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「virtue signaling」って知ってる?COP26で話題の表現を学ぼう【ニュースな英語】

ニュースな英語

国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を報じたニュースから、話題の英語表現を学びましょう。「virtue signaling」とは、いったいどんな意味なのでしょうか?

今回のニュースな英語

virtue signaling

イギリスのスコットランドにて、10月末から約2週間にわたり開催されていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議、通称「COP26」が、11月13日に閉幕しました。

今回は、アメリカと中国が共同宣言を出したり、日本が不名誉な「化石賞」を受賞してしまったりと、かなり話題になった会議でしたね。

COP26では、英語の気になるフレーズもたくさん登場しました。

virtue signalinghypocrisygreenwashingphase outphase downなどなど。

ということで、今回はCOP26で話題になったフレーズを取り上げます。

背景

COPとは、1995年にドイツのベルリンで開催された第1回から毎年(コロナ禍の2020年を除き)行われている国際会議で、国連気候変動枠組み条約に加盟する197カ国が参加します。

京都で行われたCOP3で採択された「京都議定書」(the Kyoto Protocol)や、これに代わってCOP21で採択された「パリ協定」(the Paris Agreement)が、COPでの交渉経緯として有名です。

パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2度未満、理想的には1.5度に抑えることが努力目標となりました。

今回のCOP26では、「グラスゴー気候協定」(the Glasgow Climate Pact)が採択されました。実は採択に至るまでに議論はかなり紛糾し、会期が1日延長されたほどでした。

特に、石炭火力を「phase down」(段階的削減)とするか「phase out」(段階的廃止)とするかが争点となりました。当初の文言は「phase out」だったのですが、発展途上国は「廃止」ができる状態ではないと主張したインドと、それを支持した中国に押される形で、「phase down」という表現に落ち着きました。

COP26のアロク・シャーマ議長はこの最終合意について、涙で声を詰まらせながら謝罪し、話題になりました。

どんなふうに使われている?

ニュースな英語

温室効果ガスの排出を削減して地球温暖化を防ぐことを目指しているわりには、各国首脳やビジネス界のリーダーたちがプライベートジェットで会議に駆けつけるなどし、「偽善(hypocrisy)だ」との声も挙がりました。

イギリスのタイムズ紙はこのように報じています。

About 400 private jets will fly into Glasgow for the climate talks, prompting accusations of hypocrisy against world leaders and captains of industry.

気候変動会議に向けて約400機のプライベートジェットがグラスゴーに乗り入れることになり、世界の首脳陣や産業界のリーダーたちは偽善的だと非難されている。

COP26の主旨と、それに参加するために飛行機で駆けつけることのギャップを、virtue signalingという言葉を使って非難した人たちもいました。

virtue signalingとは、自分は「virtue」(美徳)にあふれた道徳的に良い人間であるというアピールを、主にソーシャルメディアなどですることです。日本語では、「美徳シグナリング」などと呼ばれているようですが、平たく言うと、「良い人アピール」といった感じでしょうか。ただし単なる「良い人」というより、例えば環境問題や社会的な問題に関心が高いようにアピールするのが、「美徳シグナリング」です。

イギリスの新しいニュース専門局GBニュースは次のような見出しで、COP26にプライベートジェットで駆けつけたレオナルド・ディカプリオ氏やジェフ・ベゾス氏を非難しました。

COP26: Virtue signalling celebrities need to leave political summits to the politicians

COP26:美徳シグナリングをするセレブたちは、政治会談を政治家に任せるべきだ

ちなみにイギリス英語では「signalling」とLを2つつなげてつづります。

またアメリカのワシントン・ポスト紙は、COP26をこのように表現しています。

Inside the global climate summit known as COP26? The vibe is coronavirus pandemic meets the annual meeting of the World Geophysical Society. There’s virtue signaling, greenwashing and speeches in sometimes half-empty halls.

COP26として知られる世界気候会議の内側?―雰囲気としては、コロナウイルスのパンデミックと世界地球物理学協会の年次総会が合わさったようなものだ。美徳シグナリングあり、グリーンウォッシングあり、ときに半分しか埋まっていない集会場でのスピーチあり。

greenwashまたはgreenwashingとは、実際以上に環境に配慮した活動をしていると見せかける行為で、主に企業や組織などに対して軽蔑的に使われる言葉です。

グレタ・トゥーンベリさんがCOP26を「greenwash festival」(グリーンウォッシュのお祭り)と非難したことでも話題になりました。

まとめ

COP26は、2020年11月に開催される予定だったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大原因で1年間延期になり、今年開催されたものでした。

次回のCOP27はエジプトで行われることが決まっています。

今回はvirtue signalinghypocrisygreenwashingなどというネガティブな表現が多く目につきましたが、次回のCOPはポジティブな言葉が多く使われる会議になるといいですね!

松丸さとみ

松丸さとみフリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』(日経BP)、『限界を乗り超える最強の心身』(CCCメディアハウス)、『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』(サンマーク出版)などがある。
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