英語学習の迷いを解決する1つの方法

トーキョー通訳日誌

通訳・翻訳者で、エディ・レッドメインやエド・シーランなどの通訳や英語インタビューも行う川合亮平さんの連載「トーキョー通訳日誌」。川合さんが体験したリアルな通訳現場のお話を通して、通訳者として成長していくための「仕事のやり方」や「英語学習法」などを教えていただきます。第6回は、川合さんが「英語」を使って働くことを実現していく中で学んだ「教訓」についてお話しします。

こんにちは、川合亮平です。

僕は、20歳の頃に英語力ゼロ(というよりむしろマイナス)から大阪の自室で英語独習を開始しました。

そもそもなぜ英語学習を開始したのかなどの詳細はここでは省きますが、とにかく最終的な目標を通訳者に設定しました。

1日中英語漬けの自宅缶詰生活の幕開けです。

勉強の傍ら、学習時間の妨げにならない程度に簡単なアルバイトもしていました。理由は、教材費やたまに映画を見に行ったりするレジャー費を賄うためです。

その当時の僕のステータス(社会的立場)としては、母の家に居候するいわゆる“無職パラサイトシングル”です。一生懸命勉強して、そして真面目にバイトもしていましたが。

そういう自分の立場は、割り切って考えてしまえばなんともないのかもしれません。でも、僕の性格的にあんまり意心地のよいものではありませんでした。(独立心がちょっと旺盛なのかもしれません)

そういう意味で、まず手近な目標を定めたんです。それは、英語力を活かせる仕事にパートタイムで就くこと働くことと英語力アップをイコールにしよう、という魂胆です。お金を稼ぎつつ英語力も上げられる仕事をする、一石二鳥作戦。

もちろん学習開始後、すぐにはそんな目標は叶(かな)いません。なんせ英語力ゼロなので。

でも、自宅缶詰生活の幕開けから数年後(そうです、数年かかりました)ようやく実力が備わったように思える日が来ました。英検準1級、そしてTOEICでも800点程度が取れたんです。

僕は“英語力を活かせる仕事”を探すべく、にわかジョブハンターになりました。新聞やアルバイト情報誌を見ながら、“要英語力”、“英語力歓迎”的な職を探すわけですね。旅行会社をはじめ、さまざまな会社に履歴書を送付し、面接を受け始めたのですが、結果総スカン。

今から考えると当然の結果だなとは思います。唯一の取りえがすべて机上学習で身に付けた中途半端な英語力。社会経験はゼロの高卒の若い男の子です。しかも志望動機が「仕事を通して自分の英語力を上げるため」ですからね。

そのとき、少なくない数の面接官から同じようなアドバイス(?)を掛けられたことを今でもよく覚えています。

これからの時代は英語だけでは食べていけないよ

20数年前の話です。ハタチ前後の僕として、そのアドバイス(?)を結構重く受け止めました。「そうなのか・・・どうしよう」と。

それで書店に行き、旅行業の資格や、そのほかの“将来役立ちそうな”資格の本を見たり、真剣に検討したりしました。でも、何ひとつしっくりくるものは見つけられなかった。

英語そのものを勉強したいんだ」、「それしかしたくないんだ」という内から湧き出る強い気持ちにはあらがえなかった。

まあ生来の頑固な性格が働いたのかもしれません。とにかく僕は英語(そのもの)の勉強を続けました。意志が強かったわけではありません。むしろ 、ほかの人生選択をして進んでいく意志がすこぶる弱かった、ということです。

「英語」だけでは食べていけない?

時は流れて、20数年後の今。その間には紆余(うよ)曲折、ホントにいろんな事がありました。

でも結果的に、

今、英語だけで食べています

と言える状態になっていると自己判断しています。“職業:通訳者”なので。

なぜ英語“だけ”と言えるかというと、ほかのスキルは20年前の当時と殆(ほとん)ど変わっていないからです。それがよいのか悪いのかの議論は取りあえず置いておいてください。資格ゼロのステータスや高卒の学歴などもすべて当時のままです。

20年前の面接官たちが口々に発した「この先英語だけでは食えない」説。それが正しくなかったことを身を持って証明できたと思っています。

20年のスパンに及ぶこの人生体験から、僕が学んだ大切な教訓が1つあります。それは、人のアドバイスって当てにならないもんだなぁ、ということ。

もちろん例外もあるでしょう。他人に対して本当に親身に寄り添う中で出てくる愛のあるアドバイスというのもあるでしょう。ただ、僕たちが日常出合う“アドバイス”の中で、それを発する人の嫉妬や恐怖心、または単なる受け売りに端を発しているものは決して少なくないと思うのです。

僕が学んだ教訓、別の言い方をすれば英語で“Trust your gut(s).”というように表現できます。

gutは、内臓という意味が一般的なんですが、Trust your gut.は「自分の直感を信じろ」というような意味になります。

そのほかの表現では、

Believe in yourself.

自分自身を信じろ。

Follow your heart.

自分の気持ちに正直に生きろ。

などの表現も同じようなニュアンスでしょう。

未来のことなど誰にもわかりません。人生の方向性やアクションの指針となるのは結局のところ、自分の中から湧き上がってくる直感だと僕は個人的に信じているのです。
誰かのアドバイスや、宙に漂う情報群はあくまで二義的なものだと捉えています。

「人の話を聞かず、自分の気持ちを優先する」というとなんだかワガママでよい印象を抱かれないかもしれませんね。ただもちろん、周囲に直接的に迷惑を掛けないというのが大切な条件であることも忘れずに付け加えておきます。その上で自分にできるだけ正直にできるだけ自由に生きることは個人としての義務とすら僕は感じています。

自分の直感をできるだけ優先して行動してきた。その結果、通訳者としての自分が今いる、と感じています。

とはいえ、

「ラッキーなだけでしょ」

「ただの頑固がたまたまよい結果になっただけでしょ」

「人に恵まれただけでしょ」

というご意見もあるかもしれませんね。

それに対して僕としては、「おっしゃるとおり。そういった要素も確かにありますよね。うん、それは間違いないです」というような返答しかできないのですが・・・。

英語学習も自分で決める

最後に、“情報の波に溺れて決めかねる”状況というのは、英語学習者の悩みの一つかもしれませんね。

情報収集はとても大切なアクションです。でも結局は「このやり方(教材)は自分にしっくりくるかどうか」という自分自身の感覚を、僕としてはいつも何よりも重要な指針にしています。

Fさんの英語力を伸ばした英語学習法が、必ずしも自分に合うとは限らない、ということ。そしてその逆も然(しか)り。

英語学習もTrust your gutです。

今回の連載はこの回をもって終了します。

お読みいただきありがとうございました!

またどこかで会いましょう!

川合亮平でした。

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川合亮平

文:川合亮平(かわい・りょうへい)
通訳者。エディ・レッドメイン、ベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマン、エド・シーランなど、俳優・ミュージシャンの通訳・インタビューを多数手掛ける。関西のテレビ番組で紹介され、累計1万部を突破した『「なんでやねん」を英語で言えますか?』(KADOKAWA)をはじめ、著書・翻訳書・監修書は現在11冊。

イギリス関連の記事:https://www.british-made.jp/author/kawai