上達しにくいスピーキングに救世主!?VR英会話が変える英語教育のこれから

VRで英語学習

コロナ禍でエンタメ分野以外にも「VR」技術導入の機運が高まっています。VRなら、遠隔地にいる相手とでも、現実に会っているかのようなコミュニケーションが取れます。VR技術はこれから、英語学習にどのような変化をもたらすのでしょうか。VRスタートアップのImmerse Inc.に取材した内容を、前編・後編に分けてご紹介します。

社会のグローバル化が進展するにつれて、英語コミュニケーション能力の向上が、日本人の大きな課題とされています。

近年は文法偏重の「詰め込み型教育」が見直され、学習指導要領でも「リスニング」「リーディング」「スピーキング」「ライティング」の4技能をバランスよく育成することが重要視されていますが、現場からは1年間の授業で4技能すべてを向上させることは容易ではないという声も上がっています。

アルクによる調査レポート「高等学校における英語4技能指導の実態」*1によると、2019年度に英語の授業を担当した生徒の英語力を評価したところ、4技能すべてが向上したと実感した教員は、全体のわずか17.8%にとどまっています。

技能別に見ていくと、教員が生徒の伸びを実感した割合が最も高かったのは「リーディング」であり、「リスニング」、「ライティング」がそれに続きますが、「スピーキング」については、「上がった」、「やや上がった」と答えた教員が4技能中で最も少なく、現場での指導に苦労されていることがうかがえます。

「高等学校における英語4技能指導の実態」より引用

「高等学校における英語4技能指導の実態」より引用

日本人が苦手とする「スピーキング」技能を向上させるために、留学機会の提供やオンライン英会話の導入など、従来の「教室の中での英語学習」とは異なる学習方法に力を入れる教育機関は増加する傾向にありますが、留学は費用が高額であったり、オンライン英会話だけではリアルな体験が得られにくいなど、それぞれに課題も指摘されています。

そのような中、前編でもご紹介したように、近年はVRを活用した英会話学習が注目され始めています。VRと聞くとまずはゲームやアニメなど、エンタメ分野での活用を連想する人も少なくないかもしれませんが、いつでもどこでもリアルに近い英語体験をシミュレートできるVRは、英会話にも好影響をもたらすとされています。VRスタートアップのImmerse Inc.の澤田和信さんは、VRの可能性について次のように語っています。

「教材が豊富で学習しやすいリーディングなどに比べると、日本人はスピーキングを苦手とする人が非常に多いです。即座にアウトプットが求められるスピーキングを重点的に鍛えるための教材として、VRは非常に有効だと思います。学習ツールの選択肢としてはまだあまり認知が進んでいませんが、海外で実際に英会話をしているかのような感覚になれるVRは、唯一無二の教材だと考えています」

中央大学におけるレッスンの様子

宮城県の私立・仙台育英学園高等学校の「英進進学コース」は、Immerse Inc.のサービスを利用し、日本の教育機関としては初のVRを利用した英語学習となりました。 他にも中央大学国際情報学部の斎藤ゼミでImmerse Inc.のVRを利用して行われた効果検証では、生徒の学習への満足度が高く、学習効果が上昇し、英語を話すことへの不安も減少したという声が届いているとのことです。

英語教師の個性に合わせたVR授業が可能

Immerse Inc.が提供している「バーチャル言語教育プラットフォーム(Virtual Language Experience Platform)」とは、高校・大学・英会話スクールなど、英語教育機関に所属する英語講師が、生徒たちとVR英会話を行うためのVRアプリケーションです。

オンラインでの英語学習プログラムを構築したいと考えてはいるものの、果たしてVR導入が自分たちの英語教育にうまくマッチするのだろうかと悩んでいる事業者にも、澤田さんはぜひおすすめしたいと述べています。

「一口に英語教育機関といっても、ある事業者は医療者向けの講座をやっていたり、また別の事業者はビジネスマン向けの英会話スクールをやっていたりと、その内容はさまざまです。私たちのサービスの特徴は、VRプラットフォームを使って英語事業者それぞれの個性を活かした学習カリキュラムを組むことができるという点なのです」

Immerse Inc.が提供するプラットフォームには、英会話学習のためのシチュエーションがアニメーションと360度パノラマ写真合わせて約80種類用意されていますが、これに搭載されている「プランニングハブ」という機能を使えば、シチュエーションを活用した独自の学習カリキュラムを組むことができます。

例えば、「上司の部屋(corner office)」というシーンには、「遅刻した理由を説明する」などのテーマで、基本的な英会話用のレッスンプランが予め用意されており、これに従うことで授業を進めていくことができます。ただそれだけではなく、事業者の希望によっては、これらのレッスンプランを土台にしてオリジナルのプランを作成したり、また全くのゼロベースからプランを作成することも可能なのです。

「Immerse Inc.が提供しているプラットフォームをどのように利用するかについては、事業者さまのご希望に合わせて、幅広く活用していけるように設計されております。皆さまの個性に合わせて、VR英会話をさまざまに活用していってほしいなと考えています」

さらに、Immerse Inc.が提供するプラットフォームでは、ただ現実を模倣しただけにとどまらない、授業を運営する上で役に立つ細かな工夫がなされていると澤田さんは述べています。

「例えば、アバター同士のコミュニケーションを円滑にするためのアクション機能によって、拍手をしたり、ハイタッチをしたりなど、本当に教室にいるかのような躍動感を演出できます。あるいは、必要に応じてVR上に黒板を登場させて、テキストでじっくりと解説をすることも可能です。発音の練習など、教師の顔の表情や口の動きを見て学習したい場合は、ビデオチャットの画面をVR上に表示させることもできます」

コロナ禍によって多くの英会話教室でリアルに集まることが難しくなっていますが、Wi-Fiとパソコンさえあれば授業ができるVR英会話を活用すれば、英語講師や生徒それぞれのニーズに合わせて、また新たな可能性が開けていきそうですね。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌『ENGLISH JOURNAL』が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!