会議で通訳できるぐらいのビジネス英語を身につけるには?

「TOEICの点数はある程度あるけれど、会議で通訳できる かどうか 不安......」という方は多いのではないでしょうか?今回は会議で通訳ができるくらいのビジネス英語を身につける方法を6人の英語コーチがずばりお答えします。通訳用の学習って、普通の英語学習とどう違うのでしょうか?

Q. 会議で通訳できるぐらいのビジネス英語を身につけるには?

TOEIC750点程度、会社の中ではそこそこ英語ができるほうで、今度社内の会議で通訳をすることになったのですが不安です。1日2時間は勉強する覚悟で、本格的にビジネス英語を学ぼうと思うのですが、どういった方法がいいでしょうか?

A.通訳するための学習法を実践してみましょう

こんな質問に対して、コーチ陣からは次のような回答が寄せられました。

  • 「英単語力の 強化 」が必須!
  • 通訳のための「知識」と「スキル」の両方を身につけよう!
  • ビジネス英語と言うよりは通訳技術を身につける!
  • 通訳をするための「準備」と「トレーニング」を
  • 「語彙力」を集中してつけること
  • 自分の継続しやすい学習法を取り入れよう
多くのコーチが勧めるのが「語彙力の 強化 」と「通訳技術の習得」。ビジネス英語というよりは、通訳するのに必要な知識や語彙、技術が重要になってくるということでした。では、実際にどのようなトレーニングを行えばいいのでしょうか?

以下、それぞれのコーチからのアドバイス(全6件)にはさらに 具体的な ヒントが紹介されていますので、ぜひご覧ください。各コーチのプロフィールや、これ以外の質問と回答は、 こちらの記事 に。

強化 」が必須!">「英単語力の 強化 」が必須!

少なくともTOEIC900点レベルの英語力が必要です(福田圭亮)
TOEIC750点ではまだまだ知っている英単語が少なく、会議などではゆっくり話してくれていても意味が理解できないことが多いと思います。会議で辛うじて通訳ができるようになるには、少なくともTOEIC900点レベルの英語力が必要です。

TOEIC750点レベルと900点レベルの違いは、英文法の理解度の違いもありますが一番大きいのは英単語力です。つまり、まだまだ知っている英単語自体が 少ない のです。英単語を知らないことにはリスニングもスピーキングもできません。

ですので、まずは「英単語力の 強化 」が必須です。すでにTOEIC750点あるので基本的な英単語は習得できているかと思います。ここからは、ビジネス英語に特化したTOEIC900点を目指す人向けの英単語本を使っていくと良いです。

また、参考書だけではなく、英語のニュースなども毎日読むことをおすすめします。英語のニュースではビジネスで頻出の英単語だけではなく、ネイティブ向けの自然な表現が身につきます。会議の場面でそのまま使えそうな表現にも、たくさん触れることができます。

このように、参考書とネイティブ向けのニュースを活用してインプット量を増やしていくことが最も効果的です。そしてインプットした英単語・英語表現をエッセイライティングやオンライン英会話で定期的にアウトプットしていけば完璧です。

「知識」と「スキル」の両方を身につけよう!

会議用の「語彙力」と「リテンション」の 強化 が必要です(金子まりな)
一般的にビジネス英語を学ぶこともできますが、会議での通訳を任せられるのであれば、大きく「知識」と「スキル」に分けて学んでいく必要があります。

「知識」面では、まずはビジネスシーンで多く使われる単語・表現・数字の言い方などは身につけておくとよいでしょう。TOEIC対策の単語集はビジネスで使われる単語も多くカバーされていますし、ビジネスの場面ごとに学べる表現などの良書もありますので、ご自分に合うテキストを1冊、徹底的にやるのは効果的です。さらに、普段職場で使われている単語はおさえ、また会議の内容やアジェンダなどできるだけ情報を 把握 しておくことが、かなり重要になってきます。

そして「スキル」面では、特にレスポンスの速さや情報をストックしながら伝えていくリテンションの力が問われます。通訳中、すべてを聞いてから訳していると、情報を忘れやすくなり、自分の解釈が多く入ってしまいますので、聞いた英語の語順通りに意味を 把握する リスニングトレーニング(スラッシュリスニング)は効果的です。そして、シャドーイングをすることで正確性が上がり、口を動かすのでスピーキング力アップにも役立ってくるでしょう。

「知識」と「スキル」の両方を身につけていくことで、ビジネスのかなり広いシーンで英語を駆使できるようになっていきます。

ビジネス英語と言うよりは通訳技術を身につける!

「英語が話せる人=通訳ができる人」とは限らない(鬼英語コーチ☆サヤコ)
通訳に必要な技術は、英語のスピーキングの技術とは異なります。英語を話しているときは「脳の中が全て英語」が理想的ですが、通訳の場合は「英語と日本語を行ったり来たり」する必要があるからです。 すなわち 英語が話せる人=通訳ができる人、とは限らないのです。

なので今回のケース に関して は、ビジネス英語と言うよりは通訳技術を身につけることをおすすめします。TOEIC750点をすでにお持ちであること、そして社内会議での通訳だということなので、語彙 に関して は特に問題ないはずです。

また逐次通訳と同時通訳によっても、練習の仕方が異なってくるのでご注意を。今回のご質問 に関して はおそらく逐次通訳だと思うので、効果的なノートの取り方も取り入れる必要がありますね。

会議に出てきそうな業界用語などを全てリストアップして準備を進め、通訳ノート術を学び、ひたすら練習する。このプロセスを2カ月繰り返せば、不安な気分はかなり解消するはずですよ。応援しています!

通訳をするための「準備」と「トレーニング」が重要

英語が得意だからといって、通訳ができるわけではありません(谷口恵子 / タニケイ)
具体的に 社内会議の通訳をすることになった、というケースでは、よく英会話スクールが用意している「ビジネス英語コース」などで学ぶのではなく、その通訳に向けた 具体的な 「準備」と「トレーニング」を万全に行うことをおすすめします。

まず「準備」としてできることをあげます。社内会議での通訳ということであれば、どのような話が出るか見当がつくと思います。実際にプロの通訳者の方々も行っていることですが、会議で話題に出てきそうな単語や表現の予習をして、リスト化しておくことが重要です。また、できるだけ背景がわかった状態で臨むほうが適切な通訳ができますので、どういう人が出席するのか、どういう位置づけの会議なのか、その会議での重要事項は何なのかを確認しておくようにしましょう。もしプレゼンをする人がいる場合には、少しでも前にプレゼン資料を共有してもらいましょう。そうでない場合にも、会議のアジェンダは確認しておきましょう。

「トレーニング」としては、リスニングとスピーキング、そして通訳の練習が必要です。英語を聞いて日本語に訳す、日本語を聞いて英語に訳す、の両方を行うことになると思いますので、その練習をしましょう。理想は、実践に近い形で練習するのがいいでしょう。できるだけ近い分野での会話やプレゼンを探して、通訳の練習をするのがおすすめです。出席者がどの国の人かわかっている場合には、その国の人の英語を聞いてシャドーイングをすることをおすすめします。同じ英語ネイティブでも、アメリカ人、イギリス人、オーストラリア人、それぞれ英語の話し方が違います。相手が英語ネイティブではない場合にも、ある程度その国の人が話す英語の 傾向 というのはありますので、同じ国の人の英語を聞いておくと、心構えができると思います。また、話すほうは、同時通訳でなく逐次通訳であれば、自分のペースで訳せばいいと思いますが、やはり練習をしておかないと流暢には話せません。直訳ではなく、相手の言いたいことのポイントをしっかり解釈して誤解のないように話すことは、かなり難しいことですので、しっかりとトレーニングをしましょう。プロの通訳の方は、メモのとり方も練習されています。素早くキーワードだけをメモしたり、記号を使ってメモをしたりする練習もしておきましょう。

英語が得意だからといって、通ができるかというと、そういうものではありません。通訳をするための準備とトレーニングを意識して、時間を使いましょう。

「語彙力」を集中してつけること

不安を減らすには、どれだけ入念に準備するか(大西江美)
具体的に 日程が決まっている会議での通訳が急遽必要になったということですよね?情報が 少ない のでピンポイントのアドバイスは難しいのですが、私も以前、通訳を仕事としていましたので、短期間でできることという 前提 で回答させていただきます。突然のお仕事で不安なお気持ち、わかります。この不安をできるだけ低減していくにはどれだけ入念に準備をするか、それしかないです。

まずは会議で扱う話題に合わせた「語彙力」を集中してつけること。TOEIC750点だとまだ単語もビジネスに万全な状態ではないので、TOEIC単語本の復習も良いでしょう。そして、会議で扱う専門用語を洗い出してください。通訳のお仕事では通訳する対象になる人がYouTubeなどでも話していたら、それを全部聞いて、予習します。その方の英語に慣れるためにもとても 有効 です。社内の会議であれば同業界の人が話している英語素材をYouTubeで探すのも良いかもしれません。その上で、会議で扱う内容の資料や文献を日本語でも自分にインプットします。バックグラウンドの情報をどれだけ知っているかで、現場で救われる経験はたくさんありました。

日→英、英→日の両方が必要になる際は、シミュレーションをして本番で出る かもしれない 言い回しや語彙なども書き出しておくのもプラスになります。どれかの情報が参考になれば嬉しいです。頑張ってください。

自分の継続しやすい学習法を取り入れよう

まずは、身の回りのことをすべて英語でアウトプット(新垣裕子)
会社で会議の通訳を担当されるのですね。1日2時間学習時間に充てて取り組もうというやる気、素晴らしいです!

一口に「ビジネス英語」と言っても幅は広いので、英語4技能の中でご自身が伸ばしたい技能やその優先順位を決めてから 取り組む のもおすすめです。ビジネス英語を学ぶ学習スタイルとしては、学校に通う、通信講座で学ぶ、自分に必要な教材を選んで独学で行うなどの選択肢があります。通訳用のビジネス英語というのであれば、通訳のためのノートテイキングの技術や、訳出トレーニングのできる通訳学校などもあります。それぞれの学習スタイルには良い点も難しい点もあります。一例を挙げると、学校に通う場合、考えられたカリキュラムで様々な実践的内容を体系立てて学習可能ですが、決まった時間に通う必要があるなど時間的制約が出てきます。一方で、通信講座や独学は自由に時間を決めて取り組める反面、しっかりと学習計画を立て実行するための自己管理が必要です。まずはご自身が継続しやすい方法を考えてみましょう。

ここでは、ご自分で今日からできるトレーニング法として、現在持っていらっしゃる英語力をブラッシュアップしつつ、使える表現を増やすための学習法をいくつかご紹介したいと思います。

まずウォーミングアップとして、ご自身のお仕事環境や身の回りのことをすべて英語でアウトプットしてみるのがおすすめです。オフィスで目にするものやご自身の行動をすべて英語で言ってみます。日常を一度英語化して確認しておくことは、日常ビジネス会話の準備にもなりますし、英語でビジネス環境を意識することにもつながります。

また、社内会議の通訳ということなので、ご自身の会社について英語で語れるように準備していきましょう。会社のホームページに英語版がある場合、そこをしっかり読み込むと すぐに 必要な語彙表現を押さえられます。また、関連会社のウェブサイト、業界関連記事などの英語版も情報の宝庫です。それらをリーディング素材として活用して情報のインプットを増やし、専門用語や頻出表現といった語彙表現を 強化する 方法は手軽で すぐに 始められます。

日英対訳があるバイリンガル素材を使った学習法を一つご紹介します。(同じトピックの社説や記事を日本語版、英語版のホームページに掲載している新聞社もあるので、お仕事に関連しそうなものを教材として活用するのもおすすめです。)まず日本語素材をご自身の言葉で英語に翻訳して書き出し、その後、その翻訳文を素材の英語対訳と比べます。対訳内の表現で使えそうまたは使いたい表現を「英借文」して、翻訳文をブラッシュアップしていくのです。この 作業 を重ねることで、業界でよく使われる表現の確認や洗練された言い回しを増やしていくことができます。よく出てくる表現を 事前に 確認し、リスト化することができていれば、通訳業務中に焦ることも少なくなります。

語彙表現が増えてきたら、日本語文を見ながら英訳を口頭で行う「サイト・トランスレーション」という通訳トレーニング法もあります。書き出す代わりに、どんどん口頭で訳出していくトレーニングで、ご自身のパフォーマンスを録音して、後で振り返られるようにすると効果的です。目で見てわかるだけでなく発音も意識した語彙学習になります。新しい表現を学んだ後には必ず口に出して音読するようにすると、会議でのスムーズなアウトプットにつながります。これらのトレーニングは、日英、英日どちらでも効果的ですので、実際に会議で訳出する言語に合わせて選択して試してみてください。

また、今まで日本語で参加してきた会議の内容を思い出し、それを英語化してみるのもおすすめです。会議進行に関する表現はもちろん、ちょっとした雑談の中にも英語で言えると重宝しそうなお役立ち表現が混ざっていたりしますよ。

ここまではスピーキングでのアウトプットの学習法を中心にご提案してきましたが、通訳をするためにはスピーキング以上に鍛えておきたいのがリスニング力です。相手の言うことが理解できなければ、何も通訳できませんものね。日々ビジネスリーダーのプレゼンテーションや関連しそうなニュースを聞いて、英語耳を 強化 しておきましょう。ABCやBBCなどのホームページやTED、YouTubeといったサイトでも、字幕・原稿付きのリスニング素材や動画が入手できるので、最大限に活用してください。音声を聞いた後にスクリプトを見て、必ず理解度を確認します。どの音が聞き辛かったか、なぜ聞き辛かったのか等を 分析 しておくと、その知識がリスニングで聞き取れなかった音を補い、理解を助けてくれるようになります。

会社の期待に応えつつ、ご自身の英語力アップのチャンスですね。応援しています!

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部 「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌『ENGLISH JOURNAL』が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!

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