連載「スウェーデン人ブレケル・オスカルの 僕と日本茶しませんか?」では、日本茶インストラクターであるブレケルさんが、自身のことや語学、日本茶などの文化について語ります。第4回は、「日本人に驚嘆されるほどの漢字力を獲得した学習法」です。
不意打ちの漢字テスト
いきなり封筒を渡され、 「ここにタビと書いて」 と言われました。タビと言われても、 旅、度、そして足袋と選択肢が3つもあり 、取りあえず全部を書き出してみました。その数秒後に相手はtripの「旅」を思い浮かべていたのが判明しましたが、とにかくどれも問題なく書けました。
漢字を3つ書くなんて何も特別なことではないと思っていたのですが、相手からは 「書けるんだ!すごい!」という驚きにあふれた反応 をされました。
上記のエピソードは学生時代ではなく、つい最近、 取引 先の事務所で、ある仕事の案件について打ち合わせしたときに起こったことです。メイントピックであった日本茶セミナーの話が終わって雑談し始めたところで、日本語の語彙力が高いと褒めていただきました。
そこから外国語の勉強に取り組んでいる中でどのようにしてボキャブラリーを豊かにできるのかについて話すことになりました。会話を通じて新しい単語をピックアップするのはもちろん大事なのですが、私の経験からすると 書籍や新聞、雑誌などの文章をなるべくたくさん読むことがいちばん効果的 です。
そう 主張 したら、半信半疑の相手はどうやら私の漢字力を検証したくなってきたようです。たまたまテーブルの上にあった封筒を私に渡し、「タビ」を書くというリクエストをして、いきなりのテストになりました。
住所を漢字で書けるのが珍しい?
考えてみたら、上記は決して珍しいシチュエーションではありません。どちらかといえば、私の生活の中でよくあることです。
例えば、出張の泊まり 先に チェックインする際に、必ずフロントで住所を記入します。当然、日本語で記入します。というか、日本の住所なので日本語で書くのが最も自然に感じます。逆にローマ字で記すのに違和感を覚えるほどです。
住所を書くなんてごく普通でしょう。というか 社会人であればそれくらいは誰でもできるだろうと、驚いた相手に突っ込みたい気持ちになる ことがあります。しかしその人にしてみると、どうやらこのごく普通のことと私の顔がマッチしていないようなのです。
長年日本にいても勉強が進まず、なかなか思うように上達できなくて 漢字を諦めてしまう外国人も多い ことを考えると、それほど不思議な反応ではないかもしれません。
私も漢字の勉強で相当苦労しましたが、勉強している中で いくつかの習慣を身に付けたおかげで徐々に読解力、そして語彙力も高めることができました 。その方法は 英語の勉強に取り組んでいる日本の方もある程度活用できる と思いますので、これから紹介しましょう。
あえて紙に書き出す理由は?
今の時代はパソコンやスマホなどがあってとても便利です。出だしで紹介したエピソードで書かされた「旅」も含め、仮に漢字の書き方を忘れたとしても、キーボードや画面などで「tabi」と打つだけでしっかりとすべての選択肢が出てきます。効率面で考えると、文章を書くときに最もよい方法に違いありません。
しかし私に言わせると、1つの無視できないほど大きな問題にもつながります。それは、 人間の能力のほんの一部しか発揮されていない ということです。特に外国語を勉強するときには、デバイスに頼っていると新しい単語が記憶に定着しにくいように思います。
私の経験からすると、 手で書いた方が記憶に残る 可能性 が驚くほど高まります。その理由については、脳科学者などに聞いていただいた方が根拠のあるよい答えが出るかと思いますが、私の感覚では 手を動かしてマッスルメモリー(筋肉の記憶)を積極的に鍛えた方が早く上達します 。最初はペースが遅いですが、書けば書くほどスムーズになっていきます。
ただ、新しい言語の練習を目的に手で書くとなると、そのための時間も作らなければなりません。ある程度余裕があれば実現しやすくても、忙しい人にはすすめにくい方法だと思われるかもしれません。
確かに毎日、外国語で日記を書いたりするのは、多くの人にとって習慣として続けるのが難しいでしょう。その場合は、無理せずにまず日常生活の中で 少しでも手で書く習慣 を身に付ければよいかと思います。
例えば、 買い物リスト、仕事のメモ、スケジュール帳 など、学ぼうとしている言語で書くだけで、気付かないうちに上達していきます。大事なのは、このように生活の中で、手で書く場面を積極的に作ることです。
ちなみに 、サラリーマン時代に働いていた会社は共通語が日本語でした。私は事務所で唯一の外国人だったため、周りの人にも伝わるようにメモなどを日本語で書くことを徹底していました。というのは、外出中や出張の際に万が一 同僚 に何かを確認してほしいとなったときに、スウェーデン語または英語で書いても伝わらないからです。要するに、日本語で書かなければ、仕事に支障を来す 可能性がある 状況でした。書き慣れていない言語をこのように毎日使用しなければいけない環境はもちろんストレスが多いですが、外国語を学ぶのに最も早いコースです。
余談になりますが、当時はまだ不自由なく日本語で生活できたわけではありません。メモだけでなく、営業職だった私はさまざまな資料を作成しなければなりませんでした。当然のことに日本語で。特に週報を書くのに苦労したことは一生忘れられません。当時私の変な日本語に耐えてくださった関西ペイントマリンの皆さん、そして徹底的に訂正してくださった上司に心より 感謝 しています。
恋人に怒られるほど勉強していた
ある程度習慣を身に付けても、この令和時代に全部を手で書くのはさすがに無理があります。幸いなことにスマホなども 有効 に活用できます。まずは、 スマホの言語を、学ぼうとしている外国語に設定 しましょう。最初は混乱するかもしれませんが、しばらくしたら外国語のインターフェースに慣れてきます。
外国語学習アプリ を使用するのもおすすめします。私は漢字の勉強で「Kanji LS Touc?h」というアプリを大いに活用してきました。読み方や熟語などはもちろん、書き順や文字のバランスなども含めて覚えられますので、学生時代に毎日使っていました。あまりにも使い過ぎて、当時付き合っていた彼女に怒られるほどでした(笑)。?
ちなみに 、漢字のアプリは今でも電車の中で楽しく活用しています。買い物リストもスケジュール帳もすべて日本語です。学んだつもりではあるけれど、能力が低下しないように、今でもやり続けております。英語など外国語を勉強している方は、試してみたらいかがでしょうか。
次回は2021年4月16日に公開予定です。
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ブレケルさんが日本茶を語る本
- 作者:僕が恋した日本茶のこと 青い目の日本茶伝道師、オスカル※トップ写真撮影:Klara Maiko
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ブレケル・オスカル(Oscar Brekell) スウェーデン初の日本茶インストラクターとして、言語能力と専門知識を生かし国内外でセミナーなどを開催。書籍出版と新しい日本茶ブランド立ち上げのほか、テレビやラジオなどにも出演。日本のメディアでは、「青い目の日本茶伝道師」として親しまれている。
Instagram : https://www.instagram.com/brekell/
写真:Klara MaikoSERIES連載
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