映画やドラマは生きた英語の宝庫。おすすめ映画・ドラマから、ちょっとおしゃれで すぐに 使える英語表現を毎回一つ紹介します!今回はドラマ「NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち」から、a moot point の意味と使い方を解説します。
今日のおすすめ表現
a moot pointこれまで連載してきた「映画で英語」ですが、今月からパワーアップして、おすすめフレーズを取り上げる作品の対象を海外ドラマにも広げます!
テレビドラマで英語を学ぶ場合、約2時間の映画と比べ、30分?1時間ほどなので手軽に見られる上に、続きが気になって翌日もまた見たくなるので、コツコツと続けられて効果的ですよ。
さて今回選んだフレーズは、文脈によって、「議論する意味がない」または「議論の余地がある」と、まったく逆の意味になるa moot point です。
表現の出どころ
海外ドラマからフレーズをご紹介する記念すべき第1弾で取り上げる作品は、「NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち」(原題:The Bold Type)です。
Huluの無料お試しでこのドラマを見る以前「 英語の勉強におすすめなVODの海外ドラマ8選 」という記事を書いたのですが、そこでもこの作品を取り上げたくらい、私も大好きなイチオシの海外ドラマです。
ej.alc.co.jp主人公は、ニューヨークで働く20代の女性、ジェーン、キャット、サットンの3人。この年ごろの女性に多い悩みとも言える、「仕事と結婚、どっちを取るか」「婦人科系の病気にどう向き合うか」「セクシュアリティをどう受け止めるか」などの問題を、3人はお互いを支えながら乗り越えていきます。
かつて日本でも「セックス・アンド・ザ・シティ」(SATC)がヒットしましたが、同じニューヨークが舞台であり、おしゃれなファッションが楽しめ、女性同士の友情にフォーカスしたこの「NYガールズ・ダイアリー」は、SATCが大好きだった人もきっと気に入ると思います。
また、SATCが放映されていたのは1998?2004年で、約20年前でした。「当時は子どもだった自分にとって、SATCはちょっとお姉さんの話過ぎてぴんとこなかったな」という20代、30代の人の場合、「NYガールズ・ダイアリー」はちょうど同じ年頃の女性の話になりますし、オンタイムで放映中の「今」のドラマなので(シーズン4まで、Huluで配信済みで、最終シーズンのシーズン5は年内にアメリカで放映の見込みです)、共感できると思います!
表現の使い方
今回ご紹介するのは、シーズン1のエピソード1「私が私であるために」からピックアップしたフレーズです。
女性誌『スカーレット』で働くライターのジェーン(ケイティ・スティーヴンス)、編集者付きアシスタントのサットン(メーガン・ファヒー)、ソーシャルメディア・ディレクターのキャット(アイシャ・ディー)は、大親友。3人そろって、編集部が『スカーレット』次号の内容を取締役にプレゼンテーションする会議に出席しています。
プレゼンテーションをしているのは、編集者ローレン。次号に掲載予定だった、イスラム教徒でレズビアンの写真家アディーナ(ニコール・ブーシェリ)の作品について、法的な理由から掲載を見送る、と説明します。
キャットは、掲載見送りに反対の意を込めてこう言います。
We think this will have a huge social-media reach .ソーシャルメディアでかなり話題になると思うんですが。ここでいう reach は、「到達する範囲」「及ぶ範囲」。つまり、この記事はSNSで広く行き渡る・・・話題になるという意味です。主語はWeなので、キャット個人の考えというより、『スカーレット』のSNS部門代表としてキャットは発言しています。
するとローレンはこう返します。
Unfortunately, it’s a moot point .残念だけど、議論する意味はないの。mootを辞書で引くと最初に「議論の余地がある」とあり、a moot point で「論争点」などと載っているので、ローレンは「議論できる」って言っているんじゃないの?と思ってしまうかもしれませんね。
でも辞書によっては、「論じても無意味な」という意味が載っているものもあります。お手持ちの辞書にしっくりくる意味が載っていなかったら、ぜひ複数の辞書を引いてみてください。辞書によって個性があることに気付くかもしれません。
dictionary.cambridge.org www.collinsdictionary.comまとめ
a moot point は、辞書を引くと「議論の余地がある」と載っていたり、「論じても無意味」と載っていたり、解釈に悩ましい表現です。
今回のローレンの発言は、その文脈から明らかに「議論の余地はない」という意味です。文脈を考慮してどちらの意味か 判断する 必要のある、ちょっとやっかいな表現なので気を付けましょう!
また 傾向 として、アメリカやカナダでは「論じても無意味」という意味で、イギリスでは「議論の余地のある」という意味でmootが使われることが多いようですので、話す相手によって意味を使い分けることも意識しましょう。
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松丸さとみ フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に 『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』 (日経BP)、 『限界を乗り超える最強の心身』 (CCCメディアハウス)、 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 (サンマーク出版)などがある。
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