することができず、後ろから前に戻りながら読んだり、何度も読み返したりする英語病
【改善ポイント】長文を語順通りに読めるためには、スラッシュ・リーディングを通じた、前に戻らずに読み進める練習が有効です。

【英語病名】27. 訳(やく)依存症
【概要】英文をいちいち日本語に訳さないと落ち着かなかったり、自然な日本語訳を求めてしまったりする英語病
【改善ポイント】日本語訳には、こだわりすぎないことが大切です。ぜひ「イメージをつかむ」「訳しすぎない」といった工夫をしていきましょう。

【英語病名】28. 未統合リーディング症
【概要】英文を読む際に、構造と意味を一度につかむことができていない英語病
【改善ポイント】英文の構造と意味を同時に理解できるようになるまで、「精読」のトレーニングを繰り返すことが効果的です。

【英語病名】29. ショートリーディング症
【概要】英文を読む絶対量が少ないというインプット不足により、英語力(特に単語力)が伸びない英語病
【改善ポイント】アウトプットできる(自分で使える)表現を増やすためにも、多読を通じて、インプット量を増やすことがオススメです。

今回の記事ではこの六つの中から、多くの日本人がかかっている二つの英語病、「逆行リーディング癖」と「英語骨粗鬆症」に関して詳しくご紹介したいと思います。

あなたは英語を語順通りに読めますか?

多くの日本人を悩ませる英語の特徴の一つが、日本語とは大きく異なる「語順」です。日本語と英語で、語順がほぼ正反対だと言うこともできます。また、日本語には助詞(が/は/を/に等)があるため語順の自由度が高いですが、英語はガチガチに決まっていると考えることもできます。

例えば、日本語において「魚を食べる」と「魚が食べる」は、助詞の違いだけであり語順は変わりません。しかし英語では前者は「主語+eat fish」、後者は「Fish eat ~」という順番に並べなければならないのです。

A. Japanese people eat fish often.(日本人はよく魚を食べます)
B. These fish eat worms.(これらの魚は虫を食べます)

なお、上の英文にそれぞれ日本語訳をつけましたが、このように訳して理解しようとすると、英語の語順に逆行する形で読むことになります。私はこれを「逆行リーディング癖」という英語病に分類しています。

本来は、英語の語順のままに読み進めて理解すべきです。Aの例文であれば、主語が「Japanese people」で、動詞が「eat」、食べた対象が「fish」。そして補足として「often」という副詞がついています。

しかし多くの日本人が、日本語の語順になるように、後ろから前に戻って読む(訳す)ということをしています。そしてそれが癖になっている人もかなり多いでしょう。

このような読み方が絶対に駄目というわけではありませんが、欠点として、読むスピードが遅くなること、そしてリスニングのスピードについていけなくなることが挙げられます。ですから、英文をスムーズに読める力や、リスニング力アップを求める方は、この「逆行リーディング癖」はぜひとも治す必要があります。

そのための練習方法としておすすめなのが、「スラッシュ・リーディング」です。例えば、以下は『ハリーポッター』の冒頭に登場する英文ですが、頭から順番に読んで理解できますか?

Mrs Dursley was thin and blonde and had nearly twice the usual amount of neck, which came in very useful as she spent so much of her time craning over garden fences, spying on the neighbours.
(『Harry Potter and the Philosopher's Stone』より引用)

come in (very) useful (非常に)便利である
as ・・・なので
crane  (ツルのように)首を伸ばす
spy on ~ ~をこっそり見張る

このような英文に、意味の固まり毎にスラッシュを入れたものを読んでいくのが、スラッシュ・リーディングです。

Mrs Dursley was thin / and blonde / and had nearly twice the usual amount / of neck, / which came in very useful / as she spent / so much of her time / craning over garden fences, / spying on the neighbours. //

なお、このときに二つルールがあります。一つは、スラッシュよりも前に戻らないこと。つまり、絶対に読み返さないことにより、語順通りに読み進める癖をつける練習となります

そしてもう一つは、スラッシュを越えて日本語に訳さないことです。先ほど診断した中に「訳依存症」がありました。これは特に、英語の全文を日本語に訳そうとする英語病であり、日本語に訳せることで理解できたと勘違いしてしまう原因になります。

全文訳を考える癖がある人は、以下のように、最大でもスラッシュで区切られた固まりでしか訳さないようにします。

Mrs Dursley was thin /(ダーズリー夫人は痩せていた)
and blonde /(そして[髪は]ブロンド色)
and had nearly twice the usual amount /(そして通常の量のほぼ2倍あった)
of neck, /(首が)
which came in very useful /(そしてそれがとても便利だった)
as she spent /(彼女は過ごしたので)
so much of her time /(自分の時間のとても多くを)
craning over garden fences, /(庭のフェンスの上に首を伸ばして)
spying on the neighbours. //(ご近所さんを見張りながら)

このようにして全文をやめ、もっと短い単語やフレーズなどの訳に留めることにより、訳依存症を軽減していくことができるのです。

スラッシュ・リーディングの練習が行なえる書籍を2冊ご紹介しておきます。まず1冊目は、中学英語レベルの長文が題材となっています。

そして以下は、中学英語よりももう少し難しいレベルの英文20本でトレーニングが行なえます。

いきなり英文の意味を取ろうとしてはダメ!?

原書や仕事上のドキュメントなどの大量の英文、また、ニュースや専門書、論文などの難易度の高い英文が読めるようになるためには、英文がスラスラ読めるだけのリーディング力が必要となります。しかし、それを邪魔してしまう英語病が「英語骨粗鬆症」です。

英文を読む際に、まず意味を取ろうとしてしまう癖のある人は要注意です。典型的な症状としては、他にも以下のようなものがあります。

  • 品詞がよく分からない
  • 文型(例:SVOC)に苦手意識がある
  • 英文の意味は、単語をつなげてなんとなく推測している
  • becauseとbecause ofの使い方の違いがよく分からない

品詞や文型といった英文法に苦手意識がある人も少なくないでしょうが、それは学校などでの教わり方が良くなかった(小難しい説明をされてしまった)ことが原因です。そのような文法(「構造文法」と言います)は、言語の重要な基礎に当たります。

日本語でも「”速い”車」とは言えても「”速い”歩く」とは言えず、「“速く”歩く」と言わなければなりませんが、そのような文法力が英語でも同様に必要なのです。

やや専門的な話になりますが、英語(に限らず言語というもの)は三層構造になっています。一番下にある(先にくる)のが「構造」であり、品詞や文型といった構造文法の理解がとても重要なのです。

そして2番目が「意味」の階層です。これはつまり、意味を考えるよりも先に、文の構造をきちんとつかまなければならないことを表しています。文法に苦手意識があるなどして、文の構造(≒骨格)をうまくつかめないままに、意味ばかりを考えてしまうのが「英語骨粗鬆症」なのです。

文の構造がうまく理解できないと、単語を並べていき、全体の意味をなんとなく推測するような、いい加減な読み方になってしまいます。それに対して、構造をサッと理解するスキルを身に付けていれば、重要ではない箇所や単なる修飾語を読み飛ばせるようになり、読むスピードも自然と上がっていくのです。

拙著で恐縮ですが、英文法に関して基礎から学べる書籍を1冊ご紹介します。

また、構造文法をつかみ、読解力を高めるためのトレーニングが行なえる書籍もご紹介しておきます。

土台だから英会話にもリスニングにも影響する

二つの悪い癖として、英語を日本語の語順に並べ替えて読む「逆行リーディング癖」と、「英語骨粗鬆症」に由来する、いきなり意味を取ろうとする癖、そしてそれらの治し方について解説してきました。

リーディング力は英語力の大事な土台です。例えば、英文を読んで理解するスピードがある程度ないと、リスニング(耳で行なうリーディングだと言えます)のスピードについていくことができません。

また、もしいちいち日本語に訳して理解しているならば、英語を話す際にもいちいち日本語から訳すことになるでしょう。しかし、英語の語順通りに理解する習慣が身に付いていれば、英語を話す際にも、英語の語順で伝えることがずっとしやすくなります。つまり、「英語が読めるけど話せない」という人は、実は英文がきちんとは読めていないのかもしれません

だからリーディング力は英語力の「土台」なのです。英文法を苦手なままにしておくと、英語力が伸びづらくなってしまいます。ですからぜひ、つまずきの原因となっている英語病を治すような学習を行なってみてはいかがでしょうか。

この記事をお読みの一人でも多くの英語学習者の方が、土台を固められ、そして総合的な英語力をアップしていかれることを心より応援しています。

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西澤ロイ
西澤ロイ

イングリッシュ・ドクター TM。英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんなふうに英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)など計11冊で累計17万部を突破。コミュニティFMラジオにて冠コーナー「西澤ロイの頑張らない英語」が好評オンエア中の他、メディア出演多数。「日本人が英語ができない時代を終わらせる」をモットーに、日本人が英語を使って国内外で活躍することを応援している。
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