英語版「日本国憲法」に挑戦!現代語訳と見比べながら前文を読んでみよう!

日本国憲法

5月3日は、憲法記念日です。戦後、日本国憲法は1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行されました。日本国憲法が公布された1946年11月3日、その全文訳が英文官報に掲載されていたことをご存じでしょうか。『対訳 英語版でよむ日本の憲法』(アルク)では、この「英語版憲法」を、翻訳家の柴田元幸さんによる現代語訳で読むことができます。本記事ではその一部、憲法の前文を対訳で読んでいきましょう。

憲法って何?

憲法とは、国民の権利や自由を守るために、国がやってはいけないこと、あるいは、やるべきことについて国民が定めた最高法規のことです。国民が守るべき決まりを定めた「法律」とは異なり、憲法とは、国が権力を振りかざして国民に危害を与えないよう、国家権力を制限し、国民ひとりひとりの尊厳を守るために定めた決まりのことを指します。

学校などで憲法の条文を読んだことがある人は、日本国憲法には「国民主権」や「戦争放棄」などのメッセージが、はっきりと記されていることを知っていると思います。しかし、それらを英語でどう表現するかとなると、考えたことがある人は必ずしも多くないでしょう。

本記事では、『対訳 英語版でよむ日本の憲法』に記載されている、英文学者の柴田元幸さんの翻訳を見ながら、日本国憲法の前文を読んで、憲法で使われている英語を学んでいきましょう。

日本国憲法の前文を読む(第1文)

We, the Japanese people, acting through our duly elected representatives in the National Diet, determined that we shall secure for ourselves and our posterity the fruits of peaceful cooperation with all nations and the blessings of liberty throughout this land, and resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmly establish this Constitution.

私たち日本の人びとは、正しい手続きを経て選ばれた、国会における代表者を通して自分たちの意志を実現する。自分たちのため、子孫のために、私たちはすべての国と平和に手を結ぶことからもたらされる果実を確保し、自由の与えてくれる恵みを、この国の隅々まで広めていく。政府の行動によって戦争の悲惨に引き込まれることが二度とないよう、主権は人びとにあることを、かくして私たちは宣言し、ここにこの憲法を定める。

読みのポイント

第1文は構造が非常に複雑ですので、ゆっくり見ていきましょう。この文の主語は文頭のWeであり、同格のコンマがWeと the Japanese peopleのイコール関係を示しています。ちなみに、We the People of the United Statesから始まるアメリカ合衆国憲法の前文が、日本国憲法の下敷きであることが、この書き出しから伝わってきますね。

主語Weの後ろには、 分詞構文acting through ~が挿入され、さらにdetermined that~と、resolved that~が主語の後置修飾として続いています。そこからさらに、do proclaim ~、do firmly establish ~という2つの動詞へと続いていく骨組みが、第1文の基本構造になっています。

さらに細かく、determined that節の中を見ていきましょう。基本的には、secure A for B「BのためにAを確保する」という語法で書かれていることがわかります。しかし、 secureの目的語にあたるthe fruits of ~and the blessings of ~の部分が長いため、倒置されて、for Bの部分にあたる前置詞句が先に来ていることに注意しましょう

また、主語が1人称代名詞の際に、話し手の「強い意志」を表す助動詞のshallが用いられていることにも注目です。ここでは、平和を維持しようとする日本人の強い気持ちが伝わってきますね。

determined that節 ~が終わると、等位接続詞のandでつながれ、 resolved that節 ~が2つ目の修飾句として登場します。こちらのthat節の中は、まずneverという否定表現が来ているため、疑問文のようにweと助動詞のshallが倒置されていることに気を付けましょう。また、be visited withという句動詞は「蒙る(こうむる)」という意味です。ほぼsuffer fromの代わりのように使われています。

この部分では、倒置によってneverが強調されるとともに、否定文では「強い禁止」を意味するshallが用いられていることから、戦争への強い後悔が感じられます。また、horrorsがその悲惨さを表現しているようにも思えます。

主語のWeに対応する動詞のproclaimestablishの前には、強調の意味で機能するdoが付いていることにも注意しましょう。

覚えておきたい単語リスト

duly

正式に

representative

代表者

shall do

~するものとする

posterity

子孫
blessing

恩恵

sovereign power

主権

reside with ~

~に属する、~に帰する

establish

~(法律など)を制定する

日本国憲法の前文を読む(第2文~4文)

Government is a sacred trust of the people, the authority for which is derived from the people, the powers of which are exercised by the representatives of the people, and the benefits of which are enjoyed by the people. This is a universal principle of mankind upon which this Constitution is founded. We reject and revoke all constitutions, laws, ordinances, and rescripts in conflict herewith.

統治権は人びとからの不可侵の預かり物であり、その権威は人びとから発し、その権力は人びとを代表する者たちによって行使され、その恩恵は人びとによって享受される。人類にとって万国共通のこの原理を、私たちの憲法もまた土台にしている。これと対立するすべての憲法、法律、命令、詔令を私たちは退け、廃する。

読みのポイント

第2文は、主語と動詞がGovernment is ~と続くシンプルな構造ですが、関係代名詞が3つ入っているので少し読みづらくなっていますね。the authority for whichとthe powers of which、そしてthe benefits of whichの関係代名詞は、すべてGovernmentを指していることを確認しておきましょう。

第3文は、Thisという代名詞から始まっていますが、ここでは前文のGovernmentに関する説明全体を指しています。またupon whichの関係代名詞の先行詞は、a universal principle of mankindだということも意識しておきましょう。

第4文に関しては、in conflict herewithという表現を見慣れないと感じる人も多いかもしれませんが、「~と矛盾する」を意味するin conflict with ~を思い出せれば、大まかな意味は類推できるのではないでしょうか。

覚えておきたい単語リスト

sacred

不可侵の、神聖なる

authority

権力、権限

be founded upon(on) ~

~に基づく

revoke

~を無効にする、~を取り消す

ordinance

命令、法令、条例

in conflict

対立して、矛盾して

herewith

これをもって、これに関して

日本国憲法の前文を読む(第5文~7文)

We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeply conscious of the high ideals controlling human relationship, and we have determined to preserve our security and existence, trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world. We desire to occupy an honored place in an international society striving for the preservation of peace, and the banishment of tyranny and slavery, oppression and intolerance for all time from the earth. We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want.

私たち日本の人びとは、永久の平和を希い、人間同士をつなげている貴い理想を胸に刻む。平和を愛する世界の国ぐにの人びとの正しさと誠実さに信を置くことによって、自分たちの安全と生命を護っていこうと私たちは決意した。国際社会は、平和を維持し、暴政、奴隷制、弾圧、非寛容をこの世界から永久になくそうと努めている。私たちもまた、その社会のなかに名誉ある立場を築いていきたいと思う。世界中すべての国の人びとが、平和に、恐れも欠乏もなく暮らす権利を持っていることを私たちは認識している。

読みのポイント

第5文は、主語のWe, the Japanese people,にdesireとbe conscious ofという2つの動詞がある文と、we have determinedで始まる文から成っています。

また前半部分のthe high ideals controlling human relationshipは、現在分詞controlling ~がthe high idealsを修飾する形になっており、主語と述部の関係で形容されていることに注意しましょう。後半部のtrusting in ~以下は、分詞構文となっています。

第6文では、現在分詞striving forがan international societyを修飾していますが、前置詞forの目的語には、the preservation of ~とthe banishment of ~の2つが続いています。またbanishment ofの目的語にはtyrannyslaveryoppression、 intoleranceの4つが続いていますが、等位接続詞andの使い方が特徴的です。

もし、4つの目的語が単に列挙されるのであれば、A, B, C, and Dという用法になるはずですが、ここでは、tyranny and slavery, oppression and intoleranceとなっています。従って、A=tyranny and slavery、B=oppression、C=intoleranceと考えて、A, B, and Cという列挙の用法で読むか、コンマを同格とみなし、tyranny and slaveryoppression and intoleranceとする2つの解釈の余地が残されているので、じっくりと考えてみたいところです。

第7文で注目したいのは、peoplesという名詞です。「人々」という意味で使うときは、peopleはpeoplesとはなりません。peopleという単語は、それだけで複数扱いの名詞なので、peoplesという場合は、「(世界中すべての国の)民族」という意味を示しています。

覚えておきたい単語リスト

existence

生存(物)、存在

honored place

名誉ある地位

strive for ~

~を得ようと奮闘(努力)する

banishment

追放、廃棄

tyranny 

暴政、圧政

slavery

奴隷制

intolerance

非寛容

  

日本国憲法の前文を読む(第8文~9文)

We believe that no nation is responsible to itself alone, but that laws of political morality are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all nations who would sustain their own sovereignty and justify their sovereign relationship with other nations. We, the Japanese people, pledge our national honor to accomplish these high ideals and purposes with all our resources.

いかなる国も、自分に対してのみ責任を負っているのではない。正しい政治の道の根本は世界共通だと私たちは信じる。みずからの主権を維持し、主権としてほかの国々との関係を正しく保とうとする国はすべて、その根本に従う必要がある。 私たち日本の人びとは、持てる力すべてを駆使し、 この貴い理想と目的を達成することを、国民としての名誉にかけて誓う。

読みのポイント

第8文は、動詞believeに続くthat節3つが、目的語として続いている点が特徴的です。また前半部分、no nation ~but ~は、「AではなくB」を意味するnot A but Bとほぼ同じ形になっているのもポイントですね。続くセミコロンは、「対比」や「逆接」を意味する場合もありますが、ここでは「因果関係」を示しています。さらに、3つ目のthat節の中のsuch lawsは、先の laws of political moralityを示していることも確認しておきましょう。

最後となる第9文は、「全身全霊をかけて、全力を尽くして」などを意味するwith all one’s resourcesという熟語を覚えておきましょう。

覚えておきたい単語リスト

law  

原則、掟(おきて)

morality  

道徳、倫理性

obedience 

従うこと、服従

incumbent upon(on) ~

~に責任のある

sovereignty

主権、統治権、支配権

with all one’s resources 

全身全霊をかけて、全力を尽くして

「英語版」&「柴田元幸訳」で日本国憲法がわかる!英語も身に付く!

以上が、憲法の前文となりますが、いかがでしたが?構文的に複雑な文や、語彙が難しい部分もありますが、訳と対比して読んでいけば、発見も多く楽しく読めるのではないでしょうか?

この記事でも紹介している、日本国憲法の公式訳「英語版憲法」を、翻訳界の巨匠、柴田元幸さんが翻訳した『対訳 英語版でよむ日本の憲法』が4月27日に発売されています。正統派の英文と明快な現代語訳という新しいアプローチで、憲法のスピリットとメッセージが頭にすらすら入ってきます。英文は、憲法公布日(1946年11月3日)にGHQの了承に基づき英文官報に掲載されたものを使用。法律用語は憲法学者の木村草太さんが監修しています。語注が付いているので、英語学習にも最適です。

また、日本語と英語の朗読が聞けるダウンロード音声付きなのにも注目です!日本語は『鬼滅の刃』(鬼舞辻無惨役)でおなじみの関俊彦さん、英語もプロのネイティブナレーターの朗読が収録されています。ぜひチェックしてみてください!

【音声DL付】対訳 英語版でよむ日本の憲法

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  • 作者:柴田 元幸
  • 発売日: 2021/04/27
  • メディア: 単行本
 

 

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ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

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