allowとforgiveの意味の違いは?翻訳によって神様の印象が変わる!?【聖書で英語】

聖書で英語!

教会なのに異例の面白さで10万人以上のフォロワーを獲得し、広く一般に大人気のTwitterアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」。その運営を行う「まじめ担当」と「ふざけ担当」のうち、まじめのMAROさんによる連載「聖書で英語!」では、聖書からキリスト教と英語について楽しく紹介します。第1回は、聖書の翻訳から見る神様の印象の違いや「ゆるし」の意味です。

キリスト教に「翻訳の歴史」あり

聖書って、もともとどの言語で記されたかご存じですか?

旧約聖書はヘブライ語(一部アラム語)、新約聖書はギリシャ語で記されました。

現在、多くのクリスチャンはそれを日本語や英語や、それぞれの言語に翻訳されたものを読んでいます。もちろん、神父さんや牧師さんはヘブライ語やギリシャ語の原文を読んだりもするのですけど。

そんなわけですから、聖書の翻訳というのはキリスト教において必要不可欠なものです。

これまでに聖書が翻訳された言語数はなんと2500を超えるんだそうです。世界にそれだけの種類の言語があることも驚きですけどね。

さらに、聖書というのはキリスト教にとって何よりも大切な本ですから、これを翻訳するときは必ず、ヘブライ語やギリシャ語で書かれた「原典」から直接翻訳しなければなりません。ギリシャ語から英語に翻訳したものをさらに日本語に翻訳する・・・というのではダメなんです。

キリスト教が世界に23億人の信徒を持つ「世界宗教」になった裏には、「翻訳の歴史」があったわけです。

イエス様の口調の印象が日英で変わる!?

面白いことに、各言語に翻訳された聖書は、同じ「原典」から翻訳されているのに、よく読むと言語によっていろいろとニュアンスが違ったり、わかりやすかったりわかりにくかったり、ということが時々あるんです。

ですから日本人でも、ある程度英語のできるクリスチャンは、日本語の聖書で理解が難しい場合は、同じ箇所を英語で読んでみたりします。そうするとすんなり理解できることがあるんです。

また、日本語は敬語表現が多彩ですから、日本語の聖書に出てくるイエス様はだいたいいつも敬語で話します。「求めなさい。そうすれば与えられます(マタイ7:7)」というフレーズは、クリスチャンでない方でも聞いたことがあるかと思いますが、同じ箇所が英語だとこうなります。だいぶ印象が違うと思いませんか。

Ask , and it will be given to you.

Matthew 7:7

この現象はイエス様だけに限らず、ほかの登場人物でもよく起こります。

例えば、イエス様の宿敵であるパリサイ人たちがイエス様に対して怒るシーンでも、日本語では「これでもまだ証人が必要でしょうか。私たち自身が彼の口から直接それを聞いたのだから。(ルカ23:71)」と、彼らは敬語を話しています。あんまり怒っている感情は伝わってきません。しかし英語だとこうなります。こっちの方が怒っている感じが伝わってきますよね。

What further testimony do we need? For we have heard it ourselves from His own mouth.

Luke 23:71

こんなわけで、英語の聖書を読んだ方が怒りや悲しみなどの感情は理解しやすかったりもします

でもだからといって、日本語の翻訳が劣っているわけでは決してありません。日本語の聖書ではあえて感情を抑えめにした翻訳になっていたりもするんです。それは、感情的な解釈が入ることで、聖書のフレーズに対して余計な先入観を持ってしまうことを防ぐためです。

2つの「ゆるす」、 allowとforgiveの違い

キリスト教にとって最も大切な概念の一つに「ゆるし」がありますが、日本語では「許し」と「赦し」とが紛らわしいことがあります。しかし英語の動詞では「allow」と「forgive」ですから間違いようがありません。

キリスト教が強調するのは「赦し」のforgiveの方です。ここを勘違いしてしまうと聖書の理解を大きく誤ってしまいます。

キリスト教にとって、すべての罪は赦されますが許されているわけではありません。forgiveはされるけれども、だからといってallowされているわけではないことがたくさんあるんです。

クリスチャンでも時々ここを勘違いして、「私は罪がゆるされているんだから、何をしてもいいんだ」と、「破天荒な生き方」をしてしまう人がいますが、これはその勘違いによるものです。

allowは「何かをすることを許可する」という意味ですが、forgiveは「受けるべき罰を免除する」という意味です。日本語では同じ「ゆるす」という発音をするので混同しやすいのですが、英語でも、そして原典のギリシャ語でも、この2つはまったく違う言葉です。

人の悪口を言うことは聖書で禁じられていることです。ですが、たとえ間違って言ってしまったとしても、それを告白して悔い改めれば最後の審判で罪に問われることはありません。しかしだからといって、「悪口を言っても大丈夫!言ってもいいんだ!」ということにはなりません。あくまでダメなことはダメなこと。ただ罰することはしないよ、というだけです。

言語が影響を与える精神性

よく「罰則のない規制は意味がない」なんて言われますけど、聖書の世界は言うなれば「罰則のない規制」の世界なんです。特にイエス様が登場する新約聖書以降の世界は。

昨今のコロナ騒ぎで、「罰則」のない「要請」だけで行動をきちんと自粛できる日本国民はすごい!と、欧米諸国から日本人が褒められたりしましたけど、もしかしたらそれは日本語の「ゆるす」の意味の曖昧さから生じた精神性なのかもしれません。

国民性って、意外と言語に根差していることが多いんです。ですから相手の国の言語を学ぶことは、相手の国の精神性を学ぶことと同じなんです。

そう考えると、英語の勉強って面白いですよね。同じ聖書を読んでも、例えば日本人とアメリカ人では読み解き方が違ったりするんですから。

さて、これから毎月、こんなふうに英語と日本語の「聖書の違い」を紹介していこうと思います。よろしければお付き合いくださいませ。

それではまた次回。MAROでした。

※聖書の出典:日本語『聖書 新改訳2017』、英語“Holy Bible: New King James Version” 1983

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上馬キリスト教会ツイッター部 MARO

上馬キリスト教会ツイッター部 MARO1979年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。キリスト教ではない家に生まれ、23歳のときに洗礼を受けた「クリスチャン1世」。Twitterアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」と「ふざけ担当」のまじめの方でもある。2015年2月からキリスト教を面白おかしく紹介し始めたところ10万人以上のフォロワーを獲得した。
「ふざけ担当」LEONとの共著に『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』、『上馬キリスト教会ツイッター部の世界一ゆるい聖書教室』(共に講談社)がある。単著に『上馬キリスト教会ツイッター部の キリスト教って、何なんだ? 本格的すぎる入門書には尻込みしてしまう人のための超入門書』(ダイヤモンド社)。