「(my)pronouns」「climate emergency」ってどんな意味?【2019年を表す英語】

2019年を表す言葉「(my)pronouns」「climate emergency」ってどんな意味?

今では当たり前に使われている言葉も、その年の出来事や世界情勢の変化によって生まれました。 本記事では、2019年にアメリカとイギリスで流行した言葉やオックスフォード英語辞典に登録された言葉をご紹介します。 新語と流行語ができた背景を探り、 世界がどのように変わってきたのかを振り返ってみましょう。

※この特集記事では、2010~2019年にアメリカとイギリスで流行した言葉や新しくできた言葉を、2019年からさかのぼってご紹介します(6回にわたり、2020年12月11日、12月21~25日に公開)。

2019年の主な出来事

日本

  • 新天皇即位、「令和」に改元
  • G20大阪サミット開催
  • ラグビーW 杯日本大会開幕、日本が8強に
  • 沖縄、首里城が焼失
  • 消費税率10%スタート
  • MLB マリナーズ、イチローさんが現役引退
  • 吉野 彰氏がノーベル化学賞を受賞

海外

  • フランス、ノートルダム大聖堂の大火災
  • ボリス・ジョンソン氏がイギリス首相に就任

Word of the Year【2019】

American Dialect Society(ADS)とOxford University Press(OUP)がそれぞれ選んだアメリカとイギリスの「その年を表す言葉」を紹介します。

US

(my)pronouns

直訳すると「(私の)代名詞」。2015年には、トランスジェンダーやノンバイナリー、エイジェンダー、インターセックスの人たちに使える代名詞で、単数扱いのthey がその年の言葉に選ばれました。

これを受けて英語圏では、自己紹介の際などに「my pronouns are・・・(私の代名詞は……)」と言って、自分にはどの代名詞(she/herかhe/himかthey/themか)を使ってもらいたいかを表明するのが徐々に一般的になってきました。イギリスの歌手サム・スミスが2019年9月、インスタグラムで“My pronouns are they/them.”と表明して話題になり、この流れに拍車をかけました。

“I’m Chris, and I like to be referred to by he/him pronouns.”

「私はクリスです、he/himの代名詞を使っていただけるとうれしいです」

UK

climate emergency

これまでよく使われていたclimate change(気候変動)やclimate crisis(気候危機)から危機感がさらに一歩進んだ表現ともいえる言葉です。OUPによると、climate という単語自体はそれまでもよく使われていましたが、emergencyについては、これまでの「健康、救急、家族」に関する文脈に代わり、気候に関する文脈での使用が急増したそうです。

ところで、2016年、オーストラリアのメルボルンにあるデアビン市が初めてclimate emergency declaration(気候非常事態宣言)をしましたが、2019年に急拡大し、イギリスやフランスなどのヨーロッパ諸国に加え、欧州連合も宣言しました。日本は国としてはまだですが、長野県が地方自治体として初めて、2019年12月に宣言しています。

One in 10 people on the planet now live in a place where a climate emergency has been declared.

現在、地球上の10人に1人が、気候非常事態が宣言された場所に住んでいる。

Short List【2019】

大賞には選ばれなかったものの、最終選考に残った単語やフレーズも、その年を表す重要なものです。その中からいくつかをピックアップしてご紹介します。

US

OK boomer

年配者が上から目線で説教してきたときにあしらう表現として、TikTokの動画で使われたことがきっかけとなり大流行しました。ニュージーランドでは、若い女性議員(当時25歳)が気候変動について議会で話していた際に、年配の男性議員にやじられ、“OK boomer”と一蹴して演説を続けたことも話題になりました。boomerとは、「ベビーブーム(第二次世界大戦後の1946~64年頃)世代の人」という意味です。

She was fired for saying, “OK boomer,” to her boss at a meeting.

彼女は、会議で上司に「OK boomer」と言ったことによって解雇された。

cancel

「キャンセル」というとイベントやサービスに対して使う言葉でしたが、この年の候補に挙がったのは、「人をキャンセルする」という考え方でした。著名人が炎上したり過去の問題発言が掘り起こされたりした際に、“You are canceled.”(あんたはもう終わり)と言って、その人の作品などをボイコットすることです。こうした文化はcancel culture(キャンセル・カルチャー)と呼ばれています。

“Don’t talk to me anymore. You’re canceled!”

「もう私に話し掛けないで。あなたとはもう終わり!」

Karen

白人である自分には特権があると考えて権利を主張する中年の白人女性が、“Karen”と呼ばれています。2020年も、新型コロナウイルスの流行を受けてのマスク着用を巡る主張や、黒人の権利保護を求めるBlack Lives Matter運動に関連した人種差別的な行動などで“Karen”と呼ばれる人たちが話題になりました。

They call her a “Karen” because she’s refusing to wear a face mask during the pandemic.

彼女はパンデミックの間にマスクを着用することを拒んでいるため、「カレン」と呼ばれている。

UK

climate denial

この年の候補に挙がった10の言葉はすべて、気候に関連したものでした。いかに人々の関心が気候や環境に向いていたかがうかがえます。地球環境の保護を念頭にした言葉ばかりではなく、「人間の経済活動が原因で気候変動が起きている」という考えに異論を唱えるclimate denial(気候変動否定論)も選ばれました。

Facebook has been accused of spreading climate denial.

Facebookは気候変動否定論を広めたとして非難された。

plant-based

植物由来の物を指すこの言葉は、近年では食品に関して使われることが多くなり、気候変動とは切り離すことができません。菜食主義は、地球環境の維持を語る上で外せない話題です。この年はclean meat(人工肉)、meat alternatives(肉の代替品)、vegetarianism(菜食主義)など、持続的な地球環境保護に関連した、食に関する言葉が多く使われました。

The restaurant started to offer their customers plant-based meals.

そのレストランは、植物由来の食品で作られた食事を提供し始めた。

flight shame

二酸化炭素を多く排出する飛行機の利用を恥だとするこの言葉は、「飛び恥」という日本語にもなったほど知られたコンセプトになりました。flight shameの語源は、グレタ・トゥンベリさんの出身国、スウェーデンの言葉flygskam(飛ぶのは恥)です。

The “flight shame” movement is about trying to lower the carbon emissions caused by air travel.

「飛び恥」運動は、飛行機での移動によって引き起こされる炭素排出量を削減しようとすることです。

New Words【2019】

毎年、オックスフォード英語辞典(OED)に新しく掲載される単語は数え切れないほどあります。その中から、特に興味深いものを厳選してご紹介します。

simples

当時のイギリス首相テリーザ・メイ氏は、ブレグジットに関する答弁で、野党議員に対し解決策を述べた後に“simples”と発言しました。テレビコマーシャルから生まれたフレーズで、何かしらの解決策を提示した後に「簡単なことですよね」と皮肉る意味で使います。

He explained the situation and then said, “Simples.”

彼はその状況について説明し終わった後に、「簡単なことですよね」と言った。

xoxo

手紙やカード、メッセージの最後に“xoxo”や“xox”などと書かれたものを見たことはありませんか?「x」はキスを、「o」はハグを意味します。かなり前から使用されている表現ですが、OED の「o」の項目に追加されたのは2019 年になってからでした。

She always writes “xoxo” at the end of her emails.

彼女はいつもメールの最後に「xoxo」と書く。

confirmation bias

「確証バイアス」のことで、もとは心理学用語でした。信念や理論を検証する際に、自分が正しいと考えるものを支持する情報ばかりを探し、それらに反するものは拒絶したり無視したりする傾向を意味します。

You have to genuinely consider alternative explanations if you want to avoid confirmation bias.

確証バイアスを避けたいのであれば、そのほかの説明をしっかりと検討する必要がある。

「世界の新語・流行語」特集は『ENGLISH JOURNAL』1月号で!

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年1月号に掲載した記事を再編集したものです。

松丸さとみ

松丸さとみフリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング (・ときどき通訳)を行っている。
Blog:https://sat-mat.blogspot.jp/
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