簡単な英語でも聞き取れません。リスニング力を上げるコツは?

中学高校の英語の授業では「読む」に重点が置かれていたこともあり、「読めば分かる簡単な英語も聞き取れない」と困っている人は多いのではないでしょうか。そんなお悩みに、7人の英語コーチがずばりお答えします。ひたすら聞けば聞き取れるようになるのか、それとも……?

Q. 簡単な英語でも聞き取れません。リスニング力を上げるコツは?

目で見れば簡単な英語なのに、耳で聞くと全く聞き取れません。受験英語はある程度得意だったのですが……。実践でのリスニング力を上げるには、どんな勉強が効果的でしょうか?

A. 音のルールを理解した上での「音読」が効果的

こんな質問に対して、コーチ陣からは次のような回答が寄せられました。

  • 発音できない音は、聞き取れない
  • 聞き取れない理由は「音の短縮」
  • 完コピすると聞けるようになる
  • まず、英語の音のルールを学ぼう
  • 口に出すトレーニングに効果あり
  • 理論と訓練の二本立てがおすすめ
  • 聞き取れない要因を特定せよ!
まず、多くのコーチがすすめるのが、英語の音のルールを理解すること。音のつながりや省略など、英語に特有のルールを知ることは重要です。

そして、しっかりと「音読する」練習をすることで、リスニング力も上がる、とのアドバイスがそれに続きます。英語学習の基本として「音読」は欠かせませんし、オーバーラッピングやシャドーイングなどもおすすめです。

以下、それぞれのコーチからのアドバイス(全7件)にはさらに 具体的な ヒントが紹介されていますので、ぜひご覧ください。各コーチのプロフィールや、これ以外の質問と回答は、 こちらの記事 に。

発音できない音は、聞き取れない

音の理解、音声の言語化、センテンスの記憶、がポイント(福田圭亮)
英語が上手く聞き取れない 原因 は大きく3つあります。
  1. 英語の音の理解ができていない
  2. 音声の言語化と意味の解釈スピードが遅い
  3. センテンスの記憶ができていない
一つ目は「英語の音の理解ができていない」です。日本人は「A」「B」「C」「D」を「エー」「ビー」「シー」「ディー」と習いますが、ネイティブは「ア」「ブッ」「クッ」「ドゥ」と習います。このフォニックス発音ができれば英単語を正しく発音できます。自分が発音できる英単語はしっかりと聞き取れます。まずはフォニックス発音トレーニングを行い「正しい英語の発音の習得」をおすすめします。

二つ目は「音声の言語化と意味の解釈スピードが遅い」です。人間の脳は第二言語を解釈・理解する際に、まず音を「言語化=文章化」してから理解をします。この 処理 スピードを上げる最も効果的な方法は「多読」です。「音読」も 同時に 行うとさらに効果的です。英語の語順で前から順番に 処理 できるようにしていきます。

三つ目は「センテンスの記憶ができていない」です。内容を理解する前に次の話が始まってしまい、脳が「意味として定義されていないもの」をストックできないのです。前述の「多読・音読」とともに「シャドーイング」を通じて、英語 処理 スピードを上げる必要があります。シャドーイングは中上級者でも難しいので平易な文章で行うことをおすすめします。

聞き取れない理由は「音の短縮」

子音と母音の結合、アクセント、強弱を意識して聞こう(五十嵐未知子)
皆さん、英語が速いから聞き取りにくい、と感じているようですが、速く聞こえる 原因 は、ほとんどネイティブスピーカーの音の短縮のためです。例えば、I have an apple.という英語も、特に an apple のところは、「アンアップル」とは絶対聞こえず、「アナップル」というように聞こえます。

英語は特に子音と母音がくっつく習性があり、それが日本人には速い、聞き取りにくい、と感じさせるのです。これが分かっているだけで、今単語がくっついているな、と 判断 ができるようになるので、聞き取りやすくなるはずです。

また、英語は強弱のある言葉です。単語の発音もアクセントが命で、アクセントを間違えると通じません。英語の文章でも抑揚が非常にあります。従いまして、リスニングのポイントは、英語の文書の強弱に着目することです。必ず重要なことや話し手の伝えたいことは、アクセントが置かれています。初心者のうちは、リスニングをする際はその文章の強弱に気をつけて聞いていると、ポイントが分かるようになってきますよ。

完コピすると聞けるようになる

音を頭で理解するだけでなく、マネして言ってみよう(金子まりな)
目で見て分かっても聞き取れないことはよく起こります。その 原因 としては大きく3つあります。
  1. 文法理解の 不足 で意味が取れない
  2. スピードが速くてついていけない
  3. 英語の音の変化に慣れていない
受験英語が得意とのことですが、その場合、目は鍛えられていても、耳はそれほど鍛えられていません。聞き取れない 原因 として、3つ目の「英語の音の変化に慣れていない」ことが考えられます。英語は、隣り合う単語とくっついて発音が変わったり、音が小さくなったり、脱落したりして、見て想像する単語の音とは違って聞こえます。英語ではこの音の変化が常に起こっているため、知っている単語なのに聞き取れないという現象が起こります。

“We have a lot of food.”という文は、頭の中では、「ウィーハブアロットオブフード」と認識する人が多いですが、実際には「ウィハヴァロロフー」というように聞こえます。このような変化で、見た目より短い音の連なりに感じ、スピードが速く聞こえ、本来知っている単語も聞き取れない、というカラクリになります。

音の変化には一定のルールやパターンがあり、これを知れば解決していきます。自分でもマネして言ってみることで音の変化やリズムが体に入ってきます。完コピをするくらい積極的に音マネをすることが効果的。見た目と聞いたときの認識ギャップを埋めていくことができます。

まず、英語の音のルールを学ぼう

ルールを意識しながら音読やディクテーションが効果的(鬼英語コーチ☆サヤコ)
日本人の英語学習者からよく聞くお悩みです。最近は少しずつマシになっているとはいえ、日本の英語教育はまだまだリーディングとライティング重視です。リスニング力アップの方法を知らない教師も、少なくないのです。とはいえ、リーディングの訓練は決して無駄ではありません。読んで理解できない文章は、聞いても分からないからです。おすすめの学習方法は、次の通りです。
  • 英語の音のルールを学ぶ
一語一語をはっきり平坦に発音する日本語と違い、英語の音は繋がったり、省略されたり、変化したりという独特のルールがあります。強弱のつけ方や、語尾の上げ下げも重要です。まずはこれらのルールを頭に叩き込みましょう。
  • 英語のルールを意識しながら、音声教材を使って音読を繰り返す
音読抜きで英語の上達はありえません。そして自分が発音できない音の場合、自分が 予想 している音と実際の音の間に大きなギャップがあるため、聞き取るのが非常に難しいのです。
  • ディクテーションで、自分が聞き取れていない言葉やフレーズを認識する
絵本などの簡単な英文でも良いので、一文一文音声を止めて、聞こえた通りにノートに書いていきましょう。つづりの間違いはあまり気にせずに。また初めのうちはカタカナでも構いません。このプロセスを繰り返すことによって、自分が苦手な音が段々とクリアになってきます。

口に出すトレーニングに効果あり

ステップを踏んでシャドーイングにトライしてみよう(谷口恵子 / タニケイ)
日本の現在の学校教育では、残念ながら英語の音声面の教育が 少ない ため、文法や単語を知っていても、音で聞くと分からない、という状態になりがちです。聞き取れない 原因 は様々ですが、英単語を覚えるときに、スペルだけを覚えて、音を結びつけていないことや、文 単位 でなめらかに話されたときに起こる、音の変化に慣れていないことが考えられます。

それらを克服してリスニング力を上げるために、私がおすすめしているのは、英語の音をよく聞き、マネして声に出すことによって、英語の音の特徴をつかんでいくことです。 具体的に は、リピーティング、オーバーラッピング、シャドーイングといった練習をすることが効果的です。あらかじめ英文を読んで、意味が分かっているものを使って、リピーティング(1文ずつ聞いて、英文を見ながら聞こえたままに繰り返す)、オーバーラッピング(英文を見ながら、音声と重ねて話す)、シャドーイング(英文を見ないで、音声のすぐ後を追いかけて話す)をやってみましょう。

シャドーイングは通訳者の方々も行っている難しいトレーニングだと思われていますが、ステップを踏んで行うと、できるようになります。英文を見ないで音だけを聞いてマネするので、自分なりの発音にならずに、英語の自然な発音や音声変化を体得することができます。勉強と考えずに、トレーニングのつもりで、毎日少しずつやってみましょう。

理論と訓練の二本立てがおすすめ

音声解説の教材を探すところからスタートしてみては?(船橋由紀子)
質問者様のコメントから「英語が聞き取れない 原因 」がすでに特定できていることが分かります。「何ができないかが分かっている」のは、まず素晴らしいことです。

目で読んで分かるけれど、耳で聞くと分からないというのは、英語の「音の特徴」……音声変換やリズム、イントネーションに対する不慣れ感があるようです。その部分を鍛えていくことが状況の 改善 に繋がりますね。

勉強方法としては、英語を聞く → 影のように後から自分で発話する「シャドーイング」などの方法があります。その際に、聞いた英語の音声特徴をコピーする気持ちで発話することを「プロソディ・シャドーイング」といいます。あるいは、自身の発音力を鍛えるために発音専門のトレーニングを受けることも 有効 でしょう。

受験英語が得意だったという質問者様の学習歴を踏まえると、ノリで英語の音声をマネするだけでなく、英語の音声変化 に関して 理論を勉強しながら実際に発話するトレーニングを積むと、納得感のある 取り組み になるかと思います。書店に出向き、納得感の感じられる解説がついている書籍を探してみるところから始めてみてはいかがでしょうか?

聞き取れない要因を特定せよ!

聞き取れない理由をしっかり自己 分析 してから対策を(大西江美)
「目で文章を見れば、簡単な英語」というのは、
  1. 知らない単語がない or ほぼ知っている語彙である
  2. 文法的にも意味を理解できる
という理解で正しいでしょうか。それであれば、聞き取れなくなっている理由は、
  1. 英語に特有の音声変化に知らないからというのが大きい
と考えられます。ただ、聞き取れない理由は、(1)(2)(3)の混合であることが多く、その要因 分析 をされていない方がとても多いです。

まずは、スクリプトがある音声を用意して、自分が聞こえない要因をしっかり 分析 することがとても大切。音声だけを聞いてみて、だいたいの意味が取れるか、取れるなら、何度も聞いてみた後に、スクリプトを見てどこが聞こえていないのか、聞こえていない箇所をマークアップします。

分析 した結果、語彙や文法ではなく、英語独特の音のルールが分かっていないのだと確認できたら、書店に行けば、音声変化を取り扱っている教材がたくさんありますので、 具体的に は、弱化・脱落・連結・同化・短縮などの音声変化のルールを体系立てて、練習問題で訓練を積むことで耳が変わってくる 可能性 はあります。

アルクの教材で一をあげれば、TOEIC用の教材ではありますが、『鬼の変速リスニング』などは、聞けるようになるために、「習って慣れる」ことに独学でも取り組める良い教材だと思います。

★リスニングを学ぶためのおススメ参考書3選はこちら!

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部 「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌『ENGLISH JOURNAL』が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!

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